ザンゲズール回廊:平和への架け橋か、陰謀への道か?
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アリエフ・アゼルバイジャン大統領(左)、トランプ米大統領(中央)、パシニャン・アルメニア首相(右)
ここ数週間、米ホワイトハウスにてザンゲズール回廊(アルメニアの領土内を通り、アゼルバイジャン共和国の主たる領土とその飛び地・ナヒチェヴァンの中間点にある回廊)に関連したアゼルバイジャン共和国とアルメニア間の合意に関するニュースが発表されています。
米ホワイトハウスは西アジアの地政学的混乱の真っ只中にあった今月初旬、和平という外装を衒うも内面は陰謀に満ちた協定の調印式を主催しました。
【ParsToday国際】イルナー通信によりますと、「トランプ・ルート」という偽名でも知られる「ザンズール回廊」は、単なる通過路ではなく、南コーカサスの勢力図を書き換えるための手段となりうるものです。
アルメニア・シュニク州に広がる全長約43キロメートルのこの回廊は、アゼルバイジャン共和国とその飛地・ナヒチェヴァンを結ぶもので、中央アジアからヨーロッパに至る「中間回廊」の一部です。しかし、複数の報道によれば、99年にわたり管理されてきたこのルートがアメリカとアルメニアの合弁企業に移管されたことは、この地域にとって警鐘となるとされています。輸送という目的にとどまらず、このプロジェクトはNATO北大西洋条約機構とシオニストによるイラン包囲網の構築、ロシアの弱体化、そして中国の封じ込めを狙う戦略の一環をなしています。
ナゴルノ・カラバフからザンゲズールへ:危機の根源
1990年代のソ連崩壊がナゴルノ・カラバフ(アゼルバイジャン領内にありながらアルメニア人が多数派を占める地域)紛争の火種となりました。アルメニアがこの地域を掌握し、イラン、ロシア、OSCEミンスク・グループ(ナゴルノ・カラバフ戦争の平和的解決に向けた活動。フランス、ロシア、米国が共同議長を務める)が仲介を試みたものの、成果は上がらず、長年にわたる外交的膠着状態がコーカサスに暗い影を落としt。2020年の紛争はトルコの全面的な支援を得て、ナゴルノ・カラバフをアゼルバイジャンに返還させる形となりました。同年11月の停戦合意では「アクセスルートの封鎖解除」が明記され、これがザンゲズール回廊の口実となっています。イランはアゼルバイジャンがナヒチェヴァンへアクセスするための北西部アラス検問所を寛大に提供していたものの、西側諸国の圧力により、この回廊はイランとロシアに打撃を与えるするための手段と化しました。
ユーラシア封じ込め:イラン、ロシア、中国の三国封じ込め
トランプ政権の進路は、この回廊におけるアルメニアの主権が弱体化した場合、カスピ海と中央アジアのエネルギー資源に対する米国の影響力拡大の道を開き、またこの計画は、イラン、ロシア、中国という三国封じ込めの軸となります。ウクライナ戦争のさなか、コーカサスからのロシア軍追放、そしてアルメニアとアゼルバイジャンがNATO北大西洋条約機構加盟するのではという憶測は、ロシアの勢力を脇に追いやる形となっています。また中国は、中央アジアのエネルギーと鉱物資源へのアクセスが制限されており、一帯一路構想も危機に瀕しています。さらにイランにとって、この回廊はアルメニアとの陸路を遮断し、イラン北西部からトルコへのトランジット輸送ルートが制限されることを意味します。このため、イランはアルメニアとの関係を断絶すべきではないと繰り返し警告しています。イラン当局は「コーカサスはイランの歴史的アイデンティティの一部であり、この地域を外国の影響力行使の舞台にすべきではない」との見解を示しています。