南コーカサスの現状変更への試みに対するイランの戦略
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アリー・アクバル・ヴェラーヤティー氏
アゼルバイジャン共和国が本土と飛び地領・ナヒチェヴァン自治共和国を結ぶためにイラン・アルメニア国境沿いに設置を計画している「ザンゲズール回廊」構想は、イランにとっては、安全保障、経済、政治的な影響をもたらす地政学的な脅威として認識されています。
【ParsTodayイラン】イラン最高指導者の国際問題担当顧問であるアリー・アクバル・ヴェラーヤティー氏は、ザンゲズール回廊について、地域および地域外の複数国を念頭に警告を発しました。同氏はこの中で、「イランは自国や地域の利益に対して無関心ではない」と強調し、「南コーカサス地域で不正な目標を追求しようとするあらゆる試みに対して、イランは強硬に対応する」と明言しました。
ザンゲズール回廊構想にイランが反対するのは、単なる領土問題にとどまらず、深刻な地政学的、歴史的または安全保障上の懸念に基づいています。イランは南コーカサスにおける独自の位置を背景に、地域情勢に積極的に関与し続けています。アルメニアとの陸路の接続は、イランがヨーロッパとコーカサス市場にアクセスする唯一のルートであり、ザンゲズール回廊がアルメニアが関与できない形で設置されれば、このルートが遮断され、イランは地域における経済的利益を失うことになります。

イランは地域の物流網の開放に反対しているわけではありませんが、その条件としてアルメニアの主権を維持し、イランの利益が脅かされないことを挙げています。ザンゲズール回廊は、単なる物流ルートではなく、米国などの地域外勢力の介入が背後に見え隠れしています。イランは、そうした勢力の目的をイランの地域経済における地位を弱体化させることにあるとみています。イランはこうした試みに対抗して、アルメニアとの関係を強化し、共同投資や国境警備の強化などで、自国の利益を守ろうとしています。
南コーカサスは、その経済的な可能性と地政学的な位置により、イランにとってきわめて戦略的に重要な地域です。ザンゲズール回廊が設置されれば、この地域の現状変更や不安定性の増大、アメリカとイスラエルの共同の陰謀を招く可能性があります。
イランはザンゲズール回廊計画に対抗するため、様々な外交および実践的な戦略を提案しており、これらの戦略は国の利益を守り、イランと地域の経済的地位を向上させるために重要な役割を果たすとされています。
その一つとして、オマーン湾に面するチャーバハール港やカスピ海沿岸のアンザリー港、また中央アジアやロシアへ至る鉄道ルートへの投資を呼びかけています。イランの経済計画には、アルメニアとの間で自由貿易地域を設け、貿易を促進し、ザンゲズール回廊の影響を緩和するための商業協定や共同投資契約の締結も含まれています。
また、イランは近年、北西部における鉄道網や道路網の整備を進め、貨物輸送能力を増強しています。
こうした各種戦略の実行により、イランはザンゲズールの地政学的な脅威から守られるだけでなく、コーカサス、中央アジア、ユーラシアでの経済的な地位を強化することができると期待されています。このアプローチは、賢明な外交、インフラ開発、そして新興市場への長期的な視点に基づいたものです。