アメリカ大統領と地球の破壊
ここ数日、アメリカのトランプ大統領が商業的な利潤を追求し、地球や自然環境を破壊する行動を取っています。
今回はまず、IRIB通信の警鐘を鳴らす報告から、ご紹介しましょう。
「21世紀に入ってから、地球全体の平均気温が0.76℃上昇しており、今後さらに1.8℃から4℃上昇すると予想されている。地球の温暖化により、極地帯の氷山が溶解し、その結果、今世紀末には海水面全体がおよそ17センチも上昇することになる。1993年から2003年までの間に、海水面は毎年およそ3.1ミリの割合で上昇してきた。気候の変動は、干ばつや集中豪雨、熱波、熱帯性低気圧の発生といった異常気象につながる」
気候の変動が、特に温室効果ガスの排出を初めとする人間の活動の結果であることは言うまでもありません。人類は、気候変動を引き起こした張本人である一方で、自らもその様々な悪影響に苦しんでいます。この現象の影響により、農業や林業、漁業といった経済活動が停止され、人間の健康や生活が悪影響を受けています。
現在、マラリアといった幾つもの病気が再び猛威を振るっており、この病気のために年間14万人以上が死亡していると見られています。科学者の間では、病気の蔓延や自然災害は気候変動の結果の1つと見なされています。
しかし、気候の変動による最も大きな影響の1つは、人間が暮らす場所に関するものです。気候変動によって地球上の多くの場所で生活が不可能になり、その住民を脅かし、場合によっては他の土地への移住を余儀なくされています。このままの状況が続いた場合、2050年までに世界でおよそ2億人もの人々が他の土地に移住せざるをえなくなると見られています。
近年、地球上にある10億ヘクタール以上の肥沃な土地が砂漠化しています。これにより、この地域の住民が大量に他の地域に移住し、環境難民となっています。この状況は、時に、原住民と移民の間の武力衝突や地域の混乱といった結果をもたらしています。
こうした大規模な動向は、移民の受け入れ先の地域や国々にとって、数多くの問題や深刻な緊張を引き起こす原因となりえ、各地の人口構造をも変える可能性があります。このため、気候の変動は単なる自然環境面にとどまらず、人類の平和や安全にまで関係する問題だと言えるのです。
気候変動による有害な影響や結果への対策は、国際社会の共通の責務であり、それにかかる費用も、各国の間で公平に分担される必要があります。この原則は、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議において、リオ宣言として採択されました。
リオ宣言の後、国連気候変動枠組み条約は、気候変動に関する国際社会の共通の責務に言及しました。このことは、世界の全ての国が気候変動や、地球と環境保護に対して責任を負っているものの、その責任はそれぞれに異なるものだということを意味します。明らかに、温室効果ガスの排出量の多い国、即ちアメリカなどのような先進国は、より重い責任を負うことになります。アメリカは、世界の温室効果ガス全体の4分の1を排出しています。
地球の保護に向けた世界規模の努力の結果、2015年12月にフランス・パリで開催された、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議では、気候変動対策とゼロ炭素化という目標を盛り込んだ最終文書が採択されました。
歴史に残るパリ会議で成立し、採択された32ページに上るこの合意文書は、パリ協定として2020年から発効することになっており、気候変動問題に関して195カ国が初めて合意に至った協定とされています。
パリ協定により、世界各国は温室効果ガスの排出量と化石燃料の消費量を減らすことが義務付けられています。さらに、地球の平均気温の上昇を2℃以下に抑え、1.5℃の上限を超えないよう努力することが求められています。
すでに触れたように、世界の温室効果ガスの排出量の多くを占めているのは、先進国です。このため、これらの国には地球や自然環境の破壊による結果や、悪影響に対処するため、より多くの責任や費用を負担することが期待されています。
