新研究、「気候変動はマダガスカルの食料危機にほぼ関係なし」
新たな研究から、人間の活動が引き起こす気候変動が、マダガスカルで現在発生している食料不足とはほとんど関係がないことが明らかになりました。
WEP国連世界食糧計画や多数のメディアはかねて、アフリカ南東部の島国マダガスカルについて、世界初となる気候変動由来の飢饉が起こる瀬戸際にあるとして警鐘を鳴らしてきました。
実際、マダガスカルでは降水量の低い年が続き、干ばつが長期化していることを受けて食料の確保が困難となり、すでに数万人が飢餓に近い状態に置かれています。
しかし、米CNNによりますと、これについて英インペリアル・カレッジ・ロンドンが主導する国際組織、WWAワールド・ウェザー・アトリビューションの科学者らは研究の結果、同国の気候の自然な変動が干ばつの理由として最も可能性が高いことを突き止めたほか、貧困や脆弱なインフラ、降雨への依存度が高い農業も食料危機の背景にあり、現在の気候だと、マダガスカルはいかなる年でも135分の1の確率で今回のような干ばつに見舞われる可能性があるとしています。
今回科学者らは、気候変動によって降雨量が下がったとする理論を完全に排除はしないとしつつ、その役割は極めて小さいと指摘。多少の影響はあったとしても、同国で過去に繰り返されてきた気候のパターンとの違いは見られない、と結論づけました。
WFPはWWAの研究を受け、マダガスカルの食料危機は複数の要因がもたらす複合的な結果だと強調しており、具体的には平均を上回る気温と低い降水量、農産物の不作、自給自足農業に依存する地域共同体の脆弱性などが該当し、そこに新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃が追い打ちをかけたとの見解を示しました。
そのうえで「WWAの研究は2019~20年の干ばつについて、人間由来の気候変動のみに帰するものではないとしているが、地球温暖化が脆弱性に拍車をかけることは認めている」と表明しています。
もっとも、米プリンストン大学に籍を置く博士課程終了後の研究員で、今回の研究にも参加したリサ・タールハイマー氏は「マダガスカルが気候危機に脆弱であることには変わりがなく、こうした危機は主として人間による化石燃料の使用で促進するとされる」とし、「地球温暖化が一段と進めば、マダガスカルはより強力な熱帯低気圧の被害を受ける公算が大きい。各地で干ばつも増える恐れがある」との見解を示しています。
マダガスカルの降雨量は過去2年続けて例年の6割前後にとどまっており、これは30年ぶりの低い水準となっています。同国では干ばつによって南部では農産物が広く不作に見舞われ、WFPによれば全国で130万人が食料支援を必要としているということです。
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