12月 28, 2016 22:00 Asia/Tokyo
  • ガシュガーイー族の子供たち
    ガシュガーイー族の子供たち

今回の番組では、イラン南部ファールス州に住む民族、とくにガシュガーイー族の文化についてお話しすることにいたしましょう。

イラン南部のファールス州は、遠い昔から、部族が住む最大の地域と見なされてきました。ファールス州の気候の多様性により、イラン最大の部族社会が形成されました。このため、ファールス州の一部は、様々な部族や民族が集まり、生活を営む場となってきました。

ファールス州の民族は、歴史の中で、豊かな文化を確立させ、その生活の中で民族の文化を顕現しています。ファールス州の民族文化の特徴は、国内外の観光客をひきつけるこの州の最大の魅力のひとつとなっています。

ファールス州の民族は、ガシュガーイー、ハムセ、ママサニーの三つの大部族と8つの独立した部族で構成されています。これらの遊牧民は、ファールス州の北部で夏を過ごし、南東部、南西部、そして時に中部の平原で冬を過ごします。これらの地域は一般に、標高が低く、冬季には穏やかな気候となり、夏には気温が高くなります。

こうした中、ガシュガーイー族の一部は、ザグロス山脈の南麓で冬を過ごし、時にこれらの渓谷から離れて、ブーシェフルや南部の沿岸地域まで標高の低い平野部に移動します。ファールス州の遊牧民の人口は14万7千人で、イランの遊牧民人口のおよそ12.5%、ファールス州の人口の3.5%にあたります。

ガシュガーイー族は、イラン最大の部族の一つで、最も名の知られた遊牧民です。今夜の番組ではまず初めに、この民族についてお話しすることにいたしましょう。

ガシュガーイー族は6つの部族から構成されています。部族全体の統率者はイルハンと呼ばれています。各部族の管理は、キャラーンタルが負い、これは部族の中から選ばれます。どの部族も様々なグループから構成されており、彼らの社会は親族関係に基づいています。

ガシュガーイー族は、勤勉で、勇敢、自尊心が高く、忍耐強く、もてなし好きな人々であり、弓術に長けています。

ガシュガーイー族の歴史に関しては、様々な情報が存在し、このトルコ語系の民族がいつどこから、どのような出来事によってこの地域に移住してきたのかは正確には分かっていません。いずれにせよ、多くの資料から、ガシュガーイー族の歴史に関してはっきりとしているのは、彼らが特定の時期、一つの場所に、一斉にファールスにやってきたのではないということです。彼らは徐々にここに集まってきて、トルコ語系の部族の連帯を生じさせたのです。

ガシュガーイー族はおよそ600年前から300年かけて、少しずつイラン南部に移住してきてました。ガシュガーイー族の統一は実際、18世紀初頭のサファヴィー朝末期に実現しました。

ガシュガーイー族の経済的、社会的枠組みは、毎年夏と冬に移動している遊牧民と同じように、畜産・放牧に基づいています。200年前からイラン最大の遊牧民となってきたこの部族は、少なくとも300年前から毎年定期的に長い距離を移動しています。

夏が近づくと、部族が暮らしていたテントが撤去され、部族の老若男女が徒歩、あるいは動物に乗って、緑の多い避暑地に向かって進み、冬が近づくと、来た道を引き返し、南に向かって進みます。

時の経過により、部族の一部は、遊牧の途上にある村などに定住するようになり、そこで農業や園芸を営むようになりました。しかし主要な部族は今も牧畜に依存しており、ファールスの南の牧草地と北のさわやかな気候の高地の間を行き来しています。

それではここからはシュガーイー族が暮らすテントについてお話しすることにいたしましょう。

イランの遊牧民の住居はそれぞれの地域での気候条件、降雨量、最終的にはその地域に存在する建築資材によります。たいてい遊牧民は移動先に居住地を持っていて、その住居は村のそれに似ています。とはいえ、テントも一般に使用されており、彼らの移動生活に一致したものとなっています。

テントはヤギの毛からできていて、色は黒、雨が降っても中には浸透しません。夏はテントの外の壁は開かれ、冬になると閉じられます。部族の有力者のテントは、大きなホールのように、多くの人を収容できるようになっています。部族は移動の際に、軽い携帯用のテントを持参します。部族の男性はテントの扱いに精通していて、最短の時間でそれを建てたりたたんだりすることができます。

ガシュガーイー族の男女の衣装もまた特別の魅力を有しており、現在、この部族の文化的に最大の魅力となっています。女性は小さな帽子、スカーフ、色とりどりの長いスカート、ひだの多い裾の長いシャツを着ています。通常スパンコールや刺繍の飾りがシャツなどの上に施されています。部族の女性は、自分の衣装を作る際に、明るい様々な色を使います。それは彼らの周囲の自然からインスピレーションを得たものです。男性の衣装にはフェルトの帽子、シャツ、ゆったりしたズボン、幅1メートル、長さ4,5メートルの腰に巻くショールがあります。

ガシュガーイー族の女性たちはあらゆる仕事において男性と協力します。女性たちは貞節と努力、忍耐の象徴です。彼女たちは、家事や子供の世話に加えて、作物の収穫と保管を行います。またバター、ヨーグルト、チーズといった乳製品を新鮮なミルクから作ります。

また女性たちは余暇に、絨毯や敷物を作ります。ファールスの遊牧民の絨毯は女性たちの手によって作られています。ファールスの絨毯は多様性の点から他の地域の絨毯に比べて、唯一無二のものとなっています。

鮮やかな色と色彩の豊かさは、何よりもガシュガーイー族の絨毯を世界的に知らしめている要因の一つです。ガシュガーイー族の女性たちの色使いは類まれな、驚くべきものです。