12月 04, 2016 20:12 Asia/Tokyo
  • 家庭における両親の位置づけ

今回は、家庭における父親と母親の役割についてお届けします。

父親と母親はいずれも、家庭内で特別な位置づけにあります。いずれの家庭においても、愛情面での役割を担うのは母親で、家庭の運営は父親の役割とされています。

 

コーラン第17章、アル・イスラー章「夜の旅」、第23節には両親への親孝行の必要性が強調され、次のように述べられています。

“創造主は、神以外のほかの何者をも崇めてはならず、また両親に親切にしなさい、と定められた”

母親は通常、忍耐強く献身的な存在として知られています。また、子どもの教育や安らぎのためには、自分の楽しみや安らぎをも犠牲にし、子どもの正しい教育や躾に全力を注ぎます。

母親とは、一種の能力や技術であり、その誤りや怠慢は子供の逸脱行為につながります。母親の行動や精神状態は、子どもにとっての学習教材となります。子どもは、生後しばらくは主に母親の腕の中で、その後の幼少期の多くを母親のそばで過ごし、母親の影響を受けます。

母親の最も重要な責務は、子どもの心や精神を愛情と優しさで満たし、利己主義を離れて共感と博愛の精神により社会の人々と良好な関係を築けるような人間を育成することにあります。母親はまた、子どもを保護・支援し指導するとともに、子供の人格を形成する役割も担っています。

子どもは、母親に従い依存しており、その子どもの成長と成熟、さらには成人してから現れる特徴の多くは母親にかかっています。子ども時代に母親に目を掛けてもらえなかったり、何らかの理由で母親から引き離されてしまった人は、緊張やストレスの影響を受けやすくなります。

逸脱や問題ある行動の多くは、幼少時代に母親から引き離された人や同情心、愛情のある母親がいなかった人に見られます。このような子どもの人格は、道徳心や情緒面での成長が遅れることが多く、このことは成人になってからも好ましくない影響を及ぼします。

 

母親は、子どもを実社会に触れさせることや、子どもの思考面での指導に置ける基本的な役割を果たしています。子どもは、生後数年間は信じやすく、また何かを完全に模倣するため、母親からこうした考えを容易に受け入れます。母親は、子どもの躾において目的を持つ必要があります。また、時には言葉で、またある時には行動によって、正しい道を示すべきであり、これこそが本来あるべき最も重要な方法とされています。

おそらく、子どもに対する母親としての、そして法的な責務を最も明快に表現しているのは、シーア派4代目イマーム・サッジャードの残した言葉ではないかと思われます。この偉人による法律関係の論文には、母親の権利について次のように述べられています。

“母親に負うものとしてあなたが知っておくべきことは、次の通りである。まず、他の誰も保護してくれなかった所にあなたを保護し、誰もあなたに与えなかった、自分の心という果物をあなたに与えたことである。また、全存在をかけて、喜んであなたを守ったことである。さらに、あなたのためにあらゆる不快な出来事や悲しみ、悩み事に耐え、自分は空腹でもあなたの空腹を満たすことで喜びを感じている。そして、自分には身につけるものがなくとも、あなたに衣服を着せ、自分は喉が渇いてもあなたの喉を潤し、自分は灼熱の太陽にさらされても、あなたには日陰を作ったのである。母親とは、様々な苦しみに耐えながらも、あなたのために安らぎを与え、自分は睡眠不足に苦しみながらも、あなたが快眠できるようにした人である。これゆえ、これらの全ての苦労と優しさの全てについて、母親に感謝しなければならない。だが、それは神の助けがなければ不可能である”

 

子どもは常に、父親を力のシンボル、そして家族のより所と見なしています。父親は、より積極的に社会に参加していることから、家庭に学問や見識の正しい基盤を植え込み、また子どもたちを情報面での発達や技能面での進歩、そして彼らの趣味や趣向の育成を助けます。

イスラムの預言者ムハンマドは、父親の重要な責務について次のように述べています。

“父親は、家庭内で信頼を構築し、子供を管理監督し、自由と独立の下地を作り、彼らから危険を遠ざける責任者である”

全ての社会においては、伝統的に父親が働いて収入を得、家族の経済的なニーズをまかなう責務を担っています。イスラムの教えでも、家庭内での役割分担に関しては、家族のメンバーの金銭的な管理は父親の責務とされ、特に合法的な手段によって収入を得ることが強調されています。

預言者ムハンマドの伝承には、次のように述べられています。

“父親に対しては、子どもたちに対し合法的で清らかな糧以外のものをもたらさないことが必要とされる”

父親が、精神面やモラル面での健全さを維持し、尊厳に注目ことは極めて重要です。一部の父親は、自分が家庭野監督者であり、権力を持っているとの思い込みから、家族のメンバーを支配するために暴力的で無情な行動に訴えます。しかし、家庭における父親の権力や力は、本当は家庭内の安らぎや平穏を確保し、家族のメンバーを導くためのものなのです。

父親と適切な関係を築いている子どもは、個人的、社会的により大きな成功を収めています。父親は社会的な責務を担っていることから、多くの時間を家庭外で過ごし、自分の妻や子どもの状況に目が行きとどかなくなる可能性もあります。しかし、教育の専門家は、父親が家族と常に関係を保ち、彼らに愛情を注ぐことを強調しています。

 

複数の調査結果から、3歳以上の男子は行動面などで自分の父親との同化を図ろうとすることが分かっています。父親はこのチャンスを利用し、自分を模倣しようとする息子の意向を受け入れて、歩き方や服装、話し方、自分に対する正しい適切な行動様式を教える必要があります。このように、父親の言動の模倣は、社会の伝統や価値観の習得につながります。父親が息子が密接な関係を持ち、息子の考え方を支持することで、息子は自分に力強い後ろ盾があることを実感します。

父親と娘の関係も、非常に重要なものです。父親は娘に愛情を注ぎ、娘を愛し、この愛情を表現する必要があります。こうした愛情は、女子の情緒面での成長や、結婚などを初めとする将来の決定に大きな効果をもたらします。預言者ムハンマドは、娘に対する父親の注目や愛情の重要性について、次のように述べています。

“子どもに贈り物を与えるときには、娘を優先するがよい”

子どもに対し父親が影響力を持ち、正しい教育を行う上で必要な要素は、親しさある関係と、愛情や優しさです。イスラムの教えは、父親に重い責任を課していると同様に、家庭における父親の立場を非常に尊厳あるものとしています。預言者ムハンマドは、次のように述べています。

“父に従うことは、神に従うことであり、父に逆らうことは神に逆らうことに等しい。父親が子どものために祈ることは、預言者が共同体のために祈ることに等しい”

 

 

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