上海協力機構:金融面での自立の時代の幕開けとドル覇権の減少
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SCO上海協力機構の各加盟国の国旗
SCO上海協力機構加盟国の首相らが、金融の独立性に関する作業部会の設置および、共同開発銀行の創設企画、SWIFT国際銀行間通信協会(金融機関のネットワーク上で動作するメッセージングシステム)から独立した決済システムの構築により事実上、非西洋的な金融構造の構築に乗り出しました。この傾向は、今後10年間で世界を金融の多極化へと導く可能性が指摘されています。
長年にわたり地域安全保障メカニズムとして知られ、イランも加盟しているSCOは、その指導者らの新たな決定により、世界における多極的金融体制形成の軸として台頭してきました。これらの動きは、米ドルの覇権の低下や米国の制裁手段の制限に向けた歴史的な足がかりと見なされています。
【ParsToday国際】このニュース記事では、上海協力機構という形での多極的金融秩序形成について考察しています。ぜひお読みください。
金融面での自立を目指す理由
中国、ロシア、イランを含むSCOの加盟国は、二次制裁や米国による銀行関連の規制を通じて、ドルへの依存度を下げようとしています。現時点で世界人口の実に40%以上、世界経済の約3分の1が、ドルではなく自国通貨建てで経済取引を行い、制裁対象者への影響を最小限に抑えるためにこの組織に加盟しています。米国の債務増加、ドルへの信頼の低下、そして過剰な通貨発行もまた、SCOの金融自立を促す下地を生み出しています。
金融分野での自立を目指す実践的手段
2022年以降、SCO加盟国間では自国通貨建てによる取引の割合が大幅に増加し、ロシア、中国、イラン、インド間の貿易の大部分がドルなしで行われるようになっています。この新しい金融組織構造の重要なポイントは共同債券の発行、そしてSWIFTから独立した決済システムの構築、共同開発銀行設立の提案などです。これらの措置により、米国の制裁措置の効力が弱まり、加盟国の財務力が強化されると考えられます。
今後の課題と予想される障害
一方で、SCO圏の金融面での自立は経済発展レベルの違い、金利協調、通貨の安定性、技術インフラといった障害に直面しています。また今後の課題として、インド・パキスタン関係といった国家間の微妙な政治的問題、サイバーセキュリティや銀行規制の統一の必要性なども指摘されています。しかし、フィンテック・金融テクノロジーとCBDC中央銀行デジタル通貨の分野で中国、ロシア、イランが協力すれば、こうした障害を軽減できる可能性があります。
10年単位の展望と影響
現在の傾向が続けば、今後10年以内に中央アジアおよび東アジアの貿易の半分以上がドルなしで行われ、上海開発銀行は世界で最も重要な金融機関の一つとなり、中南米アフリカのより多くの国々がこのメカニズムに加わると考えられます。こうした動きにより、ドルの覇権と西側諸国による制裁の効力は大幅に低下し、西側諸国とユーラシア諸国の金融システム間の競争が世界の地政学の主軸と化すと見られます。今日、SCOは単なる地域協力組織であるのみならず、金融面での世界の未来を設計する存在であり、西側諸国による経済分野での一極化時代の終焉の象徴でもあるのです。

