物語;雨乞いの礼拝
今回は、ある物語をご紹介しましょう。
サウジアラビアの町メディナを、1年間にわたり旱魃がおそい、人々が所有する家畜や農作物が大きな被害を受けました。人々は、大変苦しい生活を強いられ、神に雨乞いをしました。彼らは神を称え、雨乞いの礼拝をすることにしたのです。このため、彼らはメディナの町を離れて砂漠へと向かいました。
これらの人々のうちの1人ムハンマド・ブン・スワイドは、次のように語っています。
「私は、ほかの人々とともに雨乞いの礼拝をするために砂漠に赴いた。大勢の人々の中で、身なりのさえないある男を見かけた。その男は、片隅で礼拝を行っていたが、私の視線は彼の行動に引き寄せられた。私はそこで、この男のそばにいって、彼が神と何を話しているのかを見てみようと思った。私は、この男の傍らに立ち、耳をそばだてた。彼は、礼拝を行い、礼拝の後に祈祷をささげていたが、単純な言葉で神に語りかけ、全知全能なる神よ、あなたの存在にかけて、今すぐ雨を降らせたまえ、と述べていた」
ムハンマド・ブン・スワイドはさらに、次のように述べています。
「私は、この身なりのさえない男の素直さと誠実さに驚かされた。彼は両手を高く掲げ、神と語り合っていた。この男の祈祷がまだ続いていて、彼が両手を高く差し上げたままでいた時、にわかに雷鳴がとどろき、雨が降り始めた。人々は、激しいにわか雨に退散し、この男もその場の片隅に引き上げた。私は、すぐさま彼の後を追いかけ、離れずについていった。すると、この男は再び祈祷を始め、今度は神に向かって、“もし十分に雨を降らせたと思ったならば、それを止めたまえ”と告げたのである」
「すると突然、辺りは静かになり、雨がやんで空が明るくなった。人々は喜びに沸き返り、それぞれ自分の家に帰っていった。祈祷をささげたあの男も歩き出した。私は、すかさず彼の後について行き、彼の家のありかを突き止めた。その翌日、私は好奇心に駆られて、あの男の家に赴き、扉をたたいた。そして、私のために祈祷してくれないかと頼んでみた。男は私に、“私はあなたのために祈祷をささげるような人間ではない”と返してきた。そこで私は、自分が前の日にこの男のする事の一部始終を見ていて、いったい彼がどうやってあのような事ができるようになったのかを教えてほしい、と頼んだ。すると、男は首うなだれてしばしの間考え、穏やかに、そしてこう述べた。“私は、一生涯にわたり神に従い、神の啓示にしたがってまいりました。神の命じた事を実行し、神が禁じた事を回避し、これを行わないようにしたのです。今回は神に雨を降らせるよう頼みました。そして、神も私に雨を施してくださったのです”」
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