イランの芸術
イラン北西部アルダビール州の春の新年の風習・タキャムハーニー
イラン北西部アルダビール州にある民俗博物館には、のこぎりや釜など昔ながらの道具が数多く展示されています。今回は、この地域に伝わる春の新年ノウルーズに行われる、タキャムハーニーと呼ばれる習俗をご紹介してまいりましょう。
タキャム、もしくはタケという言葉は、雄ヤギを意味しています。今回ご紹介する風習はタキャムギャルダーニーとも呼ばれ、木材で造られたヤギの人形(タキャム)を、木製の四角形もしくは円形の盤上に置いて行われます。
この人形は、タキャムギャルダーンもしくはタキャムチーと呼ばれる人物によって面白おかしく動かされ、タキャムギャルダーニーの儀式が行われます。
タキャムギャルダーンは、ノウルーズを目前に控えた年末に、街中や路地裏を練り歩き、春の始まりという吉報を人々に告げて回ります。また、この儀式独特の詩歌を吟じ、ノウルーズの到来を知らせていきます。
インタビュアー;こんにちは。これほど沢山の人形の中から探し出すのは大変ですね。
ーこれは何ですか?
これは、ロングと呼ばれる長い布です。
ー これは何のために使われるのですか?
さて、ここは昔ながらの浴場です。
昔は、入浴の際にはこのロングと呼ばれる長い布を体に巻き付けていました。
ーここをご案内してくださった理由は?
私達の古い文化を示す場所をお見せしたかったんです。
とても懐かしいですね。自分の子供時代が思い出されます。
ーそれは何ですか?
タキャムハーニーの儀式を行うときに使われていたものです。
タキャムとは、私のヤギという意味です。
昔は、年内の最終水曜日にタキャムを外に持ち出していました。
そして、新年の到来を喜び合っていました。
またそれはちょうど、アルダビール州にあるサバラーン山の雪が解ける時期でした。
家々の入り口の前に着いたとき、その家の住人からお年玉やお年賀をもらっていました。
これらの靴下は、特にアーザルバーイジャーン地方、特にアルダビールの女性たちが編んだものです。
タキャムギャルダーンたちは、これらの靴下を履いていました。
そして、独特の靴を履きました。
靴の表面のこれらの模様は、アーザルバーイジャーン地方独自のものです。
これらは、チャールクと呼ばれる靴の一種です。
ーこれらは何でできていますか?
以前は多くが皮で造られていました。
ですが、これらはプラスチック製です。
では、タキャムチーの服を身に着けますから、どうぞご覧ください。
タキャムチーはこういう色彩を選んでいました。それは、私達の地域の平原に咲くチューリップの色だからです。
ーもう何年ぐらいタキャムハーニーをされているのですか?
私は幼少時代からタキャムチーを目にしており、非常に興味を持っていました。
タキャムチーの吟じる詩歌や動作を覚えたかったんです。
タキャムチーがもう家から出てこない、この儀式をやらないと分かった時、
それは、タキャムの儀式をする人が年老いたか、もしくは亡くなった時でした。
私自身、タキャムハーニーというものの存在を知っていたので、この昔ながらの風習を守ろうと決意しました。
ーもう何年ぐらいになりますか?
もうかれこれ40年ぐらいになります。
ヤギは家畜の一種で、冬の終わりに
つまり群れを家畜小屋から外に出すときに
一番早く外に出てきて野原に行き、発芽したばかりの野草を見つけます。
そのヤギの後を群れがついて行き、発芽したばかりの野草を食べます。
これが、先頭を行くヤギです。
この先頭を行くヤギを、私達の言語であるトルコ語でタケと呼びます。
タケムとは、私のヤギという意味です。
タキャムとは、春の訪れや先を行くことのシンボルです。
ー タキャムハーニーは普通、どこで行われますか?
市場や路地などで行われることが多いです。
また人々の前でも行われます。
そして、人々に春の到来の吉報を告げるのです。
皆の者、窓を開けよ、春がやってくる
そして人々も、自らやタキャムチーの喜びのために、彼の下げている袋に贈り物を入れます。
そして、タキャムチーも、もらった贈り物を貧しい人々に与えるのです。