イスラム協力機構とアラブ連盟の会合における各国当局者の発言 + ネットユーザーの批判
ガザとレバノンにおけるシオニスト政権イスラエルによる戦争犯罪への対処を検討するため、LAS・アラブ連盟とOIC・イスラム協力機構の臨時合同会議が11日、サウジアラビア首都リヤドで開催されました。
【ParsToday西アジア】昨年10月7日に始まり400日を超えたガザ戦争では数万人が殉教しており、パレスチナ当局および国連によれば、そのほとんどが女性や子供だと報告されています。今回のLAS・OIC合同会合はイランの要請により開催され、イランのアーレフ第一副大統領、パレスチナ自治政府のアッバス議長、レバノンのミカティ首相、トルコのエルドアン大統領、シリアのアサド大統領らを含むイスラム圏の57の加盟国の首脳が出席しました。議長はサウジアラビアのムハンマド皇太子が務めました。
この会議の最終声明では、聖地ベイトルモガッダス・エルサレムが重要な問題かつ、アラブ・イスラム共同体にとっての「譲れない一線」であること、そして東エルサレムに対するパレスチナ政府の完全な主権が強調されるとともに、聖地のユダヤ化と植民地的占領の強化を目指すイスラエルの決定・行動の全てが否定されました。
さらに、「パレスチナ占領の強化というイスラエル政権の決定は『無効』かつ『違法』であり、国際法や国連決議に違反する」と指摘しました。
加えて、数千人のパレスチナ人が行方不明となっている事実、そしてイスラエルの刑務所でのパレスチナ人の拷問、弾圧、屈辱的な扱いを非難しました。
声明はまた、地域における暴力行為の増大、特にレバノンにも広がるガザでのイスラエルによる「恐ろしい犯罪」に強い懸念を表明するとともに、イラン、イラクそしてシリアの国家主権に対するイスラエルの侵害行為に対しても警告しました。
そして、レバノンへの「絶対的な」支持を表明するとともに、同国の国民の安全、安定、福祉への尊重・約束を強調しました。
その上で、ガザとレバノンでの停戦不成立の責任はイスラエルにあるとし、国連安保理に法的強制力のある停戦履行決議の採択を求めました。
そして、イスラエルを支持する国々の二重基準に対して警告し、「こうしたダブルスタンダードは、イスラエルを支持しその責任を問わない諸国の信頼性を著しく失墜させたとともに、人道的価値観に基づく秩序が矛盾を孕む恣意的なものであることを暴露した」と批判しました。
連帯責任
イランのアーレフ第一副大統領はこの会合での演説において、国連、特に安保理がイスラエルによるパレスチナ・レバノン両国民の虐殺を阻止できていないことを指摘し、「この失態の原因は米国と一部の西側諸国の絶対的な対イスラエル支持にある」との見解を示しました。
また、すべてのイスラム教徒とアラブ諸国に対し、イスラエルの犯罪終結に向け一丸となって断固とした姿勢を取る連帯責任を正式に受け入れるよう呼びかけるとともに、効果的な国際的介入がない場合の連携した取り組みの必要性を強調しました。
続けて、アラブ・イスラム諸国の指導者の責任が増大していることを強調し、「アラブ・イスラム諸国は、イスラエルの犯罪の再発を防ぎ、レバノンとパレスチナの国民が受けた損害を十分に補填する戦略を打ち出す必要がある」と語りました。
イラン・イスラム革命最高指導者アリー・ハーメネイー師はこれまで多数の声明において、イスラエルへの抵抗および、米国の支援を受けて行われているガザとレバノンでの大量虐殺犯罪の終結に向けたイスラム教徒の団結の重要性を常に強調してきました。
ハーメネイー師はヒズボッラーのナスロッラー事務局長の殉教から1週間後に当たる10月4日の金曜礼拝の説教において、イスラム教徒の団結と連帯が神の慈悲と威信の享受、そして敵に対する勝利につながると強調するなど、ガザとレバノンでのイスラム教徒に対するイスラエルの犯罪に対抗すべく、イスラム諸国が協調した集団的な対応の必要性を強調しています。
団結と支持
今回の会合で、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はパレスチナ国民を代表して、アラブ・イスラム諸国に対し、パレスチナ国民への団結と支持を表明するよう求めました。また、イスラエルのガザ侵攻阻止および、この包囲された地区に不可欠な人道支援提供を保証する国連決議の履行を求めました。
レバノンのミカティ首相も「イスラエルがレバノン国民に対する侵略を続けているため、レバノンは国家存続を脅かす前例のない危機に直面している」と述べました。
ミカティ首相はまた、イスラエルの攻撃により少なくとも3000人のレバノン人が殉教したほか、1万3000人以上が負傷、120万人が難民化しているとし、経済的被害についても10万戸の家屋破壊や教育、医療、農業などの基幹分野への重大な影響を含め、その被害額は85億ドルと推定されるとしました。
大量虐殺への共謀
シリアのアサド大統領は、「イスラエルによる虐殺に対処するために必要な手段が存在する」と述べ、「それを実行しないことは大量虐殺の継続に加担することになる」と警告しました。
アサド大統領はこれについて、「我々は官民いずれの形式であれ必要な手段を持っており、停戦という我々の要求にシオニスト政権が応じない場合には、我々はそれを実行ができる」と述べました。
