2月 14, 2017 16:15 Asia/Tokyo
  • 1日1冊、本の紹介(56)

イランの演劇は、長い歴史を有しています。

歴史的な史料からは、イランにおける演劇が宗教的なスローガンや伝説、儀式に由来するものであったことが分かっています。イランにヨーロッパの戯曲が伝来し、演劇の上演に新たなスタイルが提示されたことにより、立憲革命以降のイランの演劇関係者は、イランの演劇に大きな変化を引き起こしました。この変化や、新しい劇場の建設の必要性から、1911年に、国民劇場と称するイランで初めての劇場がオープンしました。この劇場を初め、テヘランで幾つかの劇場が建設されたことは、人々の間に演劇ブームを巻き起こし、新しい劇場の建設が計画されることとなりました。

『テヘランの劇場』という本は、若者を初めとする現代の読者に、当時の演劇やテヘランにおける演劇関係の施設、そして上演方式を知ってもらうことを目的としています。この本を執筆したダーリウーシュ・アサドザーデは、現在92歳で、イランの映画、演劇、テレビ業界の先駆者であり、これまで数十年間にわたって演劇の分野で、また俳優として活動しています。

この本は、テヘランで初めて演劇の基盤が形成され、演劇が完全に定着したことに関わる一連の出来事を物語っています。1921年には、テヘラン劇場が開場し、作者であるアサドザーデはこの劇場の着工から完成までの歴史について説明しています。

本書の作者はまた、テヘランの昔の様子について語るとともに、テヘランの旧市街や市外に通じる門を初めとする、テヘランの様子を詳細に物語っています。さらに、当時の人々の社会的な関係についてもある程度説明しています。この本の舞台背景は、1912年から1979年までで、写真や数々の史料と共に、テヘランの古い劇場の歴史について述べています。また、テヘランの古い演劇の演出家や役者、そして俳優を養成する講座に関する内容は、読者をその当時へとタイムスリップさせるものです。

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