核合意の実施能力の証明を迫られるヨーロッパ
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ベルギーのディディエ・レンデルス外務大臣
ベルギーのディディエ・レンデルス外務大臣が、「イランとの核合意は国際的な取り決めであり、ヨーロッパはその実行力を証明する必要がある」と語りました。
レンデルス外相は、「イランと6カ国による核合意は、極めて透明なもので、EUと国際社会全体の側からの約束である」とした上で、「EUは、イラン中央銀行やヨーロッパ投資銀行といった公共部門においてイラン側と協力するのみならず、イランで活動する大企業をも保護支援するよう努力している」と述べています。
アメリカのトランプ大統領が今月8日に、一方的な核合意の離脱を表明したものの、ヨーロッパ諸国の政府やEUは、この合意に留まると表明しました。このため、核合意の継続方法をめぐり、ヨーロッパ諸国同士による数多くの協議や会合、さらにはイランとヨーロッパの政府関係者による複数の会合が実施されています。イラン政府も、ヨーロッパ側からの確約が必要だとするイランイスラム革命最高指導者であるハーメネイー師の表明に従い、イギリス、フランス、ドイツを初めとするヨーロッパ側がイランの国益の保障に関して行動を起こした場合には、核合意に留まると表明しています。
ヨーロッパは現在、核合意を維持しようとしていますが、それはこの合意が様々な側面から見て重要なものであることによります。ヨーロッパの最も重要な動機の1つは、アメリカに対する自らの独立を維持することです。核合意の維持により、ヨーロッパ諸国の政府関係者にとって独自の状況が生まれ、それにより核合意に署名したヨーロッパ諸国の国益を無視して、単に自らの政策や利益にそって核合意から離脱したアメリカのトランプ大統領に本格的に対抗できることになります。ヨーロッパ諸国の政府関係者は、制裁というアメリカの要求に追従し、適切な反応を示さなければ、ヨーロッパは現実的な独立のみならず、自国経済・通商面での利益をも失うということをよく知っています。核合意の破棄や停止により、地域、国際レベルでの安全保障面での大規模な影響が生じ、それに対してはヨーロッパは他のどの地域の国よりも大きな代償を払わされることが予想されます。

一方で、核合意はEUが国際面で成し遂げた最大の成功といえます。EUのモゲリーニ外務安全保障政策上級代表によれば、「いずれの国も、一方的に核合意を破棄することはできない。それは、これが二国間合意ではなく世界規模での合意だからである」とされています。このため、ヨーロッパにとって核合意の維持の重要性は倍増します。欧州委員会のミゲル・アリアス・カニェテ気候行動・エネルギー担当委員は、これについて次のように述べています。
「EUは、核合意に関する我々へのアメリカの要求や圧力に抵抗するだろう」
ヨーロッパ諸国は、自らの国益に沿って核合意の維持を求めているものの、特に対イラン制裁による二次的な影響への対処をはじめとした、アメリカの敵対行為に対処するための効果的で十分な手段や可能性、能力に関して懸念を抱いています。こうした諸々の条件が重なったことから、ヨーロッパ諸国の政府関係者は、イランの要求の確保や核合意の維持を目的とした協議を継続しようとしているのです。ベルギーのレンデルス外相の要求も、こうした点から解釈できるといえるでしょう。