砂漠化について
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砂漠化
自然環境問題の1つである砂漠化について考えます。
前回は、人間や自然環境の存続に欠かせない土壌の重要性と、土壌が破壊される原因についてお話しました。今夜は、土壌が劣化した結果の1つである砂漠化について考えることにいたしましょう。
砂漠化とは、自然界における人間の不適切な活動の影響により生じる現象です。また、乾燥地帯やそれに近い、湿度の低い地域における土壌の破壊形態の1つでもあり、気候の変動や人間の活動など、様々な要因により発生します。今日、環境問題の専門家は気候の変動と淡水の不足という2つの問題に加えて、砂漠化という3番目の問題が世界の自然環境を脅かしていると考えています。現在、世界で畑作に使用できる土地の半分以上が砂漠化の危険に瀕しており、世界の2億5000万人以上の人々の生活が脅かされています。国連の統計によりますと、この問題に間接的に関係している人々の数は、100カ国の20億人に達すると推測されており、このうちの多くが発展途上国や貧困国の人々とされています。
農業用地が砂漠化した結果は、単に食料の安全の喪失、そして飢餓や疾病の拡大のみならず、畑作などの職を失った人々が、都市近郊や他国への移住を迫られることも含まれます。アフリカの砂漠地帯の国々だけで、近い将来6000万人もの人々が難民となり、北アフリカやヨーロッパ諸国への移住を余儀なくされると予測されています。
砂漠化という現象は確かに、全体の3分の2が砂漠や乾燥地域で占められているアフリカに最大の影響を与えていますが、この問題は決してアフリカだけのものではありません。アメリカ合衆国でも、領土全体の3分の1以上が砂漠化の危険に瀕しています。また、中南米カリブ海地域の4分の1が干ばつにより荒地となっています。また、スペインでの国土全体の5分の1近くが荒地となりつつあります。さらに、北半球におけるこの問題の悪化は、北アメリカでの激しい干ばつや南ヨーロッパでの水不足という形で現れています。
中国では、1950年代から現在までにおよそ70万ヘクタールの畑作地帯と、200万ヘクタール以上の牧草地、さらにおよそ600万ヘクタールの森林や草原地帯が、黄沙の被害を受けています。国連のパン事務総長は、2014年の「砂漠化および干ばつと戦う世界デー」に際してのメッセージにおいて、この事実を指摘し、次のように述べています。「気候変動といった要因により加速した土地の劣化や砂漠化は、人間の生活を危険に陥れたのみならず、世界の平和と安全にとっての深刻な脅威でもある」 パン事務総長によりますと、砂漠化が進んだ結果、世界では食料の価格が不安定となり、集団でのほかの土地への移住が目立ってきているということです。
砂漠化の主な原因の1つは気候の変動です。この10年間、干ばつの期間が長引いたことから乾燥地帯やそれに準ずる地域では、生命の再生の可能性が奪われ、荒地となっています。乾燥した土地に甚大な被害を与える要因は、汚染物質としての温室効果ガスの増加により気候の変動が加速したことにあります。それは、降雨や降雪が散発的で不定期なものとなり、土壌に含まれる水分が減少するからです。
一方で、気候の変動により地球の温暖化が進んでおり、この問題も砂漠化が進む原因の1つとなっています。例えば、モンゴルで行われた調査からは、過去40年間における同国での気候変動の影響は、世界のほかの地域の3倍に上ったことが明らかになっています。すなわち、世界全体の平均気温が摂氏0.74℃上昇したのに対し、モンゴルでは2℃以上上がったということです。こうした気候の変動が、砂漠化の重要な要因であることは言うまでもありません。さらに、気候変動と地球の温暖化により、植物の多くが失われ、砂漠に似た状況を生み出しています。
過去数十年間で、砂漠化やそれによる大惨事の原因のほとんどが干ばつであったことは事実ですが、人間による4つの活動が砂漠化に追い討ちをかけたことを忘れてはなりません。それは、主に農業による限度を超えた土壌の使用、土地の劣化を防ぐ役割を果たす植物の消滅につながる過剰な放牧、樹木の伐採による森林破壊、そして農業用水を目的とした不適切な灌漑と排水により、塩水化を招いたことです。
