4月 18, 2024 14:44 Asia/Tokyo
  • なぜISISはイスラエルではなく抵抗の枢軸と戦うのか?
    なぜISISはイスラエルではなく抵抗の枢軸と戦うのか?

西アジアの不安定な経済状況や、ソ連によるアフガニスタン侵攻に対抗するため組織されたいわゆる「ムジャーヒディーン」の経験から生まれたひとつのテロ組織があります。それがISISです。ISISは、地域からの米軍撤退を目指すイランやイラク、シリア、レバノンといった「抵抗の枢軸」に攻撃をしかけることで、存在感を示しています。

シオニスト政権イスラエルがパレスチナに対する戦争犯罪を続け、レバノン、シリアへと戦線を拡大し、シリアのイラン大使館にまで攻撃を仕掛けたことを見れば、その行動がISISと酷似していることに気付きます。

イスラエルは西アジアの抵抗勢力を壊滅させることを狙っているのでしょうか? ISISがそれを目指したように。

もうひとつ浮かぶ疑問は、ISISは表面上はイスラム的なイデオロギーを掲げていますが、なぜイスラエルには1発の銃弾さえ撃ったことがないのでしょうか?

その正式名称を「イラク・シリアのイスラム国」と名乗るISISですが、一部アラブ諸国やシオニスト政権イスラエルをターゲットにしていないのは、なぜなのでしょうか?

ISISが公開した動画からわかるのは、このテロ組織が動画やメディア・コンテンツの制作においてプロの集団であるということです。人質を生きたまま焼き殺し、その様子を撮影した動画はさながらハリウッド映画のようです。

 

ハリウッド映画を彷彿とさせるISISの演出

 

こうした映像の作成には、映画会社やメディア企業しか持てないような強力な資金力・影響力が不可欠です。

また、アルカイダのようなテロ組織の補完勢力が混乱をもたらしていることは、抵抗勢力への攻撃と並行して外国軍が地域に駐留する口実を与えています。

オバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏は、2014年に出版した回想録『困難な選択』の中で、世界の一部地域で混乱をもたらすことを有意義なことであるという旨の記述をしています。ヒラリー氏は過去の演説の中でも、この「有意義な混乱」を作り出すことを目的にアメリカが計画したのがISISであると吐露し、後にトランプ氏から批判されました。

ISISには、それまでのテロ組織とは異なる点がいくつもあり、その活動においても新しい点が指摘されます。

 

ISISが起こしたイラク・ニナワでの爆発

 

ISISはアルカイダと同じように、地域におけるアメリカの覇権拡大の口実となりましたが、それと併行してイスラム教が残虐な宗教であるとのイメージを世界に植え付け、ムスリムに対する暴力の許容をもたらしました。

さらにISISは、イラクとシリアという西アジアの2大抵抗勢力をターゲットにし、その後レバノンやイランに対しても攻撃範囲を広げました。

シリアは西アジアにおける抵抗勢力の中枢でしたが、ISISの攻撃により国内能力を対テロ対策に向けることになり、このことが西側と結びついたシオニスト政権イスラエルに安全をもたらすことになりました。

ISISの誕生は、2000年に一部の大国が提唱した「新中東構想」の集大成と言えます。この構想では、複数の国の分割が目指され、それはアメリカの利益に適うものでした。

 

ISISは、イラクやシリアにあるモスクや宗教施設などを破壊した

 

ISISについて不可解なのは、その名称に「イスラム」を掲げながらイスラム教徒を多数殺害し、シオニストらとは全く敵対しないことです。

それは、ISISのようなテロ組織が結成されるにあたって、アメリカを中心とした勢力には害を与えないという原則があったからです。それゆえ、ISISはイラクやシリア、レバノンなどでは破壊の限りを尽くしたのに対し、イスラエルやそれと関係を結んでいる一部アラブ諸国には一発の銃弾も放っていないのです。

ISISの結成およびその活用にあたっては、すべてが計算され尽くされていました。ただひとつ、それを無にし得る対抗勢力の存在を除いて。

ISISへの対抗は、イランの抵抗指向・地域指向の中から生まれました。イラクやシリアの抵抗勢力や国軍、それに加えてレバノンの抵抗勢力がイランの助言や革命防衛隊ゴッツ部隊の故ソレイマーニー司令官などの指揮により、ISISの壊滅に成功しました。

もっとも、ISISが未来永劫にわたって無に帰すためには、その思想背景やイデオロギーから一掃される必要があります。そうしたイデオロギーは、名前だけはイスラムを掲げ、実際にはアメリカと歩調を合わせる国によってもたらされているのです。

 

イラン・イスラム革命防衛隊の故ソレイマーニー司令官は、自らイラクやシリアの抵抗勢力のもとに赴いて戦闘を指揮した

 


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