コーラン第25章アル・フォルガーン章識別(2)
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聖典コーラン
今回も引き続き、コーラン第25章アル・フォルガーン章識別を見ていくことにいたしましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
コーラン第25章アル・フォルガーン章識別は、創造世界における神の偉大さのしるしについて触れています。
神を知る上で最良の方法は、神の英知に基づいて創造された、世界の様々な現象について考えることです。
アル・フォルガーン章の第45節から49節は、影、夜や眠り、安息の恩恵、昼間の明るさ、風、雨という恵み、死んだ大地の再生、家畜や人間の水の利用といった神のしるしについて述べています。そのうちの一つ、影を支配する秩序についてはこのようにあります。
「汝は見なかったのか。汝の主がどのようにして影を広げたかを。主がもし望んでいれば、それをとどめていただろう。それから太陽をその影の存在の原因とした。それからそれをゆっくりと自分の方へと集める」
この節は次のように語っています。「この影の存在の根拠として太陽を据えた」
原則的に、影は太陽の光りによって生じます。もし太陽がなかったら、影に意味はありませんでした。この節は続けて、このように述べています。「それから我々はそれをゆっくりと集める」
太陽が昇ると、次第に影が集められ、昼になると、一部の地域では、影が最小限になり、またある地域では、完全になくなります。影は一度に現われるのでもなければ、一度に消え去るものでもありません。それは、とても興味深いことです。なぜなら、もし光りから暗闇、あるいは暗闇から光りへの変化が突然起こっていたら、様々な存在物に悪影響が及んでいたでしょう。人間は生きていく上で光りを必要としています。そして、その光りの激しさを調整し、さえぎるには、影が必要です。この光りと影の交代は、人間が生きることを可能にしているのです。
影という恩恵について述べた後、続く節は、別の2つの恩恵について語り、創造世界のこの他の神秘を明らかにしています。アル・フォルガーン章の第47節には次のようにあります。
「彼こそは、あなた方のために夜を帳とし、眠りを安息の手段とした方である。また昼をあなた方の活動と努力の時とした」
「夜を帳とした」、夜の闇という幕は、人間だけでなく、地上の全ての存在物を包み込み、帳のように彼らを守ります。この節はその後、眠りという恩恵について触れています。「彼は眠りを安息の源として、あなた方のために据えた」 明らかに、適切な睡眠は、体がエネルギーを取り戻し、神経を休めるための最良の手段です。
この節は終わりに、昼間という恩恵について触れています。闇が安らぎをもたらすように、昼間の明るさは、人間にとって動きをもたらすものです。自然の世界でも、太陽が顔を出すとき、全ての生き物は動きを呼び起こされ、それぞれが、独自の計画に従って動き出します。植物でさえ、光りを見るとすぐに息づき、栄養を取り、成長します。一方で、太陽が沈むと、自然界全体に静けさが宣言されたようになり、生き物たちは休息に入るのです。
アル・フォルガーン章の第53節を見てみましょう。
「彼こそは、2つの海を隣合わせに据えた方である。一方は甘く、もう一方は塩辛くて苦い。そしてそれらの間に仕切りを設け、互いが混ざり合わないようにした」
この節は、創造世界における神の力の驚くべきしるしの一つを描いています。神は、淡水と塩水の間に目に見えない仕切りを設け、それらが混ざり合わないようにしています。現在、この目に見えない壁は、淡水と塩水の濃度の違いであり、その重さが異なるために、長い間、混ざり合うことはない、ということが明らかになっています。
私たちは皆、大きな川が、大量の淡水を海へと流し込んでいることを知っています。海の満ち潮によって海水面が上昇すると、河川から海へと流れ込んだ淡水は押し戻されます。その結果、淡水は、海水と混ざることなく、河口やその周囲の陸地へと返されるのです。そのため、海岸近くの水は淡水となり、この状態はしばらくの間続きます。この淡水は、濃度の違いによって、塩水と混ざり合うことはありません。
淡水は、海岸に住む人々にとって有益なものです。彼らは海岸に小川を作って淡水をコントロールします。潮の満ち干きによって生じた淡水の小川は、果樹園や農地を潤すのに大きな役割を果たしています。
一方で、世界の全ての大洋では、大きな流れが渦巻いています。これらの海流は、ほとんど周囲の水と交わることはなく、数千キロもの道を、その状態で進みます。その中でも最もエネルギーの強いものが、メキシコ湾流です。この海流は、中央アメリカの沿岸から、大西洋を通ってきたヨーロッパの沿岸まで達します。この海流は、赤道付近を流れるために暖流であり、その色も、時に周囲の水の色とは異なるものとなります。いずれにせよ、海水の塩水と淡水、そして、それらが混ざり合うのを防ぐ目に見えない壁は、神の力を示すものなのです。