イスラエル首相がシナイ半島めぐり米大統領に要請;イスラエル・エジプト紛争は勃発しうるか?
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シナイ半島に駐留するエジプト軍
シオニスト政権イスラエルが、パレスチナ・ガザ地区住民の強制移住への反対というエジプトの政策を批判する一方で、米国に対し、エジプトに同国シナイ半島での軍事駐留の縮小を迫るよう要請しました。
【ParsToday国際】イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はトランプ米政権に対し、シナイ半島における軍事駐留の縮小をエジプトに迫る要請しました。この要請は、1979年の和平協定に基づき軽火器保有部隊のみが駐留することになっている地域でのエジプト軍の駐留拡大を、イスラエルが強く懸念していることを口実になされたものです。
2人のイスラエル当局者はさらに、エジプトがシナイ半島に軍事インフラを建設していると主張しています。具体的には、戦闘機用の空港滑走路の拡張や、ミサイル保管施設とみられる地下施設の建設などが挙げられますが、これらの施設にミサイルが保管されているという証拠はありません。件のイスラエル当局者の主張によれば、エジプトはこれらの活動について、未だ納得のいく説明を行っていないということです。
西アジアと北アフリカにおける一連の出来事は、1979年の和平協定にもかかわらず、エジプトとイスラエルの関係が脆弱な状態にあり、両者間の信頼が低下していることを物語っています。特に、パレスチナ・ガザ戦争がエジプト・イスラエル間の緊張を高める主軸となって以来、その傾向が顕著になっています。
2022年後半にイスラエル占領地でネタニヤフ内閣が発足して以来、エジプト・イスラエル間の緊張が高まっています。ネタニヤフ首相とエジプトのシシ大統領は、3年近く公の場で会談しておらず、2023年6月以降、両者間の電話通話も記録されていません。
エジプトの最大の懸念は、ネタニヤフ政権がガザ紛争中にガザ在住のパレスチナ人200万人の一部または全員をシナイ半島に移住させようとしていることです。こうした懸念を受け、エジプトはガザ地区国境の軍を増強し、「イスラエルによるそのような行動はエジプトの国家安全保障に対する脅威とみなされる」と表明しています。また、シシ・エジプト政権はイスラエルに対し、和平合意を損なう可能性のある行動を取らないよう警告しています。
しかも、ネタニヤフ首相は非常に不可解な行動に出て、ガザ在住パレスチナ人を受け入れていないとしてエジプトを公然と批判し、「ガザ住民を彼らの意志に反して戦場に閉じ込めている」としてエジプトを非難しました。しかし、ネタニヤフ氏のこうした発言とは逆に、エジプトのマドブーリー首相は「わが国の政府はパレスチナ情勢がもたらすあらゆる結果に対処する明確な計画を有しており、いかなるシナリオにも対応する用意がある」とした上で「エジプトはいかなる状況下でもパレスチナ人の追放やパレスチナ問題の消滅を許さない」と強調しました。
これらの舌戦が繰り広げられた中、9月初旬にイスラエルがカタール首都ドーハにあるパレスチナ・イスラム抵抗運動ハマス幹部の滞在場所を空爆した後には、シシ・エジプト大統領がイスラエルに直接メッセージを送り、「ネタニヤフ政権の政策によりエジプトとの和平協定が危うくなり、地域諸国とのさらなる関係正常化ができなくなっている」と警告しています。
エジプトの有識者やアナリストらは、ネタニヤフ首相のますます強権的な政策の下では、エジプト・イスラエルの軍事衝突が激化する可能性が高いものの、まだその時が来ていないだけであると見ています。この見方は、ガザ紛争の終結とシオニスト捕虜解放に向けエジプトや米国と共に仲介役を務めていたカタールが、最近イスラエルに攻撃されたことでさらに強まっています。
一方、エジプトのシシ大統領今月15日にドーハで開催されたアラブ・イスラム首脳会議での演説でイスラエルを「敵」と呼んだことは重要な動きであり、この考え方を強固にするものです。それは、シシ大統領の発言がエジプトとして前代未聞の公式見解を表明していることによります。エジプトの政治指導者がイスラエルを「敵」と公に呼んだのは、1977年にアンワル・サダト元エジプト大統領がイスラエル議会クネセトを訪問して以来、初めてのことです。
一方で、一部の報道ではエジプトがシナイ半島に防空システムを配備し、同地域に多数の軍事力と装備を展開しているとされています。この点について、エジプト情報機関元副長官のムハンマド・ラシャド少将は「イスラエルによるドーハ侵攻は、エジプトが領土と国家安全保障の固持に向けて行動を起こす決意を固めたことを物語っている。特にカタール攻撃への対応としてエジプトがアラブ合同軍事部隊の結成を提起したことで、シオニスト政権の懸念は倍増している」とコメントしました。
また、ネタニヤフ首相がエジプトの一部を含む「大イスラエル」構想を提案して以来、エジプト当局者側はイスラエルの今後の行動に対し、一層神経を尖らせるようになっています。