子供の権利条約
アメリカは、今も子供の権利条約を批准していません。この条約の目的は、子供の基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。
子供の権利条約は、1990年9月に発効しました。国連人権委員会の発表によれば、そのとき以来、196カ国がこの条約に加盟しています。
子供の権利条約は、最も多くの批准国を持つ国際人権条約です。実際、人権擁護を主張するアメリカは、この条約を批准していない唯一の国連加盟国です。専門家は、これに関してさまざまな理由を挙げています。国際人権団体アムネスティインターナショナルは、「アメリカの上院と世論は、この条約を誤って解釈している」としました。
保守的な宗教団体は、しばらく前から、アメリカでの子供の権利条約の批准に反対し、「この条約は、両親の権限を弱め、政府や国の統治を損なうものだ」と語っています。
公共の利益や人権を監視する検察関係者は、アメリカで、今も子供の権利条約が批准されていないことを批判し、「重要なのは、アメリカの子供たちが、多くの問題に直面していることだ」と語っています。この関係者は、「アメリカは、この条約に署名すべきであり、少なくとも、国連に足を運び、この子供の権利はアメリカで侵害されていると言うことができる」と語っています。
この関係者は、アメリカ政府は、子供の権利の擁護に関して何もできていないと批判し、「我々は何もできない。この問題を連邦裁判所で提起することさえもできない。連邦裁判所は、この問題に巻き込まれるのを望んでいない」と語りました。さらに、「法的な観点から、我々は自分たちの財産と同等の扱いを子供たちに対してできていない」としました。
このような発言の一方で、子供の権利に関わる弁護士の多くが、オバマ大統領は、子供の権利擁護への世界的な呼びかけに加わり、子供の権利条約に署名するとした2009年の約束を実行していないとして批判しています。先の関係者は、「アメリカ自身が、国際社会に対して回答するつもりがないのに、どうしたら、それを他国に求めることができるのか」と語っています。さらに、「アメリカが、子供の権利条約などの国連の条約を批准しないのなら、それはつまり、道徳的に退廃しているということだ」としています。
国連の条約によれば、子供たちは、健康や生きる権利、嫌がらせに対して保護を受ける権利を有しています。また、軍事的な衝突を免れ、人身売買の対象にすることが禁じられています。
国際法によれば、18歳以下の未成年は、成人とは別の裁判所で裁判を受け、その処罰も、大人のそれとは異なるものでなければなりません。しかし、アメリカの44の州で、殺人や組織活動といった重大な犯罪に関して、大人と未成年の間に差別がつけられていません。例えば、フロリダ州では、14歳以上になると、大人と同等の司法制度が適用されます。一方でアメリカは、子供に大人と同様の処罰を与えているとして、世界の多くの政府に圧力をかけています。
国際法や国際条約では、未成年は大人とは異なる拘置所や刑務所に収監され、年齢に応じて対処されるべきだとされています。アメリカはこの条約を受け入れていますが、実際は、それに違反する事例が見られています。
国際的な報告によれば、毎年、およそ25万人のアメリカの未成年者が、大人と同じ条件で訴追されています。彼らの容疑は、窃盗から殺人までさまざまです。統計によれば、およそ1万人の子供が、大人と同じ条件で訴追され、大人と同じ刑務所に収監されています。
子供たちの労働状況についても、アメリカの労働法では、14歳以下の児童を農業以外の分野で雇用してはならないと定められています。また、14歳から16歳の子供は、許可された職業において、パートタイムで働くことができるとされています。
アメリカの農場では、何十万人という子供たちが困難な状況の中で働いています。これは、人権団体から非常に懸念すべき問題として捉えられています。これらの子供たちは、多くが一日10時間以上の労働を強いられており、病気やけがの危険に晒されています。タバコ農場での子供の労働は、アメリカでは普通に行われています。彼らはニコチンによる副作用や頭痛、吐き気などに苦しんでいますが、残念ながら、アメリカ議会は、タバコ農場での子供の労働を禁じるための措置を講じていません。
2014年にアメリカで問題になった子供の権利に関する重要なテーマのひとつが、アメリカに不法に入国し、滞在期間が切れたために国を追い出された両親のもとに生まれた子供たちの権利です。この年、およそ1100万人の移民の滞在期間が切れました。彼らの子供たちの多くは、アメリカ国籍を取得していますが、両親は国外退去処分となるか、隠れて生活を送っており、精神的に苦しい状況に置かれています。
アメリカ政府が、移民の子供たちに関して発表した報告によれば、2013年10月から2014年6月の半ばまでの間に、およそ5万2000人の子供が、家族を伴わず、不法にアメリカに入国しました。2012年10月から、2013年末までの間に、この数字は10万500人を超えました。この他、アメリカでの子供に対する暴力と、家庭の内外の暴力に対する子供の保護に向けた政府の真剣な対策のなさという問題も存在しています。
アメリカ法務省の統計によれば、一年間におよそ45万人の子供が家出をしており、その3分の1が、家出をしてからわずか48時間以内に、人身売買組織などの罠に陥っています。AP通信が2014年12月18日に伝えた報告によれば、2008年からこの報告の発表時までの期間に、少なくとも789人の子供が、家庭内暴力や育児放棄などによって命を落としたということです。子供の死因の多くは、家や車の中に置き去りにされたこと、餓死や暴力とされています。
2014年に話題になった、アメリカでの子供の権利侵害に関するこの他の問題に、18歳以下の未成年の裁判が、大人と同じように行われたことです。国際的な基準では、罪を犯した子供の裁判や処罰は、大人とは異なる方法が取られるべきだとされています。2013年の末までに、1200人の子供たちが、大人と同じ刑務所に収監されていました。
このような状況に対し、ユニセフは懸念を表明しています。ユニセフは、昨年、世界190カ国の子供に関して発表した報告の中で、身体的、精神的な虐待や性的暴行など、子供に対する暴力に関して、多岐にわたる情報を提示しました。この報告では、さまざまな暴力に晒されている子供たちは、大人になってから、貧困や失業に苦しみ、他人に対して暴力をふるう傾向が高くなっている、とされています。
ユニセフは報告の中で、「世界で起こっている殺人の犠牲者の5人に一人が、20歳未満の未成年だ」としています。また、「未成年の子供が殺害されるケースは欧米諸国に多い」と強調しています。
アメリカでは、大人の無責任な銃の携帯が、実際、何百人という子供たちの命を危険に晒しています。小児医学の専門誌の統計によれば、アメリカ全土で、毎日平均20人の子供が、銃によってけがをし、病院に移送されているということです。
アメリカをはじめ、人権擁護を謳う国々の状況は、西側諸国の人権に関するダブルスタンダードを物語っているのです。
ラジオ日本語のユーチューブなどのソーシャルメディアもご覧ください。
https://twitter.com/parstodayj