ラマザーンへのいざない(6) 預言者ムハンマドの天界飛行
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預言者ムハンマドの天界飛行
今回は、イスラムの預言者ムハンマドの天界飛行についてお話しましょう。
歴史の中で行われた最も神聖な旅は、イスラムの預言者ムハンマドが天を飛行し、再び地上に戻ってきた旅です。聖典コーランは、第17章アル・イスラー章夜の旅と、第53章ナジュム章星で、この天界飛行に触れています。第17章アルイスラー章夜の旅、第1節には次のようにあります。
「無謬である神は、僕を夜にマスジェドルハラームから、我々が周囲に恩恵を与えたアクサーモスクへと旅をさせた。彼にそのしるしの一部を示すために。神は、すべてを聞き、見ておられる」
このコーランの節から、天界飛行が夜に行われたことがわかります。神はある夜、預言者ムハンマドを、メッカにあるマスジェドルハラームから、パレスチナにあるアクサーモスクに、そしてそこから天へと旅させました。
言い伝えには次のようにあります。大天使ジブライールは、天界飛行の夜に預言者ムハンマドのもとに降り立ち、彼のために四足の動物を用意しました。預言者ムハンマドもそれに乗って空を飛びながらベイトルモガッダスに向かいました。また、預言者ムハンマドは、メディナの道の途中で、クーファのモスクや他のいくつかの聖地に立ち寄り、礼拝を行い、それからアクサーモスクに入りました。
アクサーモスクには、イブラヒーム、ムーサー、イーサーなどの偉大な預言者の魂と共に、礼拝を行いました。この礼拝の導師は預言者ムハンマドでした。そこから、預言者ムハンマドの天界飛行が始まり、7層の天を次々に通過し、それぞれの層において、驚くべき場面を目にしました。
預言者ムハンマドは、天界飛行の夜、創造の奇跡や天の様子を目にし、神の預言者たちと会いました。また天国と地獄を目にし、天国の人々の状況と彼らが持つ恩恵、そして、地獄の人々と彼らの責め苦を見ました。この天界飛行の中で、大天使ジブライールが、彼に同行しました。
イスラムの預言者ムハンマドは、大天使ジブライールと共に、第6層までのぼり、数多くの奇跡を目にしました。こうして、第7層に到着しました。大天使ジブライールは、それ以上、預言者の天界の旅に同行することはできませんでした。ジブライールは預言者にこう言いました。「私はこの場所に入ることを許されていない。あと指先ほどでも近づけば、私の羽は燃やされてしまう」
預言者ムハンマドは、その光と明るさに溢れた世界で、神の間近に近づきました。そこにはただ、預言者ムハンマドと至高なる神がいるのみでした。神はそこで、預言者に数多くの重要な指示を与え、神と預言者の間で、美しい会話が交わされました。この会話の後、預言者ムハンマドは、地上に戻り、日の出前には、メッカにある自分の家に戻っていました。

この言い伝えを見ても分かるように、預言者ムハンマドの天界飛行は、恐らく、2度以上、あるいは何度も行われたと考えられます。そしてそのうちの一つは、非常に明らかなものでした。この天界飛行は、ムハンマドが預言者としての使命を授かってから10年目のラマザーン月17日の夜に起こったと言われています。
イスラムの預言者ムハンマドの天界飛行は、独自の特徴を有しています。この旅は、物理的なもので、目覚めているときに行われました。預言者ムハンマドは、この精神的な旅の中で、天と地の数々の秘密について知りました。では、なぜ、ムハンマドはこの天界の旅に出ることになったのでしょうか?
至高なる神は、この天界飛行をかなえる要因となった、預言者ムハンマドの最も重要な特徴について、聖典コーランの中で明らかにしています。コーラン第17章アル・イスラー章夜の旅の第1節は、預言者ムハンマドの最も明らかな特徴として、神の僕であることを挙げています。預言者は、至高なる神に服従していたため、このような大きな恩恵に授かり、天界を旅することができました。
聖典コーランや伝承によれば、預言者の天界飛行は、間違いなく、起こったものであり、それを認めることは、イスラムのすべての宗派の間で見解が一致している、宗教の必須事項のひとつです。このことは、一部の祈祷などでも触れられています。天界飛行は、ムハンマド以外、神の創造物のどれひとつとして、経験したことのないものとなっています。
預言者ムハンマドは、この旅の後、自分が目にした天界の様子や偉大さについて、人々に語りました。これにより、この物質的な世界よりも人類の理解が高まり、その視線が、物質的な世界から、天界を見つめるものへと変わるようにしたのです。
天界飛行に関する伝承では、神と預言者ムハンマドの貴重な会話が紹介されています。
至高なる神と預言者ムハンマドの会話と天界飛行の伝承によれば、人間を礼拝へといざない、神へと近づける最初の一歩は、沈黙と断食です。シーア派8代目イマーム、レザーは、沈黙について次のように語っています。
「沈黙は、英知の扉のひとつである。沈黙は愛情をもたらし、人間をあらゆる善へと導くものである」
人間の口は自由であり、あらゆる無意味な発言を行う限り、服従の道を進むことはなく、その結果、目的地には到達しません。沈黙を守る人は、嘘をつく、陰口を言う、誹謗中傷を浴びせる、など、口に関する多くの罪を逃れることができます。とはいえ、あらゆる沈黙が、善につながるわけではありません。沈黙が、人間に善や恩恵をもたらすのは、考えを伴っている場合です。
天界飛行の伝承によれば、空腹や断食も、服従の準備段階です。偉人たちによれば、魂を浄化するための方法の一つは、空腹を感じることです。適度な空腹は、人間の理解力と思考力の扉を開くものです。
腹が満たされると、理解する道が閉ざされます。食べ過ぎの人は理解力が劣るため、世界の神秘を理解することはないでしょう。常に腹が満たされている状態は、意志の力を失います。反対に、食事において節度を守ることは、健康を保ち、寿命を延ばし、心に光をともすことにつながります。
必要以上に食べ物を口にすることで、余分な食べ物を消化する必要が出てくるため、体はエネルギーをさらに多く必要とします。こうして、人間の衰えも早まります。多く食べる人に長生きする人は少なく、いつも体がだるい状態に陥ります。
断食は、最も適切な訓練です。ラマザーン月の1ヶ月、消化器官が休息し、少なく食べることに慣れてきます。ラマザーン月には、断食により、おいしい食事を食べたいという過度の欲求が静まり、食べることを心配しなくてもよくなります。断食をする人は、神への礼拝の道を歩み、宗教的な義務を実践することで、光へと向かうことになるのです。
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