ペルシャ語ことわざ散歩(123)「彼らの水が1つの小川に流れない」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「彼らの水が1つの小川に流れない」です。
ペルシャ語での読み方は、Aaab-eshan az yek juui nemi-ravadとなります。
このことわざは、1本の川に2人が同時に水を流しても、その流れが1本にならず分かれてしまうほど仲が悪い、反目しあっている様子を表しています。すなわち日本語で言う「馬が合わない」、「そりが合わない」といった意味内容を表し、2人以上の人の間で意見やものの考え方、方針などが合わず、常にいがみ合っているような状態を指します。
これはまだ人々の暮らしに現在のような水道がなく、人々が河川や泉、カナートの水を使用していた時期に由来するといわれています。当時は、1週間ごと、あるいはひと月に1回、地域を流れる河川や泉の水などをせき止めて、地区ごとにある貯水池や貯水槽に水を貯め、人々はその水を炊事や洗濯、掃除などに使っていました。
このことから、水をせき止めない時期には、夜中になると誰もが我先にと近くの川や泉、カナートにやってきて自宅用の水を汲みにやってきたということです。1つの地区には何世帯も暮らしており、それぞれが夜中にわれ先にとばかりに、1本の河川から人々がそれぞれ好き勝手に水をくみ出し、順番や水の割り当てをめぐり喧嘩になったことから、この表現が生まれたということです。
言い伝えによりますと、テヘランではその昔、毎晩川岸には老若男女が大勢押しかけ、水汲みをめぐり諍いが繰り広げられていたとされています。
最近では世界的な地球温暖化の影響で、一部の地域では砂漠化が進み、または紛争などの影響で清潔な飲料水が得られない場合も決して珍しくありません。水を求めて人々が争うなどという光景は、世界のいずれの地域にあっても起こって欲しくない出来事ではないでしょうか。それではまた。