米紙が認めたイランによるイスラエル攻撃の成果
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米紙が認めたイランによるイスラエル攻撃の成果
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、イランは先月のイスラエルへのミサイル攻撃において様々な戦術を駆使し、イスラエルの防空システムに存在する隙を突いて突破に成功したと報じました。
【ParsToday国際】先月の12日間にわたるイランとイスラエルとの戦争は、イスラエルが世界に最も先進的と誇るミサイル防衛システムであっても、複雑かつ標的を絞った攻撃に対しては脆弱であることを改めて示しました。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、イスラエルおよびアメリカの信頼できる機関のデータ分析をもとに取材し、イランがこの攻撃で様々な戦術を試行錯誤することでイスラエルの防空網の弱点をあぶり出し、それを有効に活用したと記しました。
それによると、イスラエルの防空システムは、アイアンドーム、アロー3、およびダビデスリングなど、アメリカとの緊密な協力により開発された世界でも最も高度かつ複雑なミサイル防衛システムとされています。
しかし、WSJ紙は米ランド研究所やその他の軍事アナリストの意見として、「どんなに先進的な防衛システムであっても完全無欠ということはなく、『あらゆるシステムには必ず隙がある』」としています。
同紙は、イランが最も大きな成果を上げたのは6月22日(停戦の2日前)であり、この日には27発のミサイルのうち10発がイスラエルの目標に命中したとのことです。イスラエル側はこの統計に関して、それ以上の詳細な説明を避けています。
また、多くの専門家は、イスラエル政府が被害に関する統計を過小に公表していると指摘しており、登録された損害や復旧要請の規模から見て、実際にイランのミサイルが命中した数は公式発表よりもはるかに多いとされています。
イスラエルの防空体制:高度でも突破可能なシステム
ランド研究所の上級アナリストであるラファエル・コーエン氏は、「たとえイスラエルのような先進的なミサイルシステムであっても、最終的には隙がある。重要なのは、防空システムが1層で完璧を目指すのではなく、複数層の相乗効果で防御を構築することだ」と述べています。
WSJ紙はさらに、戦争中のイスラエル政府の公式見解を分析した結果、ミサイル迎撃の成功率が低下したことが明らかになったと報じています。イスラエル軍は当初、イランのミサイルの90〜95%を迎撃したと発表していましたが、6月24日の停戦後には、迎撃率は最終的に86%に下がったとされています。
イランの新たな航空戦術
同紙はまた、イランが戦争期間中に戦術を大きく変化させたと報じました。ミサイル発射地点の多様化と分散化、より長距離かつ高度な「ファタフ1」などのミサイルの使用、そして夜間の一斉攻撃から昼間における小規模な波状攻撃への移行により、イスラエルの防空システムに対する突破率を倍増させました。
JINSA(ユダヤ国家安全保障研究所)のデータによると、戦争前半ではイランのミサイルのうち8%がイスラエルの迎撃を突破していましたが、後半にはその割合が16%にまで上昇したと報告されています。
地域の安全保障への脅威と世界への教訓
記事はさらに、イスラエルの防空システムをある程度突破できたイランの成功は、将来の戦争、とりわけ複雑な防空システムを持つ地域において、戦闘がより困難になる可能性を示唆しているとしています。安全保障の専門家たちは、今回の戦争は両国にとって「学習曲線」であり、イランは攻撃戦術の改善を、イスラエルは防衛システムの強化を試みていたと分析しています。
「ゴールデンドーム」構想を推進する米国
同様の脅威に対応するため、米国も「ゴールデンドーム」と呼ばれる巨大なミサイル防衛プロジェクトに1750億ドルの予算を投じて開発を進めています。ただし、アメリカの地理的広さはイスラエルよりもはるかに大きく、その分、防空体制の構築は一層困難であるとされています。
今後の反応と展望
イスラエル軍は迎撃率の詳細公表について慎重な姿勢を示しており、これ以上の情報公開はないとしています。一方で、イランおよびイスラエルはそれぞれ、自国の航空戦力を再評価・再設計しており、今後予想される戦闘に向けて、より高い準備態勢を整えようとしています。