米露首脳会談の成果は?
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世界中が注目する中、トランプ米大統領とプーチン露大統領の首脳会談が15日、米アラスカで開催されました。
(last modified 2025-08-18T10:09:36+00:00 )
8月 17, 2025 16:34 Asia/Tokyo
  • 米露首脳会談の成果は?
    米露首脳会談の成果は?

世界中が注目する中、トランプ米大統領とプーチン露大統領の首脳会談が15日、米アラスカで開催されました。

【ParsToday国際】トランプ氏は会談後の記者会見で「一定の進展があった。多くの点で合意した」としつつ「依然としていくつかの相違点が残っている」と述べ、ロシアからの停戦合意取り付けには至らなかったことを認めました。

一方のプーチン氏も会談内容を「建設的」と評価し、ロシアはウクライナ戦争を終わらせたいと考えており、ウクライナの安全保障における協力に意欲的であるとしました。その上で、「ウクライナや欧州各国がこれを建設的に理解し、進展を妨げるような裏での挑発や陰謀を働かせないことを期待している」と述べました。

この会談後、プーチン氏は次回の会談をモスクワで行うようトランプ氏を招待しましたが、トランプ氏は2回目の首脳会談については「将来の状況次第」と明言を避けました。

トランプ氏はかねてからウクライナ戦争を終わらせると繰り返し豪語してきましたが、今回の会談でも成果と言える成果は得られませんでした。トランプ氏はこの会談前に「期待通りに進まなければ、会談を中断する」と明言していましたが、会談は3時間に及び、トランプ氏はどうやら満足している様子でした。

一方、プーチン氏にとってもこの会談は満足のいくものでした。まず、国際刑事裁判所による逮捕状が出ているにもかかわらず、米国領土を訪問したことは米政府がプーチン氏の身分を保証したという証明でした。

また、トランプ氏はロシアへの一部制裁を延期し、またいくつかの制裁を解除する予定であり、これもロシアにとって手柄となりました。しかし、何より重要なのは、トランプ氏がウクライナ戦争の停戦を実現し、ウクライナとロシアの間で平和を達成するために、特にドンバス地域(ルガンスクおよびドネツク)をロシアに譲ることで合意しようとしている証拠が示されています。これは、4年間の戦争を耐えたウクライナにとっては重い打撃となるでしょう。

この会談について、メディアや一部の西側政治家は、「トランプ氏がプーチン氏に媚を売った」といった批判的な見方をしています。例えば、アメリカの元国家安全保障担当補佐官ジョン・ボルトン氏は、今回の首脳会談について「プーチン氏が明らかな勝者だ」と強調しました。また、西側のメディア、例えば英スカイニュースはこの会談をトランプ氏にとって侮辱的だと評価しました。米ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏が和平の進展について不確かながらも肯定的な評価を示したと報じました。エル・パイス紙はこの会談を成功と評価しましたが、双方がウクライナ戦争の停止には触れなかったと伝えています。

実際、トランプ氏はこの会談に先立って、会談の結果がロシアに有利になる可能性があるという一部の分析家の見解に反応し、メディアやボルトン氏を批判して、妨害を試みていると非難していました。

この会談に対するウクライナや欧州諸国の反応はどうでしょうか? 予想通り、ウクライナのゼレンスキー大統領はこの会談とその結果に強く反対しました。ゼレンスキー氏によれば、プーチン氏はこの会談において3つの具体的な目的を持ち、すべて達成したと言います。ゼレンスキー氏は「プーチン氏はトランプ氏との会談の写真を一枚撮ることができれば、それだけで政治的に利益を得る」と述べました。さらに、プーチン氏が国際刑事裁判所でウクライナに対する戦争犯罪の疑いで起訴されていることを指摘し、「ロシア大統領がこの会談に出席したこと自体が、彼にとって個人的な勝利だ」と語りました。

ゼレンスキー氏はまた、プーチン氏が孤立から抜け出し、国際的な正当性を獲得することを目指していたと述べ、トランプ氏がロシアとその原油輸入国に対する厳しい制裁を発表すると脅しをかけたことについても言及しました。ゼレンスキー氏は「プーチン氏はこの会議で制裁の発動を延期させることができた。これは看過できない問題で、我々は制裁の発動を強く望んでいる」と述べました。

欧州各国の首脳らは、アラスカでの米露首脳会談前に、ゼレンスキー氏・トランプ氏を交えたビデオ会議を行い、その中でヨーロッパとウクライナの利益が保証されるよう求めました。ドイツのメルツ首相は会議後に「欧州のリーダーたちは、トランプ氏に対して、プーチン氏との首脳会談でヨーロッパとウクライナの安全保障を保証するよう求めた」と述べました。

欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、トランプ氏とのビデオ会議を評価し、「この会議では、ヨーロッパ、アメリカ、NATOがウクライナに関する共通の立場を強化した。私たちは緊密に協力し続ける」とXに投稿しました。フランスのマクロン大統領もビデオ会議後、「領土の合意に関しては、ゼレンスキー氏だけがロシアと平和的な解決を交渉できる」と記者団に話しました。

今回の米露首脳会談がウクライナ戦争に与える可能性のある影響は以下の通りです。

アメリカからの休戦圧力の増加:トランプ氏は会談で即時停戦を求め、ゼレンスキー氏との三者会談の提案をしました。この立場は、ロシアとウクライナに対して交渉に入るよう国際的な圧力を強める可能性があります。

アメリカの立場の変化:アメリカの対ウクライナ政策が、広範な軍事支援から交渉と合意への集中に変わる可能性があります。この変化は戦場での力の均衡に影響を与えるかもしれません。

領土問題に関する交渉:会談ではロシアがウクライナの一部地域を支配する問題が議論されましたが、合意には至りませんでした。こうした交渉が進むことで、ウクライナの領土をロシアに譲るような合意が形成される可能性がありますが、これは欧州とウクライナの強い反発を招くでしょう。

米欧の緊張の高まり:ドイツやフランスなどの欧州諸国は、領土変更につながるような合意には反対しています。もしアメリカがロシアとの合意に向かって進むなら、対ロシアの西側連携に亀裂が生じるかもしれません。

総じて言えば、アラスカでの米露首脳会談は、最終的な合意には至らなかったものの、米露関係の「再スタート」を示唆するものでした。プーチン氏のボディランゲージは対話への意欲を示しており、トランプ氏の行動はコントロールを維持し、力を見せつけようとするものと解釈されました。国際的な状況を踏まえ、この会談は今後のより真剣な交渉への序章となるかもしれません。この会談がウクライナ戦争に直接的な影響を与えたわけではありませんが、重要な政治的シグナルとして、今後の道筋を変える可能性があります。交渉が続き、トランプ氏が仲介役を果たす場合、外交的合意による戦争終結の可能性は高まり、すべての当事者にとってのコストを伴うことになるでしょう。

 


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