ペルシャ語ことわざ散歩(182)「レンガ1つも釜の中に入れよ」
皆様こんにちは。シリーズでお届けしております「「ペルシャ語ことわざ散歩」、今回は、「レンガ1つも釜の中に入れよ」という表現をご紹介してまいりましょう。
ペルシャ語での読み方は、Yek khesht ham begozaar dar diig となります。
この表現は、実際にはあることについてよく知らず、それに関する専門性が全くないにもかかわらず、それについて何もかも知っている、できるなどと知ったかぶりをする人への戒めとして使われます。
このことわざは、ある物語を由来としています。
昔、ある家に嫁いできたばかりのお嫁さんに、姑がご飯の炊き方を教えていました。姑は、まずは米をきちんと洗ってしばらく水に浸けておきなさい、と指示しました。これに対し、嫁は「はい、分かっています。できます」と告げました。姑はまた、その次の段階では米に入れる塩の量について説明しましたが、嫁はまた「分かっています。できます」と答えました。姑は続けて、米を鍋で煮るときには、半煮えの状態でざるにあけて水を切り、釜に入れて蒸らすよう告げました。これに対しても、嫁は自分は決して姑には負けまいと、またもや「分かっています。できます」と答えました。しかし、姑はこれ以上嫁に「分かっています」とは言われたくなかったため、「米を蒸らすときは、中にレンガを入れなさい」と告げました。
さて、実際には米の炊き方をよく知らないこの嫁は、姑の最後の指示内容までをも鵜呑みにし、最後に半煮えの米を蒸らす段階になって、姑の言葉通りに釜の中の米の上にレンガを直接乗せてしまいました。すると、むせ返ったレンガは泥と化してしまい、せっかく蒸らしている途中で米は台無しになりました。
つまり、この物語の中で姑が最後に、「米を蒸らすときにレンガを乗せる」と言ったのは、よく知らない物事について見栄を張り、すべて知っているなどと知ったかぶりをすることは止めるべきである、ということを意味しています。
知ったかぶりをする心理的背景には、正直に知らないと言ったら相手に馬鹿にされるという恐怖心が存在しているのかもしれません。
しかし、自分がよく知らないことについて、正直に知らないので教えて欲しいと頼む事は決して恥ではありません。また逆に、自分が知っていることを他人が知らないからといって相手を馬鹿にしたり、上から目線で命令することは厳に慎みたいものです。
知ったかぶりと上から目線のいずれにも、その根底にあるのは承認欲求や自分に対する自信のなさだと言われています。これらのいずれにも陥らないよう、注意したいものですね。それではまた。