インターネットが子どもに及ぼす影響
今回は、インターネットが子どもに及ぼす影響と、その対処法について考えていくことにいたしましょう。
インターネットを初めとする各種のメディアが特に注意を払うべき対象は、子どもであり、彼らは現在、サイバー空間という危険にさらされています。インターネットは有益であると同様に子どもにとっては大きな危険、脅威、害悪でもありえます。しかし、子どもを持つ親の多くは、子どものインターネットの使用に全く関知しておらず、またはこの問題を真剣に受け止めていないのが現状です。一部の家庭はそもそも、子どもによるコンピュータやインターネットの使用を監視するという、この文明の利器への対処法すら知らない状態にあります。
技術の世代交代は常に、人々の世代交代を伴います。一般的に、新しい世代は先進技術を好み、これに惹かれますが、古い世代はその逆の傾向にあります。こうした違いが最初にもたらす結果は、世代間の隔絶とコンピュータの使用をめぐる対立であり、それは最終的に親と子ども、ひいては教育する側とされる側の立場の逆転だといえます。なぜなら、親は先進技術について自分の子どもより多い知識や技能を有しておらず、この分野については子どもより優位な立場に立つことはできないからです。逆に、子どもが教える側にとっての教師となり、今度は自分の親に自慢することになります。そうした子どもたちからは、親は知識がなく無能だと見なされます。このように、子どもが親より優位に立つことは、家族関係や親の威信を傷付けます。この場合、家族の支援、誘導、監視といった役割の重要性が薄れることになります。
多くの子どもは、インターネットを趣味と見なしているため、この先進技術が子どもを脅かす危険はより大きくなります。なぜなら、彼らは自分が何を望み、どこに行こうとしているかを知らないからです。インターネットの大きな欠点の1つは、好ましい内容と低俗な内容を同時に提示することです。
各家庭にインターネットが普及したことにより、メディアによる教育という名前のライバルが家庭の教育的な環境に取って代わっています。大量コミュニケーション手段は、言葉では表現できないほど高速化し、時間や場所を越えてかけめぐり、いかなる障害物をもものともしません。子どもを持つ家庭は、子どもたちを最新の科学技術に触れさせないようにしたり、子どもたちを密室に閉じ込めて、こうしたマスメディアから隔離することはできないのです。こうした状況において、家庭における情報技術の不適切な使用は、家庭環境に問題を引き起こすと共に、親子関係にも悪影響を及ぼしています。
心理学者の見解では、子どもがインターネットに惹かれる理由として、その魅力的な可能性や空き時間を埋められること、生活上の失敗や自分自身から逃避できることなどが挙げられています。それらは結果的に、好ましいアイデンティティの形成を損ねたり、親子関係を破壊することにつながります。
情報技術の拡大がもたらした根本的な問題の1つは、文化的、社会的な弊害です。家庭内にバーチャル技術が入ってくることは、家庭に見知らぬ人物が入ってくるようなものです。この技術が正しく使用されなかった場合、家族間の交流の機会を奪い、家庭環境を家族1人1人が孤立した空間へと変化させます。一方で、彼らは受動的になり、特に子どもや青少年は、自ら進んで物事を選んだり、考えたり、解釈する能力を失います。しかし、今や好むと好まざるとにかかわらず、先進技術は現代の生活の一部となっています。今日、子どもたちはバーチャル空間に入ることを求めていることから、こうした技術の長所に加えて、誰よりも被害を受けやすい子どもたちは、当然ながらその短所にも巻き込まれることになります。
今や、大人も子どもも自分の時間の多くをデジタル技術により過ごしています。このような状況では、親子の本格的な触れ合い、あるいは子供同士の交流の時間が大幅に減少し、さらに、親戚づきあいも大きく制限されます。インターネットやデジタルメディアにより、社会においては社会的、集団的な価値観よりも、個人主義的な価値観のほうが優勢になってきているのです。
現在既に、情報知識、さらには子どもの生活の大部分を先進技術が占めており、子どもの家族、教育、友人との交流、さらには個人的、集団的なアイデンティティはバーチャル空間において形成されています。このような状況においては、メディアによる空間自体が子どもの生活における影響力のある教師の役割を果たしており、直接的、或いは間接的に自分の価値観に反するものを初めとする、様々な価値観を強要することになります。
こうした問題がより重要なものとなるのは、将来(マイクロソフト・エクスプレッション・)ウェブ4が入ってくることで、ソウフトウェアやハードウェアによる簡単なフィルタリングができなくなり、各家庭や政府はもはや、子どもを初めとするコンピュータの使用者を直接的に監視し、コントロールすることが出来なくなるときです。こうした状況においては、教育はもはや教師ではなく、自分による教育となり、子どもはバーチャル空間において好ましい、そして悪い情報や様々な価値観に触れることになります。しかし、こうした情報や価値観は、社会に浸透している人間的、道徳的な価値観にはそぐわないものであることも考えられます。
現代の子どもたちは、特にインターネットを初めとする先進技術の誤った使用により、文化的な矛盾や混乱に遭遇しています。先進的なメディアの破壊的な影響の結果としては、神経の撹乱や学習障害、アイデンティティの危機、誇大妄想に陥るといったものが指摘できます。精神科医は、子どもと関わった自らの経験をもとに、次のように考えています。それは、暴力的なシーンやいかがわしい画像を目にしている男子は、女子に対しモラルに反する動機を抱くことが多く、またそうしたシーンを見たことのある女子は、男子からのそうした求めに応じる傾向にあるということです。
子どもを持つ親は、メディアの持つ長所と欠点について、子どもに適切な指導ができるよう、これについて研究し、カウンセリングを受け、この分野に関する自らの技能や情報を高め、最新のものにしておくべきです。そうでなければ、子どもは親のアドバイスを受け入れることができず、それらは不正確で信用できないものになってしまいます。
子どものいる家庭は、マスメディアが今や、娯楽を超えた役割を果たしていることを知っておく必要があります。実際に、この文明の利器は文化形成の手段となっており、世界を支配する勢力はこの先進手段を使って、他の社会に自らの文化的な影響力を拡大する下地を作ろうとしているのです。このため、親がこの分野での教育を受け情報知識を高めることは、現代の必須事項とされています。例えば、7歳から8歳の子どもは、大人から禁じられると、益々それを求めるものです。インターネットが使用できる状態にあれば、閲覧が禁じられているサイトにアクセスしたり、或いは接触の手段を使って危険な人物と対話をするかもしれません。この年齢の子どもを持つ親は、インターネットを利用するに当たってのルールを設けるか、もしくは閲覧してもよいサイトを子どもに示したほうがよいと思われます。親は子どもに対し、バーチャル空間における性的な詐欺について話す必要があります。それは、子どもが簡単にいかがわしいサイトに手を出す可能性があるからです。
さらに、9歳から12歳までの子どもは、自分の性別や異性と自分との身体的な違いについて好奇心を抱くようになり、いかがわしいサイトに関心を示すようになります。このため、この年齢の子どもを持つ親は、(他に)有益な趣味や娯楽を設けることで、子どもを目的のない空虚な物事から遠ざけるべきです。一方で、親はまた幼少時から子どもの精神性を育み、自分というかけがえのない存在のために、低俗なサイトや無目的なチャットに走らないように子どもをしつける必要があるのです。