ファジル映画祭
(last modified Thu, 15 Feb 2018 11:40:19 GMT )
2月 15, 2018 20:40 Asia/Tokyo

イラン映画の祭典であるファジル映画祭が、今年もテヘランで開催されました。

ファジル映画祭は、イラン最大の映画フェスティバルで、1983年以来、毎年2月の初めに行われています。今年は36回目を迎えました。

 

ファジル映画祭は、初回から13回まで、その年に制作されたイランの映画のみを上映していました。その後の20年間は、国際フェスティバルの形で開催され、イラン映画だけでなく、国際部門で世界の映画が上映されました。

 

2015年には、国際部門が切り離され、現在まで、ファジル国際映画祭は5月に、国内部門のファジル映画祭は2月に開催されています。コンペティション部門では、特別賞であるクリスタルスィーモルグ賞が授与されます。

 

36回目のファジル映画祭

 

ファジル映画祭のメインとなるのは、イラン映画コンペティション部門です。36回目を数える今回の映画祭では、22本の長編映画と2本のドキュメンタリー映画が上映作品に選ばれました。また、アニメーション映画1本も選ばれ、最優秀初監督作品賞が新しく設置されました。

 

今回のファジル映画祭は、各州の大都市でこのフェスティバルを盛り上げるための努力が行われました。そのため、各州の州都では、フェスティバルの作品が、一日数回にわたって上映されました。さらに、青少年のための作品が無料で上映されました。

 

多くの映画が、制作にかかわった人々や俳優が参加して上映され、テヘランの31箇所の映画館には、多くの観客が集まりました。

 

今回のファジル映画祭の開会式では、イラン映画界を代表する人々の功績を称える4つの式典が開催されました。その4人とは、イランの映画製作者だった故アリー・モアッレム氏、映画の吹き替え声優でアナウンサーのマヌーチェフル・エスマイーリー氏、映画製作者のモハンマドアリー・ナジャフィー氏、そして俳優のアクバル・アブディ氏です。

右から、マヌーチェフル・エスマイーリー氏、アクバル・アブディ氏、モハンマドアリー・ナジャフィー氏

 

マヌーチェフル・エスマイーリー氏(右側)・モハンマドアリー・ナジャフィー氏(左側)・アクバル・アブディ氏(中)

 

 

イラン映画のコンペティション部門では、長編、短編、ドキュメンタリーの25本の映画が出品されました。この中で、およそ3分の1が、イランイラク戦争の聖なる防衛、ISISなどのテロ組織といったテーマを扱ったものとなっています。

 

モハンマドアリー・アーハンギャル監督の作品、「水の中の糸杉」という映画は、名もなき殉教者を巡る物語で、イラン南部のアフワーズで、埋葬式の準備中に起こる出来事を描いています。また、ペイマーン・マアーディ監督の「爆弾、愛の物語」という作品は、80年代のイランイラク戦争当時のテヘランに対する爆撃の様子を描いたものです。

 

バフラーム・タヴァッコリー監督の「アブーゴライブ峡谷」という映画は、アブーゴライブ峡谷と、この地域を守ろうとしたイランイラク戦争末期のイラン軍の抵抗を描いた作品です。この地域は、敵がイランの重要な都市や街道に入ろうとした重要な拠点でした。

 

アブーゴライブの峡谷

 

近年の地域の出来事やタクフィール派のテロ組織との戦いにおけるイランの措置は、長年にわたって分析する必要があるほど、重要なものです。イランとその同盟国のISISとの戦争における複雑かつ大規模な戦闘は、何年もの危機的な状況を経て、状況を制圧することができています。

 

現在、地域の人々や一部の政府の抵抗と、テロとの戦いにおける多数の戦士の殉教により、ISISは拠点を失っています。このような状況により、テロとの戦いにおけるイラン人の若者たちの献身や抵抗を伝える必要性が感じられています。

 

イランの複数の映画監督が、こうした地域の出来事に注目し、ISISと彼らの行動、このテロ組織の結成の背景を巡る作品を制作しました。中でも最も魅力的な作品は、エブラヒーム・ハータミーキヤー監督の「シャームの時間」という作品です。

 

ハータミーキヤー監督は、ボスニア紛争の際にも、「緑の灰」というタイトルの映画を製作し、ヨーロッパのイスラム教徒の虐殺に芸術による反応を示しました。そして今回の「シャームの時間」では、ISISとシリアの人々に対する彼らの暴力的で残忍な姿を描いています。

