テヘラン大学
今回の番組では、テヘラン大学をご紹介することにいたしましょう。
これまでの番組では、イランにおける大学と高等教育システムの歴史についてお話してまいりました。現代の形での大学を作るという考え方は最初、1852年のダーロルフォヌーンの創設によって始まりました。これらの経験を経て、1926年、国家評議会の議員によって大学創設の構想が提示されました。最終的に1928年、イランの大学の物理学の基礎を作ったマフムード・へサービー博士が、テヘラン大学の構想を当時の文化大臣と共に提示しました。
1931年、当時のイランの文化大臣は、新しい世界の科学研究所について調査し、イランの大学建設に向けた計画を政府に提示させるためにセッディーグ博士をアメリカに派遣しました。文化省による数々の調査と多くの人物の尽力により、テヘラン大学創設構想は最終的に1933年、国民評議会に提出され、1934年に議会で採択されました。
この構想が採択されると、当時のテヘラン北部のジャラーリーエ庭園が大学の建設地として選ばれ、その建物の設計は、フランスのアンドレ・ゴダールなど複数の建築家に委ねられました。1934年、21ヘクタールの面積に大学が完成し、記念碑が建てられました。
テヘラン大学の創設は、イラン人が世界の新しい学問に出合うきっかけとなりました。テヘラン大学の教育活動が開始されてから現在まで、この大学からは常に優れた人物や学者が輩出されています。
テヘラン大学は現在38の学部、30の研究所、43の学術関連機関を有し、電子教育センターも備えています。この大学のメインの敷地には、美術学部、文学部、人文学部、法学部、政治学部、医学部、歯学部、薬学部、モスク、中央図書館などがあります。
環境学部、地理学部、社会学部、教育学部、経済学部、イスラム神学部は、テヘラン大学の敷地外にあります。さらに一部の学部や研究所がゴム、キャラジ、パークダシュト、サーリー、ネイシャーブールなどにあります。1991年には、医学部、歯学部、薬学部がテヘラン大学から独立して、テヘラン医科大学となりました。
テヘラン大学の正式なマーク、ロゴは、イランの国の歴史的な図案の中から選ばれ、それは古代ペルシャの文化において特別な地位を有しています。このロゴはテヘラン大学の美学部の教授、モフセン・モガッダム博士によってデザインされ、サーサーン朝の町ティースフンから見つかった漆喰細工のプレートを模したものとなっています。
テヘラン大学の門もまた、この大学の象徴のひとつとなっており、1966年から67年にかけて建設されました。一部では、この大学の門のデザインは、クーロシュ・ファルザーミーという名の美学部の学生がデザインしたもので、地面から飛び立とうと翼を広げている二羽の鳥からインスピレーションを受けたと考えられています。学問と知識が二つの翼になぞらえられ、その二つを持って大学に入り、この二つの翼を強化して大学を卒業することにより、社会における個人の能力向上とその保護につながるとされています。またこのロゴを開かれた書物だと見る人もおり、それは勉学と研究の価値を表しているとしています。
最新の統計によれば、2015年には4万3538人の学生がテヘラン大学で学んでいました。学生数の多い学部は、順に、機械工学、都市開発、建築、電気、獣医、マネージメント、言語、ペルシャ文学、法律となっています。
テヘラン大学は、国内のレベルで、学問、知識、楽しい学生生活を象徴している他、イラン国外でも、中東レベルで名の知れた大学となっています。世界で最も有名で権威のある大学の中で、テヘラン大学は、複雑な技術を伴ったシンボリックな文化的基盤を通じて、特別な精神的、学術的、文化的メッセージを人々に伝えています、
現在、テヘラン大学はイランと中東の高等教育機関の中で、高い地位を誇っています。歴史、優れた教授陣、学生といった特徴はテヘラン大学の重要性を示すものです。これに加えて、イラン国内外でのテヘラン大学の卒業証明書の価値、様々な研究所や企業、官公庁とのつながり、図書館の規模、設備の整った実験所、学部や研究所の数なども、この大学に信用性を与えています。このため、常にテヘラン大学はイランの「母なる大学」、「高等教育の象徴」と呼ばれています。
2016年に作成されたUSニュースのランキングでは、テヘラン大学とテヘラン医科大学は世界レベルの大学と紹介されました。この二つの大学は、このランキングで世界750の優れた大学の中に入っています。USニュースは、大学ランキングで先駆を行く調査機関のひとつで、1983年からアメリカの大学のランク付けを始めましたが、2014年、初めて世界の大学ランキングを作成しました。この機関のランキングではテヘラン大学はイランでトップの大学とされています。
全体的なランク付けに加えて、USニュースは世界の大学を22の学部でランク付けし、それぞれの上位250大学の名を挙げています。それによれば、イランは工学、物質科学、化学、物理、数学、農業、コンピュータ、動植物の8つの分野で世界の上位250の大学に入っています。この統計によれば、工学部ではイランのテヘラン大、タルビヤット・モダッレス大、シャリーフ工科大、アミールキャビール工科大、エルモサナト工科大が中東で1位から5位を占めています。農業系の学部では、中東地域でテヘラン大学だけが世界の上位農業系大学250の中に入っており、さらに化学学部においてもテヘラン大学は中東でトップとなっています。
テヘラン大学の重要性と高い地位により、イラン人以外の留学生もこの大学で学んでいます。現在50か国の540人の留学生がテヘラン大学の各学部で学んでいます。ペルシャ語・ペルシャ文学、政治学、国際関係、地理、都市計画、建築工学の順に留学生の数が多くなっています。彼らの留学生の多くは近隣諸国やアジア、またイギリス、フランス、ドイツ、ロシア、ウクライナ、アイルランドといったヨーロッパ諸国の出身で、エジプトやスーダン、セネガル、マリ、ブルキナファソといったアフリカ出身の学生もいます。
中東や世界でのテヘラン大学の信用性や学術レベルの高さは別にして、留学生たちはそのほかの理由でもテヘラン大学を選んでいます。その一つに、ペルシャ語やイランの文化や歴史への関心が挙げられます。ペルシャ語とペルシャ文学を博士課程で学んでいるウクライナ人女子留学生は、こうした理由を挙げています。
ウクライナ人留学生のアリーナ・イワシェンコさんは2013年からペルシャ語とペルシャ文学を博士課程で学び始めました。彼女はペルシャ語をウクライナで学び、その後3年間、この分野で勉強を続け、友人らの勧めで、勉学を完成させるためにイランに留学しました。