米誌が根拠のない報道「イランはアフリカへの影響力拡大を企図」
米ニューズウィーク誌は、アフリカのサヘル諸国で続いている政変の原因がイランにあるという根拠のない報道を行いました。
同誌はイスラエルと関係が深い記者が書いた記事の中で、「米国やイスラエルが、イランに起因する脅威が広がるレバノンからイエメンに至る地域に注力する中、イランは静かに他の地域で影響力拡大を狙っており、近いうちに米国の利益にとって脅威となる」としました。
その上で、「戦略的地域であるサヘル諸国で、イランは西側諸国の経済・軍事力の弱点を突いている」としました。
そして、米・イスラエルに対し「手遅れになる前に、この地域における権力掌握に対抗するため大胆な一歩を踏み出すべきだ」と勧告しました。
サヘル諸国では強力な政府が存在してこなかったため、欧米の植民地主義勢力による介入を招いてきました。このことは2020年以降の政変で露わになりました。
マリ、ブルキナファソ、ギニア、ニジェール、ガボン、チャド、スーダンではクーデターや政変が起き、それらは植民地支配の負の遺産によるものです。
こうした負の遺産がもたらしたもののひとつが、イスラムの名を騙るテロ組織の誕生です。
イスラエルはこれらのテロ組織が誕生する前から、スーダンにおいて介入工作を行い、南北分裂をもたらしました。興味深いのは、今回のニューズウィーク誌の記事が、米政権と近い他のメディアと同様に、イランがアフリカ諸国の危機の要因であるとしている点です。
スーダンはブルハン主権評議会議長が国家元首を務め、2020年にはアメリカの支持のもと、アブラハム合意を結んでイスラエルとの関係正常化を行いました。しかし、翌年にブルハン氏が主権評議会を解散すると、アメリカはイスラエルに対し、スーダンとの関係を進展させないよう圧力をかけました。そして2023年からスーダンは内戦に陥ります。
ニューズウィーク誌は今回の記事で、ブルハン氏が西側諸国に不信を抱いていることから、イランに支援を求めざるを得なくなっていると記しています。
また、イランがウラン濃縮のためにその産出地であるニジェールでの影響力を強化しようとしていると主張しています。そして、ニジェール以外にもマリ、ブルキナファソなど他のサヘル諸国との関係強化も目指しており、西側の覇権拡大にとって好ましくないとしています。
記事は他にも、イランがチャドやモーリタニアに経済的自立支援を行っているとして、脅威を煽っています。
興味深いのは、記事がイスラエルだけでなくサウジアラビアとエジプトの名前も挙げて、イランがこれら3カ国にとっての脅威であると主張している点です。
イランは、故ライースィー大統領のもとでサウジやエジプトとの関係強化に努めてきました。
ニューズウィーク誌の記事は、米国防総省の方針に同調しながら、米国やイスラエルなどの同盟国に対し、人権や民主主義といった問題を持ち出して、サヘル諸国がイラン、中国、ロシアのような非西側諸国との関係を強化するのを阻止するよう求めています。
今回の記事を執筆したのは、ローネン・レヴィ元イスラエル外相と国家安全保障機構(MISGAV)のアッシャー・フリードマン所長です。