ペルシャ語ことわざ散歩(148)
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介することわざは、「火がつけば、乾いたものも湿ったものも一緒に燃える」です。
ペルシャ語での読み方は、Aatesh ke gereft tar o khoshk mi-suuzandとなります。
このことわざは、善人や悪人にかかわりなく、すべての人が災難に巻き込まれる、または罪のない人にも犯罪者の責任が降りかかってくることを意味しています。
また、このことわざの由来は、今から900年近く前のセルジューク朝時代の出来事に由来します。
現在のイラン南東部ケルマーン州ではトルコ系グズ族が騒乱を起こし、現地の人々に暴虐や悪事の限りを尽くしていました。この乱暴な民族を征伐するため、同じグズ族のトップであるマリク・ディヤールが、ケルマーンの支配者の求めにより軍勢を率いてケルマーンに遠征します。しかし彼は、問題となっていたグズ族に対してのみならず、地元の人々に暴虐、乱暴をはたらき、この地にあった城砦までをも人々とともに焼き討ちしてしまいます。
このように、マリク・ディヤールが騒乱を起こす部族も地元民も一緒くたに扱い、乱暴をはたらき、焼き討ちにしたことから、ケルマーン地方の人々の間では次第に、善人も悪人も変わりなく災難に巻き込まれる、何かの物事に関係のない人まで巻き添えにされるという概念を、「火がつけば、乾いたものも湿ったものも一緒に燃える」ということわざで表すようになった、ということです。
2年以上前から新型コロナウイルスは、先進国や発展途上国のいかんを問わず大流行し、またコロナ危機により世界のすべての国で、あらゆる階層の人々が打撃を受け、命を落としており、地理的国境や人種、言語、文化の違いに関係なく猛威を振るっています。今やまさに、コロナが発生すれば世界中いつでもどこでも、誰もが影響を受けるといってもよいのではないでしょうか。
以上、今回はイランの歴史にまつわることわざをお届けしました。それではまた。