そして、「我々の実際的な計画とは何か? ただ怒りを表明するだけなのか、それともボイコットに踏み切るのか? さもなければ、我々は大量虐殺の継続に加担することになる。なぜなら、我々が相手にしているのは合法的に認められた政府ではなく、シオニストという殺人者や犯罪者が牛耳る集団だからである」と述べました。
イエメン最高政治評議会議長のメフディ・アル・マシャート氏もこの会合に寄せたメッセージの中で、現在の危機に対する断固たる対応措置を講じる重要性を強調し、そうした措置の例としてイスラエルに対する完全な制裁行使や経済封鎖の実施、パレスチナ抵抗勢力への支援を挙げました。
このメッセージの中で同議長は、「イスラエルの残虐な犯罪への無視・沈黙、無関心を続け、イスラエルの主な支持者らによる解決を待つようなことは、万人に深刻な結果をもたらすだろう」と警告しました。
議長を務めたサウジのムハンマド皇太子は、パレスチナとレバノンの被抑圧民に対するイスラエルの犯罪を非難し、イスラエル政権に対し「これ以上の侵略を自制する」よう求めるとともに、世界各国に対しパレスチナを正式に国家承認するよう求めました。
アラブ連盟のアブルゲイト事務局長は、サウジ皇太子の発言に同調し、ガザとレバノンにおけるイスラエルの殺傷的で破壊的な戦争を非難し、「パレスチナ人の苦しみは筆舌に尽くしがたいものだ」と語りました。
ヨルダンのアブドラ2世国王も、ガザやレバノンでのイスラエルの犯罪を非難し、パレスチナへの支援拡大を求めました。そして、「イスラエルによるガザ戦争勃発から1年以上が経過し、地域は容認しがたい悲劇の真っ只中にある」と述べました。
アラブ・イスラム国際同盟の結成
会議にはハマスもメッセージを寄せ、ガザとレバノンにおけるイスラエル政権の犯罪終結のため、国際的なアラブ・イスラム同盟の結成を呼び掛けました。
ハマスはメッセージの中で、「我々は侵略の終結、ガザからの占領軍の撤退、難民の帰還、封鎖の解除、被災地の再建、実質的な捕虜交換合意の完結につながる提案や構想に協力する用意がある」としました。
また、すべてのアラブおよびイスラム諸国に対し、イスラエルへのボイコット、すべての対イスラエル関係正常化合意の破棄、あらゆる手段によるイスラエルの孤立化に努めるよう求めました。
DFLP・パレスチナ解放民主戦線もこの会合へのメッセージの中で、アラブ・イスラム圏の指導者による単なる発言や声明ではなく、具体的な行動を求めました。
DFLPはこの声明において、「ガザ、ヨルダン川西岸、そしてパレスチナ国の首都たる聖地にいる我らパレスチナ国民は、アラブ・イスラム圏の指導者の表明や声明を耳にすることだけを望んでいるのではなく、国家の責任者、同胞、そして人間としての効果的な行動を待っている」と訴えました。
そして、会合に出席した各国に対し、パレスチナの国民とその抵抗組織への支持、自らの確固たる立場と現実的な措置による大量虐殺阻止に向けた働きかけを求めました。
アラブ連盟とイスラム協力機構への批判
OIC・イスラム協力機構とLAS・アラブ連盟の第2回緊急会合は、サウジでLASとOICが初めて会合を行ってからほぼ1年後に開催され、パレスチナ人とレバノン人に対するイスラエルの犯罪と戦争について議論されました。またこの会議でイスラム諸国の指導者らはガザでのイスラエルの行動を「残虐」だとしました。しかし、対イスラエル経済・外交関係の断絶、あるいは石油供給の停止という提案にもかかわらず、これらの諸国首脳らはイスラエル占領政権に対する具体的な行動については合意に至りませんでした。
OICとLASの多くの加盟国は、戦争を非難しながらもイスラエル政権との通商・外交関係を維持してきたため、公然たる偽善者として非難されています。特にOICには、イスラエルに対して異なる立場を持つ様々な国が加盟しており、一部の加盟国がイスラエルと外交関係を確立している一方で、依然としてイスラエル政権に断固として反対している国もあります。
過去1年間、イスラエルが新たな対ガザ戦争を開始し、4万3000人以上のパレスチナ人を殉教に至らせて以来、世界中のイスラム教徒は、効果的な介入によりイスラエルの攻撃を現実的に阻止できなかったOICに対して失望と不満を表明してきました。彼らは、OIC加盟国間には断固たる措置を講じる上で足並みがそろわないことを批判し、「この問題は危機解決、そしてイスラエルの犯罪で被害を受けた人々の権利保護に対する真の決意が欠如していることを示すものだ」と考えています。
作家でコラムニストのアブドラ・アルマディ氏は、自身のXへの投稿の中で、OICが適切な行動に出なかったことを非難し、OICは「Oh ,I See(ああ、なるほど)」の略であり、つまり「OICは意味ある行動を取らずに、ただ状況を傍観しているだけの存在だ」と揶揄しました。
他にも、ユーザー名@janm18459は、OIC加盟国について「この組織の加盟国全体の4分の3は、西側諸国が要求することは何でもやっている。それは劣等感、西側諸国を信頼する単純さ、そしてクーデター、騒乱、制裁など西側からの工作に対処する諜報機関と経済の弱点が組み合わさったものである」と指摘しました。
シャラーズ・バハードルと名乗る別のユーザーも、「いわゆるアラブ・イスラム圏の指導者の半数以上は、自らの面目を守るためにイスラエルからこの会議への参加許可を得た」と投稿しています。