今回ご紹介するのは、テヘラン芸術大学です。

芸術は各国の文化的特徴の表れです。各国の文化の開花は、その国民の芸術によって現れるものであり、特に芸術は人々の日常生活とは切り離せません。イランの芸術遺産は、歴史のすべての時代におけるこの国の人々の大きな精神的資産です。イランの芸術はイラン人に大きな名声を与え、あらゆる場所で、この国に名誉を授けてきました。

今日、イランの芸術作品を収蔵している博物館を有していて誇りを持たない近代国家は世界には存在しません。それらの作品は、常に芸術史、芸術学の専門家、芸術愛好者にイランの芸術が賞賛するにふさわしいものであることを示しています。

イランの芸術は、世界の歴史において最も豊かな芸術遺産のひとつであり、建築、絵画、織物、陶器、音楽、書道、金属細工など多くの分野を含んでいます。こうした世界的な真の芸術の拡大と移転は、大学などの教育機関を通じて可能となっています。この方向で、イランには数多くの芸術大学が創設されており、イランや世界の豊かな芸術に関する教育が行われています。今回は、イランの最も包括的な芸術大学、テヘラン芸術大学をご紹介いたしましょう。

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テヘラン芸術大学は、イランで芸術を教える最大の高等教育機関と見なされています。この大学は最初、1979年に創設されました。革命後、科学技術省がイスラム社会の文化的、芸術的目的を推進し、イスラムの様々な芸術を拡大するために芸術高等教育機関の創設を計画しました。

革命体制の文化政策の担当者は、イスラムや民族、伝統文化を信奉する文化人を育成すると共に、彼らをイラン、イスラム、世界の歴史ある文化にも親しませようとしました。これにより、革命前に芸術教育を行っていた5つの教育機関は、1979年、芸術大学の集合体に変りました。1983年にこの集合体は、正式に活動を開始しました。

学士、修士の各課程における数々の学科の開設と平行して、学生の数も増え、この教育機関は質量共に拡大して教育活動を継続しました。1991年からは名称を芸術大学に改め、応用芸術、造形芸術、映画・演劇学部、そしてイスファハーン校の4つで運営されました。

1994年には音楽学部、2001年には建築・都市開発学部が芸術大学に加わりました。またこの大学にはイランで初めて芸術を研究する博士課程が設けられました。

芸術大学の建物は、テヘランで最も古い軍の駐屯地の建物の中に立てられました。この建物はガージャール王朝とパフラヴィー王朝の時代の二つの部分から構成されています。ガージャール朝の駐屯地は、複数段階での変化を遂げておりその最終段階が1892年に建てられた現在の建物です。ガージャール朝の建物はネオクラシックの近代的な建物で、イランとヨーロッパの建築を融合したものとなっています。

この建物は広大な広場に面する北と南の部分から構成されています。この広場ではかつて軍の式典が行われていました。この建物は3つの変移の時代を経ています。第一の時代は、ガージャール朝時代の駐屯地、第二の時代はパフラヴィー朝の戦争省の庁舎、そして第三の時代は芸術大学の建物で、2001年からこの歴史的建造物は教育・文化活動のための場所として利用されるようになりました。

現在、芸術大学は7つの学部、17の研究所、そしてファーラービーという名の国際分校を有しています。さらに、2015年には、4千人の学生が在籍していました。学生数が最も多いのは、映画学部と建築学部です。

建築・都市開発学部と映画・演劇学部はテヘランに、また建築・都市開発学部の一部と音楽学部はテヘラン郊外のキャラジにあります。

芸術大学の最も歴史ある学部のひとつが、映画・演劇学部で、学生にも人気があります。映画科は1984年から、監督、撮影、脚本、編集の4つの分野をもって開始されました。1993年には修士課程も設置されました。

演劇科は1987年、戯曲、俳優、演出、舞台美術、人形劇の5つの分野で学生を受け入れて開始されました。2011年、演劇教育の専門化を目的に、4つの分野が学科に昇格し、俳優と演出の分野が統合されました。1994年には戯曲科、1997年には演出科、2012年には俳優科の修士課程が開設されました。

テヘラン芸術大学の出身者には、現在芸術の分野で活動する映画監督や俳優がたくさんいます。

テヘラン芸術大学では、外国人の学生も学んでいます。2015年には40人の外国人が各学部で学んでいました。この中で、映画・演劇学部の人気が高くなっています。現在この大学に在籍している外国人留学生は、ボスニア、中国、レバノン、タジキスタン、イエメン、カザフスタン、パキスタン、イラク、パレスチナ、アフガニスタンの出身者です。

パレスチナ人の29歳の留学生、アルメスリーさんは、芸術大学映画学科の修士課程で学んでいます。アルメスリーさんは、イランに非常に関心があり、最初はシリアで芸術学を学んでいましたが、後にイランにやってきて、現在は芸術大学で映画学を学んでいます。彼はイランの大学、芸術大学のレベルを高く評価し、大学の教授陣は権威ある大学を出ており、学問の習得において学生たちを助けていると述べています。彼は、パレスチナには残念ながら映画や演劇を教える大学はなく、このためイランで映画の勉強を続けることにしたとしています。アルメスリーさんは、イランに来れたことを嬉しく思う、とし、中東ではテヘラン大学が出版した書籍の多くが配布されており、イランの大学のレベルの高さに驚いた、と語っています。