7月 03, 2022 19:17 Asia/Tokyo

イランの広大な大地は、多くの自然や観光名所を有し、エコツーリズムの可能性という点で、世界のトップ5に名を連ねています。このシリーズでは、イランの自然の恵みをご紹介して参りましょう。

カスピ海の南東、イラン北部・マーザンダラーン州のベフシャフルの北、12キロのところには、面積およそ7万ヘクタール、海抜マイナス15メートルから28メートルの非常に美しい半島が存在します。この半島は、ミヤーンカーレと呼ばれ、ゴルガーン湾の生態系と合わせて、水陸両生の鳥の生息地となっています。この地域には、砂浜、沼地、森林、砂丘が見られ、ザクロやラズベリーが自生しています。また、毎年、数十万羽もの渡り鳥がこの地にやってきて、ミヤーンカーレ半島、あるいはゴルガーン湾岸で越冬します。


ミヤーンカーレ半島は、その特徴から、世界の保全区のひとつに名を連ね、環境破壊につながるあらゆる活動から守られています。また、この地域の一部であるゴルガーン湾も、イランに17ある国際的に重要な湿地のひとつに数えられています。ミヤーンカーレ半島は、カスピ海沿岸で唯一、植林された地域であり、砂丘や砂浜も見られます。西から東に、つまり、アーシューラーデ島に向かうにつれ、砂丘の面積も縮小します。

ミヤーンカーレ半島での狩猟や漁獲の状況により、1969年、この地域は保全区に指定されました。またここは、比類ない自然の魅力を有し、絶滅に瀕した水鳥が見られること、また、こいやぼらが大量に生息することから、1974年には、野生生物保護区に指定されています。

ミヤーンカーレ半島の沼地も、水鳥の生息地として国際的に重要な地域に指定されています。この地域は、陸地と沼地の両方が存在することから、様々な種類の生物が生息しています。特に、森林、草原、山岳地帯で見られる野鳥が、互いに共存し、これに水鳥も加わり、様々な鳥が生息することのできる環境の宝庫となっています。これら鳥類のほか、ジャッカル、いのしし、野生の猫、またカスピ海アザラシと呼ばれるアザラシも生息しています。

ミヤーンカーレ半島には、様々な種類の植物が生育しており、鳥たちが巣を作るのに適した環境が整えられています。このように、この地域には、生物が生存するのに適した環境と豊富な栄養源が存在し、至る所で様々な生物を目にすることができます。この半島に生息する鳥で特に価値があるとされているのは、キジやシャコです。これらの鳥は、この半島に共存し、ミヤーンカーレで最も多く見られる鳥となっています。この他、ハヤブサなどの猛禽類は、この半島に定住しているものと、春から夏になるとやってくる渡り鳥が見られます。

ミヤーンカーレ沼とゴルガーン湾は、手つかずの自然に溢れ、平穏、静寂に包まれていることから、様々な鳥の越冬地となっています。これらの鳥は、この地域に巣を作り、この沼の唯一無二の美しさを倍増させています。これまでにこの地域で発見された鳥類は、渡り鳥も含め、27科155種類にのぼるとされています。水鳥で代表的なものとしては、ペリカン、カモ、フラミンゴ、アヒルなどが挙げられます。

ゴルガーン湾は、カスピ海最大の湾で、ミヤーンカーレの拡張により、カスピ海南東に形成されました。面積はおよそ400平方キロメートル、西から東に広がっています。ゴルガーン湾は水深が浅く、最も深い部分で4メートルほどで、東にいくにつれ、深くなります。アルボルズ山脈の北側の山麓からは、およそ25の河川や小川が、ゴルガーン湾に注いでいます。この湾の西側の部分は、水深が浅く、水分が蒸発しやすいことから、カスピ海の水よりも塩分の濃度が高くなっています。

水量の多い河口は、淡水が流れ込むため、塩分濃度が低くなっていますが、反対に、泥の含まれる割合が多くなります。概して、ゴルガーン湾の湾口の水量は、11月から3月の数ヶ月を除いて、例外的に、流出する水よりも少なくなり、その不足分が、カスピ海から補われます。これにより、カスピ海からゴルガーン湾の方向に、長期間に渡って激しい水の流れが生まれますが、反対に、ゴルガーン湾からカスピ海に向かっては、短期間、緩やかな流れとなります。こうして、ゴルガーン湾の生態系は、カスピ海とミヤーンカーレ半島周辺の河川の影響を受け、水棲動物の繁殖、成長を促す他、冬の間にやってくる渡り鳥をこの地にひきつけています。このことからも、ミヤーンカーレ半島とゴルガーン湾は、分かつことのできないものだといえるでしょう。

ミヤーンカーレ半島の東側を、モーターボートで少し進んだ所には、アーシューラーデという名の美しい島があります。アーシューラーデ島は、イラン最大のキャビアの産地です。また、石油資源があることから、非常に重要な地域とされています。この島は、これまでの歴史の中で、その領有権を巡って、多くの戦いが繰り広げられた島でもあります。16世紀から18世紀にかけてのサファヴィー朝時代、アーシューラーデ島は、狩猟地として利用され、多くの城砦が存在していました。また、しばらくの間、ロシア帝国に占領されていましたが、最終的に、ロシア人が引き揚げると、イラン人によって漁港が整備され、多くの人々が住み着くようになりました。その後、1989年から1991年には、カスピ海の増水により、島の広範囲に渡る地域が浸水したため、住民はこの島を去ることを余儀無くされました。

アーシューラーデ島は、その歴史、また経済的な価値の点から大きな重要性を有しているだけでなく、ミヤーンカーレ半島の保護区の一部として、豊かな自然の魅力を有しています。この島は、5月になると特に美しく、キジやシャコの舞う姿とともに、みずみずしい自然を間近に感じることができます。真っ青なカスピ海の果てに広がる、澄み切った空、水鳥が水辺で羽を休める様子、様々な種類の植物、これら比類のない自然は、日常生活で疲れた人々の心を癒してくれるでしょう。

 


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