世界の情勢:昨年の東アジア情勢
昨年の東アジア情勢は、アメリカのトランプ大統領の政策の影響を受けました。トランプ大統領は大統領選挙の中でも、大統領に就任した後でも、中国と北朝鮮に対して厳しい姿勢を取っていました。
昨年、アメリカ軍は同盟国と朝鮮半島の水域での演習を数回にわたって続けました。この中で、アメリカ軍は戦略的爆撃機や空母、特にカールビンソンを朝鮮半島近海に派遣しました。また、恐怖を植えつけるため、アメリカ軍の艦隊が派遣されました。中国と北朝鮮はアメリカの行動は好戦的だとして、これを非難しました。
日本の安倍総理大臣は、われわれは同盟国の平和と安全保障に関するアメリカの力強い取り決めを歓迎するとしました。こうした中で、アメリカの行動は、地域の安全保障を脅かすようなものと見られています。なぜなら、トランプ大統領はこの1年間、アメリカの脅威とされているものに対して、特定の戦略を持っていないことを示したからです。ロシアの政治専門家のマズルーフ氏は、以下のような見解を示しています。
「トランプ大統領は、中国や北朝鮮に対して、一定の政策を持っていない。彼は常にそれを変えている」
アメリカの軍事的圧力に反応し、北朝鮮も、数回にわたりミサイル実験を行い、日本海に向けてミサイルを発射しました。
北朝鮮は、核計画やミサイル計画はアメリカの脅威に対する抑止力向上のための行動だと強調し、アメリカの北朝鮮嫌悪政策を恐れておらず、トランプ大統領を譲歩させたということを示しました。核兵器不拡散問題の専門家、ジェフリー・ルイス氏は次のように語っています。
「北朝鮮は、現在、大規模な侵略に関する想定を膨らませており、戦争が始まった場合、はじめから核兵器を使用する可能性がある」
昨年、アメリカと中国、北朝鮮の関係に何よりも影響を与えたのは、アメリカのミサイル防衛システムTHAADの韓国配備の問題でしょう。アメリカのこの行動は、ロシア、北朝鮮、中国の大きな反発を受けました。中国は、THAADの韓国配備に抗議する中で、韓国に対する経済制裁や、観光に関する制裁を行使しました。
昨年の終わりの、韓国のムン・ジェイン大統領の中国訪問は、実際、中国政府に制裁を停止するよう説得するためのものでした。韓国に対する中国の制裁は、韓国に70億ドル以上の損失を与えました。韓国・延世(ヨンセ)大学の研究者、ピーター・スピーナ氏は次のように語っています。
「中国にとって、THAADは、安全保障上の脅威であり、彼らは、どのような条件下でもこのミサイルシステムに対して譲歩しない。特に、中国も南シナ海をめぐり、最近アメリカとの言葉上での強い緊張を抱えている」
昨年の2017年、中国の習近平国家主席は、トランプ大統領の侵略的な政策を抑止するため、アメリカを訪問し、フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘で会談しました。多くの記者が、この会談の結果は、中国にとって利益あるものになったとしました。
習国家主席は、この訪問で、北朝鮮や中国に対するアメリカの侵略的な政策の傾向を緩和することに成功しました。一方で、西側メディアも、トランプ大統領は習国家主席に対して、北朝鮮のミサイル計画を停止させるために、100日間の猶予を与えたとしました。この経過から、このトランプ大統領の脅迫と、中国の約束は実現しなかったことが明らかになりました。中国は北朝鮮問題をアメリカとの2国間の問題だと考えていました。中国問題の専門家のディア・ドミンゴ氏は、次のように語っています。
「トランプ大統領は昨年、中国に対して、醜い挑発的な言葉を発した。この数ヶ月におけるトランプ大統領の反中国的な発言は、大変挑発的で、これにより、中国は彼の実際の行動を注意深く監視している」
昨年、安倍首相が、トランプ大統領の当選後、外国戦略の優先事項の一つとしていたのは、アメリカ訪問でした。安倍首相はトランプ大統領と会談する中で、両国の同盟と友好を新たに強調し、日米関係は根本的なものであり、アジア太平洋の平和と安定の上に成り立っているとしました。
安倍首相とトランプ大統領の会談の中心議題は、北朝鮮問題でした。トランプ大統領は安全保障の問題に焦点をあて、北朝鮮の核の脅威はアジアの同盟国との関係におけるアメリカの優先事項だとしました。
昨年、中国共産党大会が北京の人民大会堂で5日間にわたり開催され、これに2300人の共産党員が参加しました。
この大会は今後5年間の政治、経済、外交の計画が決定される、中国の最も重要な政治イベントだとみなされています
習国家主席はこの大会で、「中国の社会主義システムは、大きな柔軟性と力強さを示しており、中国の国家と人々には輝かしい未来が待っている」としました。また、我々は中国の新たな時代の状況に注目することにより、自信と栄誉をもって生き、より大きな責任感を持つべきだとしています。
今回の共産党大会では、中央委員会報告決議、中央規律検査委員会活動報告決議、中国共産党規約の修正案に関する、3つの重要な決議が採択されました。この党規約の修正案決議では、習国家主席の思想が、新たな時代の中国の特性をもった社会主義思想として盛り込まれました。
2017年、アメリカのトランプ大統領は、12日間に渡り東アジア諸国を訪問し、この中で、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪れました。
トランプ大統領は中国訪問で、北朝鮮に対する過激な発言や、アメリカと中国の貿易関係に不満を示す発言を再び繰り返しました。また、中国に対して、北朝鮮への圧力を強化し、米中貿易におけるアメリカの赤字を減らすための行動を起こすよう求めました。
トランプ大統領は日本訪問で、北朝鮮の脅威に対する同盟国への支援を強調しました。この日本訪問における興味深い事件として、トランプ大統領は日本の天皇と会見した際、慣例に反してお辞儀をしなかったことで、日本の人々の強い反発を受けたことが挙げられます。
また、トランプ大統領の2日間の韓国訪問も、北朝鮮の核問題やミサイル問題を解決する上で大いに重要だと見られていました。今回のアメリカ大統領の韓国訪問は、1992年にジョージ・W・ブッシュ大統領が訪問して以来25年ぶりのものとなりました。
昨年、日本の衆議院選挙で、自民党が勝利しました。自公連立は、この選挙で465議席中、312議席を獲得しました。
自民党の勝利により、安倍首相が憲法を修正するのに容易な状況が整いました。中国や韓国といった近隣諸国は、日本の軍国主義的な政策の結果を大変懸念しています。
また、韓国でも大統領選が行われ、この中で、「共に民主党」のムンジェイン氏が当選しました。
この、「共に民主党」は、韓国の最も重要な左派政党のひとつで、韓国の労働組合と見解の点で近いとされています。
ムン大統領はこの当選により、10年にわたる韓国の保守政権時代を終わらせました。この選挙は、パククネ前大統領の職権乱用問題が暴露され、弾劾された後に行われました。韓国の憲法裁判所は、パク前大統領の罷免を認めました。