12月 21, 2022 17:07 Asia/Tokyo

ここ数年、温暖化の影響により、暖冬となっています。現在の若い世代、未来の世代にとって、先人達の生活を知ることは必要なことです。過去の人々がどのようにして限られた可能性の中で、冬の寒さに耐え、厳しい自然に対処していたのか。イランの暦では、現在冬が始まってからおよそ1ヶ月が経過しました。今回は、冬季のイランの豊かな文化、風俗習慣についてお話しすることにいたしましょう。

冬至の儀式

 

おそらくそれほど遠くない将来、これらの風俗習慣や伝統、信条の多くが忘れさらえ、未来の人々は先人達の豊かな文化を知らないまま、自らのアイデンティティを侵略文化の影響下で手放すことになるでしょう。

フォークロア、大衆文化は、先人達の思想・信条に端を発します。彼らは物語、格言、民謡などを作ることで、厳しい生活を乗り越えたり、それに耐えたりしようとしてきました。

昔からイラン人、多くの社会は、冬の始まりに様々な儀式を行ってきました。イランや周辺の同じ文化を持つ国では、冬が始まる日の夜を、シャベヤルダー、冬至の夜と呼んでいます。

シャベヤルダーは、北半球において1年で一番長い夜です。毎年12月22日頃にあたります。イラン人やその他の多くの民族は冬至を祝います。この冬至の儀式は家族の祝祭とも見なすことができ、おそらくそれがこの儀式が続いていることの理由でしょう。今もイランでは家族は社会の主要な柱となっています。

 

スイカ

 

シャベヤルダーは昔から続くイラン人のお祭りです。この日の夜、イランの多くの町で、スイカをトラックに載せて売る人の姿が見られます。これはここ数十年、シャベヤルダーを活気付かせています。

スイカは太陽のシンボルと見なされ、シャベヤルダーにおいて最も重要な果物とされています。

シャベヤルダーの最も重要な習慣のひとつに、ハーフェズの詩集を使った占いがあり、これは文化として、1年の最も長い夜に将来について思いをめぐらすものです。

ヤルダーという言葉は、一日の誕生を意味します。古代イラン人は、シャベヤルダーの次の日には太陽が現れ、日が高くなり、神の光の輝きが増すと考え、この日を祝っていました。

ヤルダーとその遺産に基づいて、より正確な説明と新しい方法により、ヤルダーを様々な機能を持つより幅広いイベントにし、それを大いに活用すべきでしょう。

ここで、社会学者のアスキャル・モハージェリー氏によるシャベヤルダーの説明をお聞きください。

「シャベヤルダーは、愛の夜において人間がこの夜が長く続くことを考えていることの表れである。ヤルダーは1年で一番長い夜であり、その夜の長さを楽しみ、人間のあたたかな関係によってその闇を乗り越えることができるという愛の夜である」

 

ザクロ

 

ヤルダーの祝祭はそれぞれの地域で独自の観衆を持っています。現在ヤルダーは、近代社会を結びつけるためのもの、こうした儀式を行うことで、喜びをもたらすものとなっています。シャベヤルダーの際に用意される果物やナッツには特別なメッセージが込められており、モハージェリー氏は、ザクロやスイカといった果物が選ばれてたのは、どちらの果物もこの儀式が行われていた時代に貴重なものだったからだ、としています。それは希望、要求を実現するための人間の強い力を示すものだったとしています。

これらの果物が選ばれるもう一つの理由に、その色が喜びをもたらす色であることがあり、イラン人はそれを選択することで、人間の力強い原則を世界や自然に対して示していた、と言われています。

 

冬至の儀式

 

イランは広大であり、様々な文化が広まっていることから、時にその地域に特有の慣習が見られます。例えば、タブリーズではヤルダーの儀式で、詩や音楽が演奏されます。

アーザリー族はシャベヤルダーの美しい儀式を有しています。この夜、ハーンチェと呼ばれる大皿を婚約者に送ります。通常、これは男性側の家族によって行われます。ハーンチェの中にはお菓子やオレンジ、りんご、ざくろ、スイカ、鏡、布などが入っており、日没の際に家族の女性たちが男性の家に手伝いに行き、この儀式の中で、祝祭を挙げます。その後、大皿を何人かの頭の上に載せて、女性の家に運び、それを女性の母親に引き渡すと、金銭やお菓子などが代わりに渡されます。

おそらくシーラーズほど、シャベヤルダーに、ハーフェズの詩を読み、占いをする町はないでしょう。シーラーズの人々はイランのほかの家族と同じように、シャベヤルダーを親族の年長者の家で過ごし、親類や知人が集まって朝まで語らいます。

 

冬至の儀式

 

シーラーズのシャベヤルダーでは、鏡、蝋燭、エスファンドと呼ばれるお香、ドライフルーツやナッツ、花などが飾られます。シーラーズの人々は、シャベヤルダーに熱体質の人は必ずスイカのような冷たいものを食べ、反対に寒体質の人はナツメヤシやナッツ、ゴマペースのような体を温めるものを食べることを薦めています。

 

ナッツ

 

コルデスターンでも、他の山岳地域と同じように、この歴史的な古い儀式を行っています。コルデスターンの州都サナンダッジでは、昔から家庭でドルメと呼ばれる料理やサンギャクと呼ばれるナンを客人のために準備するのが慣わしとなっています。

イーラーム州のシャベヤルダーの儀式のひとつに興味深い慣習があります。これは子供たちがこの夜、隣近所の家の屋根に上り、紐をつけた籠を上から吊り下げ、詩を読み、家の人からナッツなどを籠の中に入れてもらうというものです。

ほぼ国の全ての町にシャベヤルダーの慣習が存在し、この記事では、イランの様々な民族の間で広まっている美しい慣習の一部をお話しいたしました。

 


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