8月 26, 2023 17:21 Asia/Tokyo

イランにはナッガーリーと呼ばれる、日本の語り部や講談に似た芸能があります。ナッガーリーは、英雄譚などの詩で書かれた文学や歴史を、動きを加えた舞台形式で表現しており、世界的に知られています。

ナッガーリーは、イラン文化に根ざした古典舞台芸能であり、英雄譚や宗教的物語を臨場感とともに語るという、古い口承文芸の形式を引き継いでいます。

皆様もこれまでに、ロスタム、ソフラーブ、エスファンディヤールといった名前を聞いたことがあるかと思います。これらは、イランのフェルドウスィーによるペルシア文学の最高傑作の 1 つ、英雄叙事詩『シャーナーメ(王書)』に登場する英雄たちです。

フェルドウスィーは、この作品によってイランの言語や口承文学を保存しようと考えていました。

それではここで、ナッガーリーの語り手として活躍されているヴァルムズィヤールさんの『シャーナーメ』実演を見ていただきましょう。

 

ー 演出を考えて台本を執筆するというあなたの経験は、『シャーナーメ』などのナッガーリーの実演に影響を与えていますか?

ヴァルムズィヤール氏:ナッガーリーは、一人芝居の演技のようなものです。

つまり、一人で二役以上を演じ、複数の登場人物のセリフを語る必要があります。

そのため、声色を様々に変化させなくてはなりません。

ナッガーリーとして成功するには、戯曲を良く理解していることに加えて、戯曲執筆や演じる技術を持っていることが重要になります。

 

ー ナッガーリーは、いつごろから本格的に始めましたか?

ヴァルムズィヤール氏:本腰を入れ始めたのは、この8年~10年です。

それ以前は、ナッガーリーの情報収集に重きをおいていました。

私は今から15年前、(『シャーナーメ』にも出てくる英雄の)ロスタムとエスファンディヤールの戦いを通常とは違う視点でとらえた台本を書きました。

この台本には、私のそれまでのナッガーリーの知識や経験を活用しました。

 

ー 拝見したところ、他のナッガーリーの方々とは衣装がかなり異なっていますね。

ヴァルムズィヤール氏:帽子、杖、靴、服、ベルトに至るまで、すべてがナッガーリーの小道具だと言えます。

それらは、互いに調和している必要があります。

私は普段、(道具の色調を)暖色系にしています。

寒色はあまり用いません。

私のナッガーリー用小道具は、サーサーン朝とサファヴィー朝のものからデザインしました。

サーサーン朝は、イスラム伝来前(の西暦7世紀)に当たります。

サファヴィー朝は、今からおよそ400年前の時代です

ナッガーリーは、この2つの時代が最盛期でした。

そこから、私はこの2つの時代のものを組み合わせて使っています。

この高さのあるフェルト帽、袖なし外套、ベルトは、サーサーン朝時代の服装をモデルにしています。

イラン風の模様が入っている服地は、サファヴィー朝時代から取り入れました。

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それでは、フェルドウスィーの『シャーナーメ』を吟じてもらいながら、皆様とお別れしましょう。

(詩の要約:この物語を聞いた人々は皆、神が賢明で正義ある者に慈悲をかけることを知る)

 


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