日本学術会議の会員任命見送り問題をめぐる官房長官の発言に、「説明責任」発生か
日本学術会議の会員候補6人の任命見送り問題をめぐり、菅総理大臣が「会議」側が推薦したリストは見ていないにもかかわらず、加藤官房長官が「決裁までに任命方針を菅首相に説明しており、法律に基づいて適切に行われた」とした発言が物議をかもし、重大な説明責任が生じる可能性が浮上しています。
NHKによりますと、日本学術会議の会員候補6人が任命されなかったことをめぐり、菅首相は先週、内閣記者会のインタビューで、決裁をした先月28日の直前に任命する99人のリストを見た一方、「会議」側が推薦した105人のリストは見ていなかったことを明らかにしました。
これについて加藤官房長官は、午前の記者会見で「決裁文書には推薦名簿が参考資料として添付されているが、参考資料までは詳しくは見ていなかったということだと思う。決裁までに菅総理大臣には任命について考え方の説明が行われている」と述べました。そのうえで、「推薦名簿を十分見ずに決裁したのは違法だとの指摘もあるが」とする記者団の質疑に対しては、「日本学術会議法では、『会議』からの推薦をもとに、その中から選ぶことになっており、適法に行われたと承知している。推薦を無視して行っているわけではない」と述べ、法律に基づいて適切に任命が行われたという認識を示しています。
平成15年2月には「日本学術会議は、新しい学術研究の動向に柔軟に対応し、また、科学の観点から今日の社会的課題の解決に向けて提言したり、社会とのコミュニケーション活動を行うことが期待されていることに応えるため『総合的、ふかん的な観点』から活動することが求められている」という方針が定まりました。
これに基づき平成17年、会員の選出方法が変更され、学会ではなく210人の現役会員とおよそ2000人の連携会員が「優れた研究または業績がある」科学者を、推薦する現在の制度に改められました。
この「総合的、ふかん的観点」という文言について、日本学術会議の元幹部の1人は「総合科学技術会議が平成15年の報告書でこの文言を使ったのは、学会による推薦制の問題点を克服するよう求める意味だったと理解している。会員の選出方法は報告書の提言を踏まえて現在の仕組みに改められていて、『総合的、ふかん的観点』を6人を任命しなかった根拠とするのは妥当性を欠いている」との見解を示しています。
また、立憲民主党の枝野代表は鳥取県米子市で記者団に対し「会員6人が任命されなかったのは法律違反であり、現状の違法行為を解消することが政府の責任だ。違法状態を放置したままでは何を言っても何の説得力もない」とし、政府に対して6人の任命を求める意向を示しました。
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