西側の人工知能、各国の教育制度を植民地的に支配する可能性
(last modified Mon, 05 Aug 2024 10:51:56 GMT )
8月 05, 2024 19:51 Asia/Tokyo
  • 人工知能はどのようにして各国の教育制度を植民地的支配下に置き、新たな覇権を見出すのか?
    人工知能はどのようにして各国の教育制度を植民地的支配下に置き、新たな覇権を見出すのか?

複数の研究調査から、西側諸国が開発した人工知能技術が世界中の教育制度に普及すると、意図せずしてある種の文化・知的帝国主義が促進される可能性があることが分かりました。

人工知能技術はデジタル化の現代において急速に発展し、世界のさまざまな地域に浸透しています。これらの技術は、高等教育を含むさまざまな領域に大きな影響を与えています。しかし、こうしたテクノロジーは多くの革新的な機会をもたらした一方で、一種の「デジタル新植民地主義」につながる可能性という大きな課題も生み出しました。パールストゥデイの当記事では、この問題の一部側面にスポットを当てていきます。

 

各種の脅威

教育における人工知能の最も重要な中軸的効果の 1 つは、西側諸国で開発された技術への依存です。こうした依存により、発展途上国の教育機関は自ら発明・工夫せずに、これらの技術の継続的な消費者になり下がり、一種の消費主義のサイクルが生まれることとなりました。その結果、技術面での自主性が制限され、これらの教育機関は特定の教育課題に対する適切な解決策を開発できなくなっています。このシナリオは、多様な技術展望の広がりを阻み、異なる地域間に技術的不平等を生み出す可能性があります。

一方で、教育で使用される AI をベースとする機器は、主に西洋・英語圏の環境を反映したデータの使用により設計されることが多くなっています。こうした偏った視点をベースに置くことにより、単調で文化的に限定された教育内容が創出される可能性が出てきます。こうしたシステムを普遍的に使用すれば、非西欧諸国の学生の文化・歴史的・社会的背景に適切に適応できない「画一的な」アプローチが生み出される危険性があります。このような教育内容の均質化により、教育経験から西欧圏外の地域の多様性や独自の豊かさ、そうした地域との交流が奪われ、学生が自らの地元の知識から切り離されてしまう可能性も出てきます。

人工知能によるデジタル新植民地主義のもう一つの側面は、文化・知的帝国主義です。西側諸国が開発した AI技術が世界中の教育制度に普及すると、期せずしてある種の文化・知的帝国主義が促進される可能性があります。西洋の方法論や知識の枠組みが優先されることで、これらの技術は他地域の認識論や教育の伝統を脇に追いやる可能性があります。この状況は、知的多様性を喪失させ文化的アイデンティティを侵食するという事態を招くかもしれないのです。

さらにもう1つの大きな課題として、世界におけるAI の恩恵の分配が不均等であることも指摘されます。AI は確かに、個別化と効率化を通じた教育変革の可能性を秘めてはいます。しかし多くの場合、最新の AI イノベーションの導入や統合、教育成果の向上に必要な財務能力やインフラ構造、専門知識を備えているのは、世界でも裕福な地域の教育機関なのです。 

これに対し、貧困地域の教育機関は、高コスト、不十分なインフラ、AI 秘術の導入実施・維持のための熟練労働者の不足、といった大きな障壁に直面する可能性があります。こうした不平等は、既存の不平等を益々増大させるのみならず、先進国と発展途上国の間の教育格差の拡大や、教育と経済の貧困の連鎖の永続を招く可能性があります。

 

これからすべきことは?

各大学や研究機関はこれらの課題に対処すべく、包括的で多様なアプローチを取る必要があります。中でも、各地域の独自の人工知能技術の開発は非常に重要です。地域での研究プロジェクト投資や人工知能研究センターの創設は、地域のニーズや状況にうまく対応するツールやシステムの開発に寄与します。また、データ集合体を多様化し、異なる文化・言語・社会的背景から得られた多様で代表的なデータ集合体に基づき人工知能システムが訓練されていることが確認されることで、偏見の緩和および、様々な分野でのこれらの技術の導入と効率の向上が促されます。

さらに必要とされるのは、人間による監督および、倫理基準の強化です。人工知能技術の開発・発展において人間による監視を維持し、大学で倫理的枠組みを構築することで、これらのテクノロジーの責任ある正しい使用の保証が推進されます。そして、知識と専門知識のより公平な共有、さらにはAI 開発が多様な視点とイノベーションから恩恵を受けるように、国際協力と知識交換も奨励される必要があります。

加えて、人材育成への投資も重要な解決策といえます。それぞれの地域・地元の研究者、教師、学生に人工知能の開発に必要なスキルを身につけさせるための包括的な教育プログラムを開発することにより、格差が縮小し、さらに、多様な地球規模のコミュニティの利益のためのこれらの技術の開発・利用が保証されるようになります。

最終的に、大学と教育機関は人工知能技術の利用による教育の改善、そしてデジタル新植民地主義の危険への対抗という二重の課題に対処する必要があります。責任ある包括的アプローチを採用してこそ、多様な国際的コミュニティにとって公平かつ有益な方法で AI技術が開発・使用されるようになり、より公平で包括的なグローバル教育環境の構築に貢献できるのです。

 


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