環境破壊は、地球の消滅につながります。例えば、アメリカは世界の温室効果ガス全体の4分の1を排出しており、地球の温暖化や森林破壊、干ばつ、洪水、津波、地球規模での動物や水生生物の絶滅を引き起こし、アメリカから遠く離れたアジアの沿岸地域や島々が水没しています。こうした地域に住む人々は、そこでの生活を続けることができず、他の土地への移住を強いられています。
このため、先進国が気候変動による弊害に注目しないことは、最終的に人間の住処が破壊され、それらの国から遠く離れた地域の気候にも悪影響を及ぼし、自然環境、さらには地球の破壊につながります。そして、このことは大規模な集団での移住を招き、世界規模での平和や安全保障が脅かされ、適切な住居や食物、保健衛生、健康的な生活と言った最低限の権利すらも奪われてしまいます。
地球を守ることは重要であり、各国はその責務を負うとともに、国際社会では地球の保護に向けた協力に関する国際協定締結への努力がなされています。しかし、嘆かわしいことに、アメリカの大統領は環境保護関連の法律や原則を守らず、これに公然と反対し、地球を破壊しようとしています。就任してからまだ130日しか経っていない中、トランプ大統領は、こうした努力を短期間で破壊し、世界最大の環境破壊大国として、地球温暖化対策に関するパリ協定からの離脱を発表しました。
トランプ大統領は先週木曜、ホワイトハウスでの短い演説において、パリ協定がアメリカ市民の経済に著しい制限をもたらすという理由で、パリ協定からの離脱を発表し、この協定は自然環境の改善に全く効果を発揮しないと主張しました。
トランプ大統領は、パリ協定によりアメリカの膨大な富が他国に分配されることになると主張し、「パリ協定は、アメリカ国民の生活や経済活動に大きな損失をもたらす」と語っています。
かつてビジネスマンだったトランプ大統領は、多くの化石燃料や資金の利用による利益のために、地球環境や世界の将来をも犠牲にすることを決断しました。
アメリカがパリ協定からの離脱を発表したことにより、アメリカ政府は国際的に孤立し、世界各国の首脳や国民が、アメリカ政府に抗議しています。
アメリカの各州においても、これまでになかった規模でトランプ大統領への抗議の波が起こっています。オバマ前大統領は、アメリカの各州や都市、企業が直接連邦政府やパリ協定の規準に従い、トランプ大統領の措置に反した行動をとることに期待感を表明しました。これまでに、アメリカのカリフォルニア州、ワシントン州、ニューヨーク州がトランプ大統領への反対を表明し、パリ協定を遵守しています。
アメリカのケリー前国務長官は、トランプ大統領が「アメリカファースト」というスローガンを掲げておきながら、現在ではアメリカを最後に位置させる破壊的な措置に手を出した、と語っています。アメリカ民主党のサンダース上院議員も、トランプ大統領の決断は国際的な恥さらしだとしました。
世界各国も、トランプ大統領の決定に抗議し、アメリカ抜きで地球の将来のためにパリ協定を実施すると表明しました。パリ協定の支柱の1つである中国の李克強首相も、中国はパリ協定を引き続き遵守するとしています。アメリカの新聞ニューヨークタイムズも、「トランプ大統領の今回の行動はアメリカを孤立に追い込み、中国に有利なムードを生み出しており、気候変動対策において中国が世界をリードすることを可能にしている」と報じています。
国連環境計画のエリック・ソルハイム事務局長も、「アメリカがパリ協定を脱退したことで、気候変動対策に向けた連携が崩れることはないだろう」と語りました。また、ドイツのメルケル首相も、トランプ大統領の決定を遺憾だとしながらも、彼のこの決定が地球を救うことへの義務感を感じている人々の動きを止めることはできないだろうとしています。さらに、フランスのマクロン大統領もこれ以前に、パリ協定からの離脱に関して何度もトランプ大統領に警告しており、地球以外に人類が住むことのできる惑星は存在せず、パリ協定以外の方法はない、と主張しています。このほか、ロシアやカナダ、メキシコもトランプ大統領の今回の決定に遺憾の意を表明しました。
トランプ大統領は、アメリカ国内外を問わず史上最も不人気のアメリカ大統領となっており、アメリカの精神科医によれば、精神病に苦しんでいるとされています。残念ながら、トランプ大統領は国際社会でのアメリカの孤立を招き、利潤を追求し、商業ベース的な考え方により、地球や自然環境の破壊に向かって進んでいるのです。