広島市、足元で進む「名ばかり平和都市」
広島市は、シオニスト政権イスラエル軍によるガザ侵攻について「外交・安全保障に関することは国の専権事項」であるとして、市として声明などを出す考えはないことを表明しました。
毎日新聞によりますと、これは、市民団体「広島パレスチナともしび連帯共同体」が市および市議会に対して提出したイスラエルによるガザ侵攻について公開質問状に回答したものです。
この団体は今月13日、広島市の松井一実市長と市議会の母谷龍典議長に公開質問状を提出し、「イスラエルによるガザ攻撃がジェノサイドに該当するとの認識はあるか」「(イスラエル政府の一部閣僚がガザへの核兵器使用を主張していることをうけ)現在のガザの事態が核問題であるとの認識はあるか」などを問いただしました。
これに対し市は、ガザで多くの人命が失われていることは「極めて遺憾」としつつ、「国際紛争の解決に向けた外交・安全保障は国の専権事項である」とし、「声明文ではなく、平和首長会議加盟都市とともに貢献していきたい」と述べるにとどまりました。
広島市は世界166カ国・地域の8363自治体が参加する平和首長会議の会長を務めています。市の回答によれば、昨年10月に市が平和首長会議会長として武力行使の停止などを呼びかけたということです。
また、ガザ情勢が核問題にあたるかどうかについては、「直接抗議文を送る核実験の実施などにはあたらない」として退けました。しかし、広島市はウクライナ戦争下の2022年2月、プーチン露大統領が自軍の核戦力部隊に「特別警戒態勢」と命令したことをうけ、抗議文を送付しています。
広島パレスチナともしび連帯共同体のメンバーのひとりは、市のこの回答に対し「閣僚が核による威嚇をしたこと自体、核廃絶の妨げになっている」と批判しました。
広島市をめぐっては、小学校3年生向けの平和学習用の副教材から漫画「はだしのゲン」の場面が削除されたほか、最近では松井市長が市の職員研修用教材に教育勅語の一部を使用していることを正当化したことが問題になっています。
松井市長は就任直後の2011年6月、医療費支給を求める被爆者らに対して「『くれ、くれ』という権利要求みたいな気持ちではなく、『ありがとう』の気持ちを持つことを忘れないように」などと侮辱する発言をし、批判を浴びました。
広島市は2022年にも、同年の平和記念式典で放映された韓国人被爆者の男性のビデオメッセージについて、事前にこの男性に「外国人として切り捨てられ」との原稿部分を削除するよう要請していたことが明らかになっています。男性は別の機会で発言できることを見込んで市からの要請を受け入れましたが、がんの病状が悪化し、それを果たすことなく平和記念式典の1週間前に亡くなりました。
広島市で立て続けに起こるこうした動きは、松井市政の意向がはたらいていると見られても仕方ありません。
世界に向けては「被爆都市」「平和都市」としての呼び名をほしいままにしながら、足元では歴史を否認し、現在進行形で起きている戦争にも沈黙することは、そうした称号が「名ばかり」であることを物語っています。