視点
差別と人種主義、欧州の深刻な危機
欧州では、人種主義・差別主義的政策の継続・激化が、深刻な政治的・社会的危機に変質しています。ここ数カ月で多くの市民が抗議集会を開き、こうした政策を終わらせるよう求めています。
ドイツのショルツ首相は、「残念ながら人種差別はドイツに現実に存在する。我々はこれを克服する必要がある」と語りました。
フランス、イギリス、ドイツなどの欧州各国では、人種差別がまん延しており、ここ数カ月で社会的な不満につながっています。こうした問題は、経済的問題や政治的不満とあわせて、フランスなどの一部の国では深刻な危機に発展しています。
多くの欧州諸国の法律では、いかなる者も肌の色、人種、信仰、年齢、障害の有無などで人から社会的・経済的・政治的権利を奪う権利がないと定められています。しかし、西側諸国の現実が示すのは、こうした法律は紙に書かれた文面にすぎないということです。フランスなどの欧州諸国は、実際には法律とは異なる対応をしています。人種差別に反対する市民団体は、アフリカ系やアラブ系のフランス市民が最も人種差別の被害を受けていると告発しています。先日、17歳のアルジェリア系市民が警察に射殺された事件は、再度フランスにおいて反人種差別の大規模な抗議をもたらしました。
現在、多くのフランス市民が抗議のため街頭に繰り出し、いくつかの都市では警官隊が抗議者らと衝突する事態になっています。今回の抗議活動はフランスを麻痺させ、他の欧州諸国も対応を迫られています。ドイツのフェーザー内相は、同国で多くのイスラム教徒が差別に苦しんでいることを認め、こうした問題が「社会における嫌悪を拡大させる」と述べました。
各種報告では、欧州諸国では黒人移民が警察により厳しくコントロールされ、その多くが罪が立証されていないにもかかわらず、警察から暴力を受けています。また、職位も低く抑えられ、業務にふさわしい賃金も得ていません。
その一方で、イスラム嫌悪症の広がりも、欧州に住むイスラム教徒にとって差別だけでなく身の危険を感じる要因となっています。このことは、ブラジル出身の黒人サッカープレーヤーでレアル・マドリード所属のスターである、ヴィニシウス・ジュニオール選手ですら例外ではありません。
イスラム人権委員会の調査によると、英国在住のイスラム教徒の80%がイスラム排斥の被害に遭っていることがわかっています。英労働力センターの統計でも、働いているイスラム教徒10人あたり7人が、何らかのイスラム嫌悪による経験をしていることが明らかになっています。
今や、不平等、差別、数々の社会的無力感が、欧州における広範な抗議活動の要因となっており、時には大規模な抗議の様相を呈するまでになっています。これは、欧州の政治家らが人々のたまった要求に目を向けてこなかったことに起因するのです。