ドーハ協議ー米の核合意復帰の機会
(last modified Wed, 29 Jun 2022 08:46:19 GMT )
6月 29, 2022 17:46 Asia/Tokyo
  • エンリケ・モラ欧州対外行動庁事務次長とイラン首席代表のバーゲリーキャニー外務次官
    エンリケ・モラ欧州対外行動庁事務次長とイラン首席代表のバーゲリーキャニー外務次官

対イラン制裁解除を目指しての、イランとアメリカによる間接協議が28日火曜、エンリケ・モラ欧州対外行動庁事務次長の仲介により、カタール首都ドーハで開始されました。

ボレルEU外務安全保障政策上級代表のテヘラン訪問および、イラン政府関係者との会談の後、「アメリカとイランの決定に基づき、制裁解除を目的とした協議が28日火曜および、29日水曜の両日にわたり再開される」と発表されています。

ドーハでは28日、協議のイラン首席代表のバーゲリーキャニー外務次官および、核合意関連交渉の調整役を担うモラ事務次長が会談を行いました。

今回の協議への参加のためドーハ入りしている米外務省のロバート・マレー・イラン問題担当特別代表も、ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ・カタール外相と会談しました。

制裁解除を目指しての、イランおよび5カ国グループ(英独仏中ロ)の代表者らによる対面式の協議は、2021年12月よりオーストリア・ウィーンにて開始され、今年3月以降はボレルEU上級代表の提案により水入りとなっていました。

それ以来、カタールをはじめとする一部の国はメッセージ交換や仲介に向け努力してきました。カタール外務省は、ドーハでの制裁解除交渉に関する声明を発表し、「この協議が、プラスの成果につながるよう希望する」と表明しています。

しかし、イラン・アメリカ間の間接協議の再開は必ずしも、核合意復活が近くなったことを意味するものではありません。それは、この合意が今やアメリカの政治的決定にかかっており、合意への調印は制裁解除および、イランが認める保証の供与が条件となっているからです。実際に、恒久的な合意成立を決定付けうる要素は、各種制裁の効果的な解除および、今後予想される合意でイランが利益を得られることの確約です。これにより、イランは現在までに協議は成果に至るために必要な提案やイニシアチブを出してきています。

こうした中、ドーハ協議開催を前に米ホワイトハウスは、責任逃れにより協議の運命をイランの決定に関連付けようと工作していました。サリバン米大統領補佐官は、核合意違反の中でまたもや決定をイランに委ね、アメリカのお決まりの主張を繰り返して、「イランに関しては、アメリカの見解はずっと前からはっきりしていると言わねばならない。それは、我々がイランの核兵器獲得阻止を決意しているということである」と述べました。

もっとも、アメリカ政府当局者からのこのような表明は再度、イランがなぜ核合意の完全実施に向けた恒久的な合意の必要性を強調しているかを証明したことになります。それは、アメリカ政府が民主・共和党派のいずれであっても、イランに対してほとんど同じ政策をとっているからです。ウィーン協議の停止も、バイデン米現政権がトランプ前政権の「最大限の圧力行使」という失敗した政策を批判していることとは裏腹に、この政策を改めようとはせず、制裁の効果的な解除やイランに対する有効な保証の供与を受け入れないことにより起こったものです。

このため、ドーハで進行中の協議はアメリカにとって、現実の直視および信頼構築措置により、しかも核合意と無関係の不当な要求を出さずに、合意成立に必要な政治的意思を示すための新たな機会となります。

ハティーブザーデ・前イラン外務省報道官は27日月曜、ドーハ協議に関して、「内容・形式の2つの面で一連の合意が得られていることは認める。だが、アメリカが果たして、行動によってトランプ前政権の負の遺産を乗り越え、責任ある合意メンバーの一員となるかどうかは、今後さらに見守っていく必要がある」と語りました。

 


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