視点
世界人権デー・西側の矛盾した行動に対する分析
毎年12月10日は、国連により「世界人権デー」に制定されています。
1948年に国連総会で採択された世界人権宣言は、国連の重要な宣言の 1 つであり、その普遍的条文においては、人種、肌の色、宗教、性別、言語、政治上またはその他の様々な信念、国籍および社会的ルーツ、経済的状況、または人間を分類するすべての要素に関係なく、あらゆる個人が不可侵の権利を持っていることが強調されています。
この宣言には30の条項にわたり、全人類が持つ権利に関しての国連の見解が説明されています。その内容は、あらゆる国のすべての人々が享受すべき基本的な公民権および、文化、経済、政治、社会的権利を明確にするものです。国際人権章典は、世界人権宣言および、社会権規約・自由権規約の2つの国際人権規約と、市民的、政治的権利に関する国際規約への第一・第二選択議定書を合わせた総称であり、社会権規約と自由権規約は、1966年の国連総会で採択され、その後の1976年に、規定数を超えた数の国が批准したことを受けて発効しました。
人権という概念は、世界レベルおよび国際社会で受け入れられているものですが、アメリカを筆頭とする西側諸国のアプローチ、姿勢、行動に目を向けると、彼らがこの根本的概念について独自の限定的な定義を持っており、独自の尺度や基準を使って特に西側諸国の覇権に反対する国々の人権状況を測り、他国の人権状況に対する立場を示していることが見て取れます。
人権問題は、世界の様々な国や地域、さらには世界の諸宗教においても、様々な違う側面を持つものであり、西側が独自の人権定義に基づきこれに関して他国を裁断することは、誤った行動だと言えます。
米国議会の民主党代表でソマリア出身のイスラム教徒女性議員であるイルハン・オマル氏も、これに関連して「世界中の人権侵害に関する米の主張は、非常に『偽善的』なものだ」と述べています。
西側諸国、中でもアメリカは、自らが人権状況の調査を免除されるものと考えています。このため、国連の人権委員会などの関連機関によるアメリカの人権状況に関しての報告、声明、決議には、全く注意を払っていません。
しかしながら、米国内の人権状況、特に非白人に対する差別的対応や警察による彼らへの過度の暴力の継続、そして、同国が国外で行っている軍事作戦、ベトナム、アフガニスタン、イラク、シリアなどの多くの国への侵攻や現地での刑務所の設置、非人道的な対応・待遇、被告人の拷問といった戦争犯罪は、アメリカによる人権擁護の主張が偽りであることを示しています。
ロシアの著名な国際政治学者であるアンドラニク・ミグラニアン氏も、「アメリカは、世界の大半の国よりも人権を侵害している」と述べています。
一方、人権を主張するヨーロッパ諸国などの他の西側諸国にも、この分野に関して好ましくない状況が存在しています。フランスやドイツといったこれらの国には、非白人、移民、難民に対する差別と暴力、移民や亡命希望者が大半を占めるイスラム教徒に対しての差別と暴力の蔓延、労働者が置かれる過酷で不適切な環境、雇用や教育をはじめとする様々な分野でのジェンダーあるいは人種差別があり、これらの国々の市民、特に子供や女性にとって、状況は決して好ましいものではありません。
ユニセフ・フランス支部も報告の中で、同国の子どもたちの権利について警告し、貧困、教育機会の剥奪、メンタルヘルス、暴力といった問題に直面している子どもの状況に関して「憂慮すべき」としています。同報告によれば、フランスの子供の5人に 1人以上が貧困ライン以下で生活しており、さらに4万2,000人の子供は、身を寄せる場所のないホームレスの状態にあります。
自由と人権を主張するフランスでは、女性に対する暴力の状況もまた、憂うべき惨状にあります。フランス内務省の統計によれば、2021年に自らの配偶者の手で殺された女性の数は 20%増加して122人に達しています。
これらすべての事例およびその他の無数の事例は、西側がその掲げている表面上のスローガンにもかかわらず、実際には基本的権利や自由といった人権を実践していないことを、まざまざと物語っているのです。