 

 

「シャームの時間」という映画は、シリアのフーアとカファリアという2つの村の包囲のシーンから始まりますが、続けて舞台はタドモルに移ります。イラン人の2人のパイロットが、ISISに包囲されたタドモルの人々を航空機で救い出す任務を担い、物語は、彼らとISISの対決に続きます。

 

監督は、可能な限り、シリアの反体制派やISISの行動について調査しています。監督はこの映画の中で、ISISのメディアでの伝えられ方について語っています。そのようなメディアの報道が発信する報道は、一時期、一部の人々によって真実だと信じられていました。この映画は、彼らの内部のグループ分けと、西側のどのような戦闘員が彼らの内部に存在するかを明らかにしています。

 

ハータミーキヤー監督は、この映画でイスラムを巡る2つの解釈を描いています。この対決は、コーランの節によって形作られますが、ISISとイラン人の戦闘において父と息子が分けられ、その異なる運命が示されます。

 

ISISの暴力の中での複雑さが描かれていることは、この映画の肯定的な点のひとつです。シャームの時間は、ISISにとって暴力以上に重要なのは、暴力を吹き込み、彼らに抵抗した場合の結果を描いていることです。その最たるものは、首を斬られるシーンです。

 

カームボズィヤー・パルトヴィ監督の「トラック」という映画も、ISISやテロをテーマにした作品です。イラン人のトラック運転手が、イラクのクルド人自治区の家族を、父親を捜すためにテヘランに連れてきます。

 

カームボズィヤー・パルトヴィ監督は、この作品について次のように語っています。

 

「この映画は、ヤジディ教徒の女性が難民となった物語である。数年前の夏、ヤジディ教徒の女性や子供たちが住む家を失い、山に避難するのを目にした。この映画では、寒い冬を乗り越えようとする、彼らの様子を描こうとした」

 

パルトヴィ監督は続けて次のように語っています。「毎日、世界の各地で難民を乗せた船が沈没し、難民たちが亡くなっている。私はこの映画によって、互いを助け合い、他人を受け入れることは私たちにとって一つの機会であることを伝えようとした」

 

映画「トラック」のワンシーン

 

パルヴィーズ・シェイフターディー監督の「地獄の皇帝」という映画は、テロリストに関する物語です。パルヴィーズ・シェイフターディー監督は、今年、9本目となる長編映画をファジル映画祭に出品しました。

 

「地獄の皇帝」は、サウジアラビアの王族の犯罪と、ISISなどの過激派の、地域や欧米における拡大の根源をテーマにしています。この映画は、スンニー派の一部の宗教指導者ムフティや、イスラムの名のもとに出される教令の根拠について語っています。イスラムのどの地域が病に陥り、現在のような危機に至ったのか、それがこの映画のテーマです。

 

タクフィール主義のグループは、この映画の内容を知ること、しばらく前から、メディアでこの映画を攻撃し、この映画を観ずに、それを危険な作品だとしています。

「地獄の皇帝」

 

レザー・ファラフマンド監督の「火薬のイヤリングをつけた女たち」という映画は、戦争の中で、ISISの難民となった女性や子供と知り合い、彼らとともに、イラク国内外のISISの家族のキャンプに入ったイラク人ジャーナリストの女性について描いた作品です。このキャンプは、ISISの関係者を収容する場所です。この女性はこのキャンプに入った後、被害者の女性たちと話をします。このドキュメンタリー映画では、ISISと関わる中でさまざまな出来事に遭った子供や女性たちの姿が描かれています。彼らは、ヤジディ教徒が殺害された町でそれぞれの暮らしを送っています。

レザー・ファラフマンド監督「火薬のイヤリングをつけた女たち」

 

このキャンプは国連の管理下にあり、そこに住むISISの関係者は、外国人であれば出身国に帰されますが、イラク人であれば、どのような決定が下されるかを待たなければなりません。このキャンプには男性はいません。男性はそこを逃げ出したか、殺されたかのどちらかです。

 

この映画では、ありのままの姿を描き、最終的な判断を見る人に委ねています。この映画では、再びISISに戻ろうとする女性たちの姿も描かれています。

 

ファジル映画祭は、イスラム革命勝利記念日に優秀作品を発表して幕を閉じました。

 

 

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