ノウルーズ便り4 家族の絆の強化に果たすノウルーズの役割
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ノウルーズ
春の始めに実施される、イラン人の最も華やかな古い慣習の1つに、ノウルーズと呼ばれる新年の祝祭があります。
もともと、祝祭や行事の開催は世界のいずれの国においても、人々の団結を強化する機会とされています。イランでも、特にノウルーズの祝祭は家族や地域、国家を初めとする様々なレベルでの団結、特に家族の絆を強めるための適切な機会となっています。
ノウルーズの祝祭における女性の役割
イランのノウルーズの祝祭の実施には、家族の絆の強化などにおいて、女性が大きな役割を果たしています。特に年が変わるはじめの時間において、イランの女性は家族のメンバーの傍らに効果的に存在しています。さらに、彼女たちはノウルーズを迎える一連の作業を管理する上でも、効果的な役割を果たしています。それは、ノウルーズ期間中の旅行やピクニックの準備、近親者や年長者への訪問、贈り物、新年の縁起物を並べる食卓の準備、親戚づきあいなどに見られます。
ペルシャ語のアルファベットのSで始まる7つの縁起物を乗せた食卓
ハフトスィーンと呼ばれる、ノウルーズの食卓に飾る7つの縁起物は、イランの各家庭の見せ所の1つであり、この準備は、多くの場合、女性の役割とされています。この7つの縁起物は、ペルシャ語のアルファベットのスィーンで始まる7つの品目が並べられます。それらは、にんにく、発芽させた穀物の新芽、ウルシ科の植物で薬味に使われるスーマック、ナナカマド、コイン、りんご、麦芽で作られたお菓子サマヌーです。これらに加えて、ノウルーズの縁起物の食卓には鏡、コーラン、燭台、色づけしたゆで卵、果物、花、お菓子、乾燥ナッツ類、金魚が泳ぐ金魚鉢が添えられることが多くなっています。この非常に美しい縁起物の食卓の配膳には、家庭の主婦が大きな役割を果たしているのです。年が変わる寸前には、一家の母親が家族全員をこの食卓の周りに集め、コーランの節や年の変わり目の祈祷が行われます。
ノウルーズの祝祭に関する最も重要な伝統の1つは、家族親戚や友人知人どうしで訪問しあうことです。これは、国家的、イラン的な側面と同時にイスラムの宗教的な側面を持ち合わせており、人間的な価値のある教えの1つとされ、人々に大きな恩恵やプラスの効果をもたらしています。イスラムとイランの文化の接点となっている様々な慣習の中でも、ノウルーズ期間中の親戚、友人や知人の訪問、すなわち年始回りは特に高く位置づけられています。
さらに、ノウルーズ期間中、イランの女性たちは、年長者を初めとする親戚、親戚や知人などへの年始回りにおいても、中心的な役割を果たしています。彼女たちは、祖父母に新年の挨拶をするため、家族に準備を整えさせます。社会学者や思想家は、家族や親戚同士が互いに親しく交友しあう社会は喜びにあふれる社会であるとし、このことはその社会の経済や文化の発展にも大きな役割を果たすと考えています。
イランのイスラム教徒の女性は、親戚づきあいに大きな役割を果たしています。その理由は、イラン人女性が個人的、社会的な生活の中で、この素晴らしい習慣が数多くの恩恵をもたらすことをよく知っていることにあります。彼女たちはまた、親戚づきあいが親切にしたい、またはされたいという家族の愛情のニーズの多くを満たすことを知っています。親戚づきあいを行う家庭は、安らぎと喜びに満たされており、またこのことは身体的、精神的なトラブルの多くを解消する手段にもなります。親戚づきあいは、健全な環境を生み出し、その結果、人々は他人と交流し、他人の経験に学び、また生活上の悩みを打ち明けることで、ストレスを緩和できるのです。
数多くの伝承においては、親戚づきあいは長寿につながるとされています。その理由は、親戚づきあいを行うことで心の安らぎが得られ、それが身体の健康にもつながるからだとされています。また、親戚づきあいのもう1つの効果として、社会的意識の向上が挙げられます。社会的意識とは、精神医学において人間の知性を計測する指標の1つであり、専門家によれば社会的意識は常に向上する可能性があるということです。社会的な接触が多いほど、その人の社会的意識も向上します。このため、親戚づきあいはこの特質をさらに伸ばすための重要な方法の1つとされています。
