高市首相:ガラスの天井、破ったのは保守思想
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高市早苗氏
日本の憲政史上初めての女性首相に就任した高市早苗氏。しかし、その系譜をたどると、女性の地位・権利向上に深く取り組んだことはなく、むしろその保守・右派思想で政界の階段を駆け上がってきました。保守であるがゆえにガラスの天井を破ることができた高市氏。今後の政権運営を占います。
数十年にわたり保守的な男性政治家による統治が続いてきた日本で21日、前代未聞の出来事が起こりました。それは、故安倍晋三前首相に近いとされる高市早苗氏が、衆議院で465票中237票を獲得し、日本の憲政史上女性として初めて首相の座に就いたのです。一見すると、この選挙は女性にとってガラスの天井を破ることのように思えるかもしれません。しかし、アナリストや政治評論家らは、この選挙は何よりも、日本の極右化の深化と加速、そして物議を醸した過去の価値観への回帰を示唆するものだと警告しています。
【ParsToday国際】ここからは、日本の憲政史上初の女性首相就任に伴う日本の動向を検証していきます。
政界の爆弾を抱える脆弱な連立政権
高市氏が率いる自民党は数週間にわたる政治的緊張と与党連立政権の崩壊を経て、政権維持を目指して中道右派的な日本維新の会と連立を組みました。生き残りをかけた戦略的合意とも言えるこの連立は、当初から不確実性がぬぐえないものとなっています。かつて「反汚職」「反自民党」をスローガンに掲げていた日本維新の会は、現在では自民党と連携こそしているものの、閣僚ポストは確保していません。新政権の主要な公約は、家計の経済的負担を軽減するためのガソリン税減税ですが、社会福祉や医療費の削減など、日本維新の会が掲げる厳しい新自由主義的要求の多くは先送りされています。
新たな鉄の女:故安倍元首相とサッチャー元英首相の遺産
高市氏は、英国の権威主義的元首相マーガレット・サッチャー氏を熱烈に支持しており、政治演説において「国民の誇り」の回復と「より強く、より自立した日本」の構築を強調してきました。また、拡張的な金融政策、軍事費の増額、そしてナショナリズムを組み合わせた経済政策「アベノミクス」に全面的に傾倒しています。地元メディアは、高市氏の強硬で経済重視の統率形式から、彼女を「東アジアの新たな鉄の女」と称しています。このモデルは、日本の多極化社会にとって危険だと批判される権威主義的な経済・社会政策への回帰を暗示しているのです。
危機の瀬戸際にある経済と不満の高まり
日本は現在、数十年にわたる低インフレを経て、物価高騰と購買力の低下に直面しています。この状況は国民の怒りと伝統政党への不信感を煽り、右派政党の台頭に都合の良い環境を生み出しています。高市首相の経済刺激策を受けて東京株式市場は史上最高値を更新しましたが、専門家は、「軍事費の拡大やエネルギー補助金の増額といった高コストの政策が実施されれば、既に先進国の中で最高水準にある公的債務の増加が制御不能な危機に陥る可能性がある」と警告しています。
極右の台頭とナショナリズムの幻影の復活
高市氏の政権掌握は、日本での右派勢力の台頭における転換点と捉えるべきでしょう。日本維新の会に加え、参政党などの極右政党も新政権への協力を表明しています。これらの政党は、反移民、反グローバリズム、そして「本来の価値観」への回帰といったスローガンを掲げ、保守派の支持を集めています。移民の子女に対する国籍付与への反対に始まり、第二次世界大戦における日本の侵略戦争に関する歴史修正(政府談話の変更要求)まで、高市氏の立場は、強いナショナリズムへの回帰を示唆しています。
フェミニズムのない女性:性的格差の助長
欧米メディアは高市氏の首相就任を女性の功績と捉えていますが、高市氏自身は実際にはフェミニスト的な立場を一度も主張していません。高市氏は政治や経営における男女格差の是正に反対し、「伝統的な家族」と「家族重視の価値観」を常に擁護してきました。先進国の中でも女性の賃金格差が最も大きく、管理職への女性の比率が最も低い国の一つである日本において、女性がこのような地位に就いたことは、多くの女性権利活動家にとって進歩ではなく、大きな後退と捉えられています。
高市早苗氏は確かに日本初の女性首相として歴史に名を残しましたが、彼女のイメージは平等の象徴としてではなく、あくまで権威主義、ナショナリズム、そして極右主義の新たな波の象徴として歴史に刻まれると思われます。高市氏のもとでの脆弱な連立政権、極右派の台頭、軍事化への決意、そして社会サービスの脆弱化といった要素は全て、日本が歴史に残る右傾化の瀬戸際にあり、日本はもとより極東アジア地域全体の平和、安定、そして民主主義にとって深刻な脅威となる可能性があることを示唆しているのです。