11月 26, 2016 18:41 Asia/Tokyo
  • じゅうたん
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今回、前回に引き続き、イランのじゅうたん産業についてお話しします。

イランのじゅうたん産業は、数千年の歴史があります。じゅうたんの繊細さや模様は、この長い歴史の中で完成されてきました。このイラン芸術は、この土地の歴史と共に、多くの出来事を経験してきましたが、現在まで、その名声を保ってきました。イランのじゅうたんデザイナーのシーリーン・スールエスラーフィールさんは、次のように語っています。

 

「イラン製じゅうたんの伝統的なデザインは、イランの他の伝統芸術や文化、歴史と密接につながっているため、決して色あせたり消滅したりすることはない。イスファハーンのモスクのトルコブルーのドームにある模様や、ペルセポリスの柱や石に見られる模様、レザー・アッバースィーの細密画の伝統的な模様が廃れることがないのと同じである」

じゅうたん

 

歴史的な変化、気候の特徴、革新や独創性、これらは、じゅうたんをはじめとする芸術作品の創造において、イランの芸術家たちがさまざまな様式を作り出す上での要素となっています。イラン製じゅうたんが評価される際には、伝統的なデザイン、天然の植物性染料の使用、質と技術の4つが基準となっています。

天然の染料

 

20世紀初めまで、イランでは天然の染料のみが使われていました。イランでは、各地の気候条件から、さまざまな植物が生育し、さまざまな種類の動物が生息しています。この自然の恩恵と共に、豊かな鉱物資源も存在し、それらを正しく利用することで、最も美しい色を作り出す可能性が整えられてきました。明らかに、イラン製じゅうたんの質の高さ、美しさ、耐久性という特徴は、糸を染める際に正しい方法がとられてきたことによるものです。

天然の染料

 

じゅうたん研究家によれば、これまでイランでは、伝統的な方法により、およそ3000種類の色が作られてきました。ヤズド、カーシャーン、イスファハーンなど、イランの多くの都市に染色工場が存在します。興味深いことに、現在、化学染料があるにも拘わらず、じゅうたん産業の活動家たちは、再び、伝統的な美しい色の使用に回帰しているということです。

 

 

この他、イランのじゅうたんの優れた特徴のひとつは、その模様です。じゅうたん産業の専門家によれば、イラン製じゅうたんのデザインや模様は、19のグループに分けられるということです。それらには、シャーアッバースィーのデザイン、アラベスク模様、狩猟の様子、幾何学模様、古代遺跡や歴史的な建造物などが含まれます。

シャーアッバースィーのデザイン

 

じゅうたんの模様には、複数のデザインが使われることもあります。例えば、シャーアッバースィーのデザインは、シャーアッバースの花々という名で知られる特別な草花模様に基づくデザインで、この花々は、アラベスク模様などのイランのじゅうたんによく使われる他のデザインと共に使用されています。

 

アラベスク模様は、イランのじゅうたんのデザインによくみられるもので、絡み合うつる草をモチーフにしたものです。

 

この他、イラン製じゅうたんでは、植物や動物などの自然の様子が描かれたものもよく見られます。その特徴は、花や動物が幾何学的に並べられていることです。この模様は、あらかじめ用意された図面がなく、遊牧民の織り子のセンスや技術のみに頼ったもので、世界に多くのファンがいます。この種のじゅうたんは、トルキャマン、ガシュガイ、バフティヤーリー、ロル、クルドといった民族によって織られたものが有名です。

トルキャマン族のじゅうたん

 

この他、イランの歴史的な建造物やタイル細工からヒントを得たデザインも、イラン製のじゅうたんに多く使われています。時にそれらの建物の形に変化が加えられたものもありますが、じゅうたん全体のデザインは完全に維持されています。このグループのデザインで最も有名なのは、イスファハーンにあるシェイフロトフォッラーモスクのドームやイマームモスク、シーラーズのペルセポリス、ケルマーンシャーのターゲボスターンなどとなっています。

 

じゅうたんに詳しいイラン人は、大抵、そのじゅうたんを模様やデザインによって見分けています。しかし、世界では、それが織られた地方の名前によって知られています。ドゥーイドゥーフじゅうたんは、イラン北東部の北ホラーサーン州にあるドゥーイドゥーフ村で、トルクメン人によって織られています。このじゅうたんは世界各地で広く支持されています。

 

ドゥーイドゥーフじゅうたんの特徴は、質の高さ、特別な技術と繊細さ、図面のないデザインにあります。このじゅうたんは、両面とも絹で織られ、トルクメンの女性たちの間で受け継がれて来ました。このじゅうたんは注文を受けてから織られ、カナダ、ドイツ、オーストリア、イタリア、レバノン、ロシア、日本といった国々に顧客を有しています。

トルキャマン族のじゅうたん

 

 

これまで、イランの手織り絨毯は、 世界知的所有権機関によって、イラン各地の名前で登録されています。それらの名前には、タブリーズ、へリース、ホイ、イスファハーン、ゴム、マシュハド、ハメダーン、カーシュマル、カーシャーン、ケルマーン、ナーイーン、ヤズド、アルデビール、トルキャマンがあります。

 

この中で、タブリーズは、博物館や芸術・文化施設、イスラム建築や歴史的建造物の存在により、農産物や伝統工芸、遊牧民の生産物などのさまざまなフェスティバルが開催され、2018年のイスラム観光模範都市に選ばれています。タブリーズは、世界クラフト会議からじゅうたんの世界的な都市として認められています。

タブリーズのじゅうたん

 

イランでは、さまざまな機関によって、じゅうたん産業の質や量のレベルを向上させたり、じゅうたん産業を紹介するための活動が行われています。これらの機関のひとつが、国立イランじゅうたんセンターです。このセンターは2003年にイランの手織りじゅうたんの価値を国内外に知ってもらい、この産業に関わる関係者を支援する目的で、活動を開始しました。

 

国立イランじゅうたんセンターは、これまでに国内でさまざまな展示会を開催してきました。また、国外の国際展示会に参加する可能性も整えています。少し前にテヘランで開催された手織りじゅうたん国際見本市の様子は、英語のサイトでごらんいただけます。アドレスは、www.wikicarpet.comです。このサイトは、イランのじゅうたんに関心を持つ人々に大きく支持されています。

 

近年、インド、パキスタン、アフガニスタン、中国、エジプト、ルーマニアなど、一部の国が、自国の絨毯をイランの名前を使って、あるいはイランのデザインを模して市場に供給しています。しかし、真正のイラン製じゅうたんは今も世界のじゅうたん産業において高く評価されています。

 

 

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