イスラムでは、特に親戚をはじめとする他人に尽くすことが特に強調されています。他人への支援は、単に金銭的な支援だけではなく、家庭内の問題の解決や、職業、勉学上の相談にのりアドバイスをすること、適齢期の男女の結婚のお膳立てをすることなども含まれます。親戚を訪問することで、彼らの抱えている問題の実態を知り、できる限りの支援をする下地が整います。もちろん、他人に対する支援の重要な例の1つは、金銭的なニーズを満たすための支援であり、近い親族であればあるほど、その効果もより大きくなります。このため、何らかの支援を必要としている親戚との付き合いを優先する必要があります。
このように、イランの女性は、寿命が延びることや貧困の解消といった親戚づきあいの効果を知った上で、特にノウルーズの期間中には家族の先頭に立って、共感や愛情にあふれたムード作りや、他のイスラム教徒の問題の解決や支援を行っています。このように、親戚づきあいは家族や親戚関係の強化に重要な効果をもたらしています。
女性の役割の1つは、家族に対する行動を全体的に管理、監督することです。イランの女性は、自分の身内や周りの人々の間のわだかまりを解消し、和解させる上で効果的な役割を果たしており、ノウルーズはそのための適切な機会です。年が変わって、年明けの祈祷が捧げられる瞬間に、女性たちは家族のメンバーに対し、憎しみやわだかまりを捨てるよう求め、彼らの状況や行動がよりよいものとなるよう神に助けを求めるのです。
憎しみを捨てることや、心を新たにすることも人間の状況を変える要素の1つです。年明けの祈祷における願い事の1つである、心の状況の改善を達成するには、憎しみを捨てて友情を拡大する必要があります。小さな贈り物をすることから、互いを訪問しあうことまでを含め、ノウルーズの行事を行うことは、憎しみを和らげる上で重要な役割を果たすことができます。イスラムの伝承においても、互いに握手を交わすことで、罪が消えることが指摘されています。他人に親切にし、憎しみを捨てることで、人々や社会が身体的に、精神的に健全になります。こうした健全さは、少々の寛大さに加えて、自宅の大掃除とともに心の大掃除をすることで得られるものなのです。
ノウルーズに際してのお年賀
新年の始まりに際しての女性の責務の1つは、家族や親戚のための贈り物を用意することです。贈り物をすることは、憎しみやわだかまりを払拭し、絆を強める要素の1つといえます。贈り物は、人々の心を気持ちよさと親近感で満たし、わだかまりを心からぬぐい去ります。プレゼントをされることで、喜びの感情が何倍にも増えるとともに、その日の良い思い出は長く記憶に残ります。イスラムでは、贈り物をすることが非常に奨励されており、イマーム・アリーは次のように述べています。
“私は金銭よりも、イスラム教徒の兄弟たちが必要としているものを彼らに贈り物として与えることのほうがよい、と考えている”
イラン人の間では、過去から現在まで、特にノウルーズを初めとする祝祭の折に互いに贈り物をすることが習慣となってきました。新年の始まりに際して、イランの女性たちは贈り物を用意し、年が切り替わった瞬間にこれを家族に渡します。ノウルーズ期間中の年始回りでも、彼女たちは、贈り物を交わすことが、特に子どもにとって喜びであることを知っているのです。もっとも、イラン人の間ではお年玉を渡すことは家族や親族内に限られません。この伝統は、経済力の弱い人や社会における恵まれない人々のために、人々が支援するためのものなのです。
新しい季節の始まりと同時に、ノウルーズの旅行が始まります。イランの女性たちは、国内各地の見所に家族のメンバーを連れて行く旅行の計画を立てる上でも、中心的な責務を担っています。ノウルーズ期間中の旅行により、家族の絆が強まり、家族に喜びと活力をもたらします。彼らは、大自然の中に自分を置き、草花の美しさを堪能し旅行をしている間に、精神的な喜びを感じます。
ノウルーズが近づいてくるとともに、特に恵まれない子供たちをはじめとする人々を喜ばせるための、助け合い運動が盛んになります。イラン人の家庭は、春の初めに当たって、慈善団体や監督者のいない女性、親のいない子供たちや恵まれない人々、経済力の弱い人々に支援を提供することで、社会全体で喜びを共有するのに効果的な役割を果たしています。イランの人々は、春の初めに恵まれない人々を助けることがこれらの人々の喜びにつながるとともに、そうすることで自らの生活も危険から守られ、恵まれない人々が自分たちのために祈ってくれると考えているのです。
結論として、ノウルーズの様々な行事において、女性の役割なくしては、この祝祭は喜びや愛情にあふれ変化をもたらすという本質を大いに失ってしまうと言えるでしょう。
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