視点
米大統領選;権力闘争の激化
アメリカ大統領選から1週間以上が経過した現在、同国のトランプ現大統領と当選したバイデン民主党候補との間の権力闘争が激化しています。
先の大統領選で敗北したトランプ大統領は一般的に取られる方法とは逆に、連邦機関に対し、バイデン氏への権力移行チームへの協力を差し控えるよう命じました。
しかし、バイデン氏は現在すでに、自らの政権移行事務所の活動をスタートさせており、外交の面において盛んに各国の首脳らとやりとりしています。
現在、トランプ氏、バイデン氏の双方が自らを当選者として主張しています。バイデン氏は先の大統領選挙で過半数となる270人以上の選挙人を獲得して勝利を宣言しており、来年1月20日のホワイトハウス入りを目指しています。
これに対しトランプ氏は、選挙で大規模な不正行為が行われ、選挙結果がライバルに盗まれた、と主張するとともに、来年1月20日以降もホワイトハウスに残留しようと試みています。
現在、次期アメリカ大統領が誰になるかの決定は裁判所に委ねられています。トランプ大統領は、「選挙での不正行為が行われたことを裏付ける大量の証拠を入手しており、それらは選挙の結果を覆しうるものだ」と主張しています。しかし、バイデン氏はこれらの主張のすべてを事実無根だとし、現在の結果の確定を主張しています。こうした中、アメリカの複数の州では開票・集計作業がまだ未完了となっています。
トランプ大統領は、最高裁をはじめとする法の裁きの場で保守系の裁判官の存在を利用し、最終的に大統領の座を自らのものにしたいと目論んでいます。一方、開票作業でより多くの票を得たバイデン氏は、裁判所での審理を経ることになったとしても、現在の結果がそのまま確定することを希望しています。
もっとも、トランプ大統領は権力維持のため、現大統領としての権限や司法面での権力に訴えることに加えて、自らの熱烈な支持者の(怒りの)力も計算に入れています。このため、トランプ陣営の選挙事務所は今月14日、民主党支持派が圧倒的多数を占め、最近バイデン候補の勝利の喜びに沸きかえっているワシントンDCに、あえてトランプ派の人々を呼び出す命令を出しました。
当選者の支持者の町で、落選した候補者を支持する人々が列を成せば、双方の支持者の間での憤激に満ちた衝突が発生する可能性が高まります。特に、アメリカでは数ヶ月前から人種差別問題をめぐる街中での緊張が前代未聞のレベルに達しており、ごく小さな出来事のすべてが全米規模の衝突に発展する可能性があります。
一方、ホワイトハウス入りをめぐる闘争が最高潮に達している中で、トランプ現大統領はエスパー国防長官を解任しました。そして当のエスパー氏も今回の解任決定の理由として、トランプ氏のイエスマンでなかったことから自分は地位を失った、と述べています。この発言は、トランプ氏がホワイトハウスに居残るためなら、最後の手段として軍事力に訴えることすら辞さない、ということを如実に物語っています。
このことから、エスパー長官が米軍事紙ミリタリータイムズとのインタビューで「私の後任として国防総省に来る人物は、完全なイエスマンでなければならない。我々の置かれた状態は何と惨憺たるものか。神が我を助け賜わんことを」と語ったのも当然だといえるのです。
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