視点:アギーギー解説員
地域の地政学的変更に再度反対するイラン
イラン国家安全保障最高評議会のアフマディヤーン書記長は、アルメニアのグレゴリヤン国家安全保障評議会書記との会談で、最近のコーカサス地域の情勢について「地域の地政学的変更は全て、不安定化や危機の悪化につながる」と述べました。
今回の両者の会談は、コーカサス情勢が再び注目を集め、アルメニアが1991年の旧ソ連からの独立最も困難な政治的危機に置かれている中で行われました。
アゼルバイジャンは先月19日、トルコの支援を得て、アルメニアとの係争地ナゴルノ・カラバフで軍事作戦を開始しました。ナゴルノ・カラバフは、過去30年にわたって、アゼルバイジャン領内にありながらアルメニア系住民が多数を占め、国際的な国家承認を得ることなく、アゼルバイジャン中央政府から独立した形で運営されてきました。
ナゴルノ・カラバフの政府軍は、アゼルバイジャン軍の包囲により物資の輸送を遮断されると降伏を表明し、今年末までにナゴルノ・カラバフ政府を解体すると発表しました。
アルメニアは、ロシアによる平和維持軍を、アルメニアの領土保全を脅かしかねないアゼルバイジャンの攻撃を防げなかったとして非難しました。
今回の衝突では、ナゴルノ・カラバフに住んでいた多くのアルメニア系住民が難民となりました。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は、ナゴルノ・カラバフに住むアルメニア系住民の権利を尊重すると表明しましたが、住民らは民族浄化への恐れから、アゼルバイジャン政府の統治下では暮らしたくないと訴えています。
こうした中、アルメニア国内では、ナゴルノ・カラバフを防衛できなかった責任があるとして、パシニャン・アルメニア首相への抗議デモが開催されました。
イランは、基本的かつ論理的な政策にもとづいて、近隣諸国の領土保全を常に支持してきました。
また、こうした国々が占領または分割されることに反対し、地理的国境の不変性を徹底的に堅持してきました。
イランは、アルメニアよるナゴルノ・カラバフおよびアゼルバイジャン領の7都市の占領に反対すると同様に、トルコとアゼルバイジャンの隣接を目指したアルメニア領の一部占領にも反対しています。
それは、領土保全や国境の不変性の侵害は、地域にとって深刻な安全保障上の脅威となり、経済発展の阻害要因にもなるからです。
イラン・イスラム革命最高指導者のハーメネイー師は昨年7月19日、トルコのエルドアン大統領との会談で、ナゴルノ・カラバフがアゼルバイジャン領へ戻ったことを歓迎しつつ、「もしイランとアルメニアの国境を封鎖するような政策が存在すれば、イランはそれに反対する。
なぜなら、この国境は何千年にもわたって交易が行われてきたルートだからだ」と述べました。
ハーメネイー師はロシアのプーチン大統領との会談でも、「イランは、イランとアルメニアの国境を封鎖するような政策・計画を決して容認しない」と語っています。
イランの見方では、ナゴルノ・カラバフの国境紛争や住民の権利・安全などをはじめとした南コーカサス問題は、西側諸国やシオニスト政権イスラエルが介入しない対話によって解決されるべきことは明らかです。
またイランは、緊張緩和のために地域諸国が役割を果たすことを強調し、イラン、ロシア、ジョージア、トルコ、アゼルバイジャン、アルメニアが参加する3+3対話による現在の対立の解消を支援する用意があることを常に表明しています。