イランの芸術
春の新年の到来を告げる「ノウルーズ語り」
新しい年の始まりは、世界中でさまざまな儀式が行わる季節ですが、イランの春の新年・ノウルーズでは、「ノウルーズ語り」と呼ばれる、語り部が春の到来を告げて回る伝統があります。
ノウルーズ語りは、イランに古くから伝わる伝統・慣習の1つとされています。
特にイラン北部は、ノウルーズ語りがさかんな地域とされています。
その語り部は、木の杖を手に街や村を回ります。
そして、リズムのある詩句を朗唱しながら、春の到来という吉報を人々に伝え、そのお礼にこころざしを受け取ります。
今日は、このイランの伝統に間近に触れるため、イラン北部マーザンダラーン州に来ました。
こちらは、この地域の有名なノウルーズ語りの担い手である、ガーセムプールさんです。
ガーセムプールさんは以前、教師をしていました。
そして定年退職後、ノウルーズ語りの伝統を守ろうと、その語り部となりました。
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ー イラン北部のノウルーズ語りは、そのほかの地域とどのような違いがありますが?
ガーセムプールさん:マーザンダラーン州は、美しい自然にあふれた地域です。
そのため、この地域のノウルーズ語りの詩句は、多くが自然の美に関連したものです。
その中で詠われるのは、春や自然の美しさです。
これらすべてが、春のしるしなのです。
「春がそこまで来ているよ
春を迎えるために用意なさい」と伝えているのです。
ー ノウルーズ語りとは、どのようなものでしょうか?
ガーセムプールさん:ふつうは、ある地域の一カ所で始めます。
そして、路地から路地へと回っていきます。
ノウルーズ語りでは、一連の詩句が朗唱されますが、
その詩句には通常、訪れる家の主人の名を挿入します。
まず、ある家の扉をたたきます。
そして、その家の庭に入って朗誦します。
その後、こころざしを受け取ります。
ノウルーズ語りはかつて、二人一組で行われていました。
若者と高齢者の二人組です。
ー ノウルーズ語りをするようになったのは、何がきっかけでしたか?
ガーセムプールさん:世界のどこの国にも、残された伝統や風俗習慣があります。
例えば、クリスマスやサンタ、色水や色粉を掛けあう(インドの)ホーリー祭などは、特定の日の地域独自の風習です。
こうした美しい伝統は、保存していく必要があります。
ノウルーズ語りの詩句は、希望にあふれて人々を元気付けるものです。
(そのようなものを)どうして保存せずにいられるでしょうか?