視点;ディーンヤーリヤーン解説員
イラク駐留続行を狙うアメリカの工作
イラク政府が同国領内からの米軍撤退を要求しているにもかかわらず、アメリカ政府は「我が国にはイラク撤退計画は全くない」と表明しました。
パット・ライダー米国防総省報道官は「米軍はイラクでのテロ組織ISIS粉砕という任務に集中している」と主張するとともに、「我々はイラク国民に安全保障問題についてアドバイスし、彼らを支援している」とも強調しました。
しかしこうした中、イラクのスーダーニー首相は、同国首都バグダッドで開かれたイラン・イスラム革命防衛隊元司令官ソレイマーニー氏らの殉教4周忌の場で、「我々の原則的な立場は、国際有志連合軍の我が国への駐留の終結で一貫している。それは、駐留の正当な理由が存在しないためである」と語りました。
スーダーニー首相はその上で、「我々は我が国の国家主権を侵害するあらゆる行為に反対するとともに、外国軍の駐留終結という我々の立場を強調する。同時に、我々には国家主権の維持能力があると信じている」と表明しました。
米軍がイラクに駐留してから20年以上が経過しましたが、米当局者は今なお、自分たちがイラクにおけるテロとの戦いを支援し、治安を確立していると主張しています。
しかし、アメリカのこうした主張とは裏腹に、アメリカの対イラク戦争こそが同国でのテロ拡大の温床になったのが現実です。イラクはこの戦争の後も長期にわたる情勢不安に陥り、タクフィール派過激主義因子の拡散にとって格好の場所と化しているのです。
実際、アメリカはその主張とは逆に、テロ組織ISIS創設に自らが関与していた事実を隠せなくなっています。ISISは、イラク旧バース党政権の残党勢力および、世界各地からイラクに集まったサラフィー派とタクフィール派の参加により初めて結成された組織であり、急速にその活動範囲をイラクからシリアまで拡大しました。
近年、アメリカはイラクや西アジア地域での対テロ戦争への一歩を踏み出しただけでなく、多くのテロ作戦の主導もしてきました。そうした行動のひとつは、バグダッド空港での無人機攻撃後によるソレイマーニー元司令官の暗殺でした。
いずれにしても、アメリカのイラク駐留はイラクに戦争、テロの増大、経済的困難以外に何の利益ももたらしていません。そして現在、イラク当局が自国からの米軍撤退を正式に要求している一方で、アメリカ側は自らがイラクに招聘されていると考えており、イラク撤退の意向はないと表明しています。
その一方で、多くのアメリカ当局者は米軍のイラク駐留が誤りであることを認識しており、その失敗を認めてイラク駐留の終了を望んでいます。
にもかかわらず、米国はイラク撤退に応じようとしないだけでなく、イラク政府への経済的圧力の強化など、さまざまな手段を通じてイラクの平和と安定を阻もとしているように見受けられます。