南海トラフ地震による関連死は7万6000人の可能性も、東日本大震災の20倍か
今後30年間のうち70%程度の確率で起こるとされているM8~9の大地震・『南海トラフ巨大地震』が発生した場合の死者数を専門家が試算した結果、最悪の場合、7万6000人にのぼる可能性があることが新たにわかりました。
NHKによりますと、南海トラフ巨大地震は東海地震・東南海地震・南海地震が連動して起きると考えられており、ひとたび起きれば宮崎から静岡までの広範囲に津波が押し寄せるとされています。
地震のあとの避難生活による体調の悪化などが原因で亡くなる事例が、「震災関連死」です。
災害事例の分析が専門の関西大学の奥村与志弘教授は、過去の災害時に避難した人の数と、関連死の発生件数との関係から初めて、南海トラフ地震による関連死亡者数を試算しました。
その結果、最悪の場合、東日本大震災のおよそ20倍の7万6000人にのぼる可能性があることがわかりました。
大きな地震のあと、生活環境の悪化やストレスが原因で亡くなる「震災関連死」は、12年前の東日本大震災では去年3月末の時点で3789人となるなど過去の地震で相次いでいます。
一方、国は南海トラフ巨大地震が起きた際の最悪の場合の死者を32万3000人と想定していますが「震災関連死」は、この中に含まれていません。
奥村教授は多くの死者が出る試算について、広い範囲でインフラに被害が出て停電や断水が長期化する上に、避難所や自宅での避難生活が長引き、適切な医療や介護を受けられない状態になることが大きな要因として考えられるとしています。その上で「関連死の原因は多岐にわたっていて、一人一人を取り巻く環境を変えていかないかぎり減らせない。大きな犠牲が出る可能性を多くの人が認識し、社会全体で対策に取り組む必要がある」と話しています。
国の被害想定には具体的な人数はなく、専門家は「大きな犠牲が出る可能性を踏まえ、社会全体で対策に取り組む必要がある」と指摘しています。
駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀伊半島の南側の海域及び土佐湾を経て日向灘沖までのフィリピン海プレート及びユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域は「南海トラフ」と呼ばれています。