イランの地下水路「カナート」:古代イランが世界に知らしめた水利管理技術
(last modified 2024-07-27T05:03:18+00:00 )
7月 27, 2024 14:03 Asia/Tokyo
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    イランの地下水路「カナート」:古代イランが世界に知らしめた水利管理技術

カナートは、古代イラン人によって生み出された地下水の利用方法の一つであり、イランの地における古代文明や英知、知性を物語る建造物といえます。

カナートとは地下に造られた水利施設であり、イランでは現在でも水資源が少ない地域などで使用されています。

 

いくつもの井戸が連なった構造は水流の誘導が目的


カナートは長期間にわたり、多くの国で水の供給をもたらしてきました。複数の史料によれば、イランのカナート建造技術は徐々に世界の他の地域に伝わり、東はアフガニスタンやインド、中国、そして西はモロッコ、アルジェリア、リビアなどの北アフリカ諸国にまで見られます。いくつもの調査研究から、これらの地域の人々は通常、カナートの建造が可能な地域に定住していました。

 

カナートのあらましとその建造ノウハウ

カナートは、水を地表まで運ぶために地下に掘削された水路です。地下湧水は母井戸と呼ばれ、地中深くに掘られた水路は、実は母井戸を起源とする一連の複数井戸をつなぐ連絡路の役割を果たしています。カナートが地上に達して出水口となる場所は「堅坑」と呼ばれます。

 

カナートの掘削方法


カナート掘削方法における重要なポイントは、その作業方法にあります。この地下水路の掘削には機材を一切使わず、重力だけを利用して地下から水を地上まで汲み上げる、という方式がとられます。

 

イランのカナートと世界遺産登録

ユネスコ・国連教育科学文化機関は、水資源の供給に関する報告書の中で、「古代イランでカナートとして知られる給水トンネルの掘削方法は最古の知能的工学の一つであり、必要な水の供給をするための賢明な方法である」として、世界遺産リストに記載しました。

現在、イランにある約10ヵ所の古代カナートがユネスコ・世界遺産リストに登録されています。それらの主なものとして、約3000年前のものとされる中部ヤズドのザーラチ・カナートがあり、これは全長が83キロにもおよびます。そのほかにも北東部ホラーサーン・ラザヴィー州ゴナーバード、東部の南ホラーサーン州バラデ・フェルドウス村、ヤズド州ザーラチ、南東部スィースターン・バルーチェスターン州ハサナバードなどのカナートがあります。

 

世界における模範建築としてのカナート


 

他国におけるイランのカナート掘削に関する知識

カナート技術はその有用性を証明することで、世界の他地域にも水と緑をもたらし、その効果は多くの国、特にかつてイスラム教徒が進出していたスペインのような国々で顕著に現れています。世界最大の人口を擁するインドでも、カナート技術の伝来はこの地の住民にとって大きな助けとなりました。

 

イラン式カナート施設の絶妙な構造


インドでのカナート建設例

インド西部マハーラーシュトラ州のアウランガバード市(現在は「チャトラパティ・サンバジナガル」として知られる)は、インドの他の多くの地域と同様、毎年夏になると水不足の問題に直面しますが、かつてはこの都市は水不足でも緑があることで有名でした。こうした緑の豊かさの秘密はまさに、「ナハール・アンブリ」と呼ばれる地下水路システムにあったのです。この一連の地下水路システムは1612年、「マリク・アンバル」という名の1人の奴隷により建設されました。

建築研究家のダーナーシュリー・メエラージカール氏は学術論文において次のように綴っています。

「アンバルはインド入国前に数年間、古代イランに住んでいた。彼は数年後、イランの水道システムにインスピレーションを受け、アウランガバードに地下水路を建設することとなった。彼は、イラン人が水不足解消のために発明したこのシステムに学び、後に技術士集団の助けを借りてアウランガバードにてこれを導入したのである」

 

技術の粋を集めたカナートのトンネル掘削


この水利設備について研究した歴史家シェイフ・ラマザーン氏が述べているように、これらの地下水路の長さは0.5マイル(約4キロ)にも達し、過去400年もの期間にわたって、今でもきれいな水を供給しています。

これらのカナートは復活可能か?

ラマザーン博士は「全世界の土地の20%には、この方法に適した自然地形が存在する」と述べています。

 

カナートの内部


このような地域の村落にこうした地下水路が建設されれば、数百万人もの国民の飲料水問題が解決されると思われます。

 

 


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