アルゼンチン大統領が経済危機の只中でフォークランド諸島の領有権を主張する理由とは?
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南大西洋上に浮かぶフォークランド諸島(アルゼンチン側呼称;マルビナス諸島)
元英国陸軍将校で現在は政治・防衛アナリストのスチュアート・クロフォード氏によるこの記事は、2025年10月6日に英国の防衛関連ニュースサイト、The UK Defence Journalに掲載されました。
【ParsToday国際】2025年10月6日付のThe UK Defence Journalのウェブサイトに掲載された記事「アルゼンチンの問題が深刻化する中、ミレイ大統領はマルビナス諸島に目を向ける」の執筆者であるスチュアート・クロフォード氏は、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領の国連演説、特にマルビナス諸島(イギリス側呼称;フォークランド諸島)がアルゼンチン領であると改めて強調した点について、英国の軍事アナリストの視点から分析しました。クロフォード氏は、英国の利益に鑑み、この点に関するいくつかの理由を挙げつつ、ミレイ大統領がフォークランド諸島に関して英国との二国間交渉を望んでいると結論付けています。
この記事は以下のように続けています;
「アルゼンチンのハビエル・ミレイ統領は、2025年9月24日に米ニューヨークで開催された国連総会での演説で、マルビナス諸島(フォークランド諸島)の合法的な主権回復に向けたアルゼンチンの取り組みを改めて強調した。同大統領はこれらの島々を『マルビナス諸島』と呼び、熱烈な演説で『私は、依然として不法占拠されているマルビナス諸島とその周辺海域に対する正当な主権の主張を改めて表明したい』と強調している」
しかし、ミレイ大統領はなぜ今になって、この問題に改めて触れたのでしょうか?その主な理由は、次の3つだと考えられます;
まず、ミレイ政権が危機に直面していることです。アルゼンチンは世界で最も高い年間インフレ率を記録しており、国民の大部分が貧困ライン以下の生活を送っています。さらに、ミレイ大統領の実の妹で兄ハビエル氏の政権で官房長官を務めるカリーナ・ミレイ氏は、贈賄と仮想通貨関連の汚職スキャンダルに巻き込まれており、このことは投資家の逃避・撤退をまねいています。これにより、ミレイ大統領はIMF国際通貨基金への支援要請を迫られるかもしれないのです。
第2に、キア・スターマー現英政権は弱体で脆弱だと見られています。スターマー首相によるインド洋チャゴス諸島のモーリシャスへの返還および「パレスチナ」の国家承認により、多くの人々は英国が外交的圧力に対して脆弱であることを確信しており、ミレイ氏はこの機会を巧みに利用しているのです。
3つ目の点は、それほど議論されていないものの、これまで主に漁業で収入を得てきたマルビナス諸島が、石油・ガスブームの目前にある可能性が指摘されています。この諸島周辺には、炭化水素資源開発の可能性のある4つの地域が特定されています。最終的な掘削許可はまだ発行されていませんが、年末までに発行される可能性があります。これらの潜在的資源を支配することの経済的重要性が、国内経済危機に直面している国にとって非常に魅力的であることは言うまでもありません。
しかしここで留意すべきことは、アルゼンチン政府が1982年の侵攻を繰り返すとはまだ示唆していないことです。アルゼンチン軍は今やかつての戦力の影を潜めており、そのような作戦を実行する能力はありません。イギリス軍のマルビナス諸島駐留は、タイフーン戦闘機4機、空中給油機1機、哨戒艦1隻、そして数百人の交代制部隊により行われ、大規模ではないものの、抑止力を発揮するには十分なものです。
ミレイ大統領は「マルビナス諸島に対する正当な主権主張」や「植民地主義的解決策」への批判を繰り返すものの、将来的には英国との二国間協議を最優先としています。また、島民の将来について協議することも言及しましたが、これは皮肉なことに、英国政府が長年掲げてきた見解です。つまり、ミレイ大統領は国連での発言とは逆に、実際には英国が追求しているアプローチと同じやり方を追求しているのです。