オーストラリアや中東地域、そしてインドでは無計画な灌漑により、土壌に含まれる塩分が飽和状態に達しています。また、カザフスタン、ウズベキスタン、中国北部といったその他のアジア諸国でも、1年当たり3600平方キロメートルのペースで砂漠化が進んでいます。伝統的な方法で水資源が失われることも、砂漠化を助長しており、地域の政府の誤った政策もこの危機に追い討ちをかけています。ごく限られた地域での短期間でのダム建設や井戸の掘削は、確かに農業の発展を促進しますが、長期的に見ると多くの場合、湖や湿地帯の枯渇や荒地の増加を招いてしまっています。
土地の劣化につながるもう1つの要因は、過剰な放牧であり、これも地力の低下や砂漠化を加速します。それは、家畜によって地面が踏み荒らされることにより、土壌がいたむからです。伝統的な牧畜業では、限度を超えた放牧により牧草や牧草地が急速に消滅しており、研究調査からも、過剰な放牧が土壌の破壊と荒地の拡大につながることが証明されています。
アメリカのある研究機関は、「地球の温暖化と気候の変動に及ぼす農業の影響」というテーマによる報告書の中で、次のような結論を出しています。
「過剰な放牧と家畜により牧草地が踏み荒らされたことから、牧畜業は荒地の増大に大きく関係している。荒地の増大は最終的に植物の量産を減らすことになり、それにより土壌が二酸化炭素を吸収する能力を失う。アメリカの農業関係機関の統計によれば、家畜の飼育により牧草地が荒地となってしまい、1年当たり1億トン以上の二酸化炭層を生産する可能性がある」
専門家によれば、家畜の飼育とその肉の利用も、気候の変動や砂漠化の原因の1つとされています。アメリカ・ミネソタ大学環境研究所のジョナサン・フォーリー所長(確認済み)は、骨なしの牛肉1キログラムを生産するのに、30キロの穀物が必要であるとしています。彼はまた、地球上の農業用地の35%が家畜の飼料の栽培のために使用されており、食用肉や乳製品を生産する牧畜のために、全世界でおよそ35億ヘクタールという膨大な広さの土地が使用されているとしています。
一方、食用肉の生産を目的とした家畜の飼育は、人間の活動により発生するメタンガスの発生の最大の要因となっています。メタンガスは、極めて強い温室効果ガスの1つであり、20年間において、その温暖化能力は二酸化炭素の72倍以上となっています。自然環境に関するオランダの統計機関の調査では、世界の人々が菜食主義を守れば、世界の暖房費を80%削減できることが判明しています。
既にお話したように、砂漠化が進んでいる原因の1つは森林の破壊です。森林破壊とは、道路建設や山火事、樹木の伐採や土地利用の変更などにより、天然の森林が消滅していくプロセスを意味します。毎年、1200万ヘクタールから1500万ヘクタールの割合で、世界の森林が破壊されていますが、これは1分間に36個のサッカー場が失われている計算になります。
言うまでもなく、森林破壊は1つの危機でもあります。自然環境保護を支持する人々によれば、森林破壊が現在のペースで進んだ場合、2030年までに世界の森林全体のうち1億7000万ヘクタール以上が消滅し、荒地となるだろうということです。この数字は、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガルを合わせた面積に相当します。そうした砂漠化が懸念されている森林には、南米のアマゾン熱帯雨林、セラードと呼ばれる特殊土壌性低水林地域、アフリカのコンゴ川流域、オーストラリア東部、メコン川流域、ブルネイ、ニューギニア、インドネシアのスマトラ島などが挙げられます。
森林破壊と砂漠化は、次第に深刻な結果をもたらし、それにより地球上では洪水が発生し、水質が低下し水が濁りやすく(確認済み)なります。土壌の破壊はまた、沈殿物の汚染の点から河川や海洋の汚染の重要な原因となります。もっとも、砂漠化がもたらす結果がさらに甚大なものであることは言うまでもありません。