May 20, 2017 18:04 Asia/Tokyo
  • カラカル
    カラカル

今回は、イランに生息する野生のネコの一種カラカルについてご紹介することにいたしましょう。

イランに生息する希少動物の1つに、野生のネコの一種カラカルがいます。カラカルは、ネコ科のカラカル属に分類される動物の中で最も体重が重く、早く走る動物とされています。また、三角形で大きく黒い耳を持ち、鋭く尖った耳の先端に黒く長い房毛があることから、ペルシャ語ではイランの黒耳と呼ばれています。

カラカル

 

カラカルは、リンクスと呼ばれるオオヤマネコと混同される場合がありますが、この2つは全く異なります。今回ご紹介しているカラカルは、しばらく前までは動物学的な分類上ではリンクスの同類種、即ちネコ科のオオヤマネコ属として扱われ、ヨーロッパの各国語でもペルシャリンクス、あるいは野生のリンクスと呼ばれていました。しかし今日では、ネコ科のカラカル属に分類されています。

 

 

カラカルは、体重が16キロら22キログラム、体長が55センチから90センチメートル、尾長が22センチから34センチメートルにもおよび、地面から肩までの高さが40センチから45センチメートルあります。もっとも、オスはメスよりやや大きくなっています。毛皮の色調は赤褐色、灰色、黄土色、黒などとなっています。なお、カラカルの子猫は大人より体の色が濃厚で、下半身に赤い斑点があります。

カラカル

 

カラカルの下半身や首、そして口の周りは白く、目じりから鼻にかけて黒い腺が伸びています。全体的に顔が小さく、長く尖った耳の先端に5センチほどの黒い房毛がついています。カラカルの耳は、ネコ科の動物の中で最も大きく、20もの筋肉により動き、聴力が鋭いことから獲物を捕らえる上での大きな強みとされています。

 

カラカルは、自らの縄張りをしっかりと持つネコ科の動物で、特に乾燥地帯において広範囲の縄張りを持っています。1回の出産で2匹から4匹の子どもを生みます。

カラカル

 

カラカルは通常、ノウサギやネズミ、野鳥などの体重が5キロ以下の小動物を狙い、捕食します。しかし、注目すべき点は、カラカルが自らよりも大型の動物を捕らえることのできる、最小のネコ科の動物であることです。カラカルは、背後から飛び掛って、のど笛を噛み切りこれらの動物を捕らえます。カラカルに襲われる可能性があるのはカモシカやヤギ、ダチョウなどです。

カラカル

 

カラカルは、自分より大型の動物を捕らえた後、腸などの内臓、さらに肉のうち上質な部分のみを食べます。カラカルが野鳥を捕らえる技も見事であり、空中で跳躍して一度に複数の野鳥を捕らえることができます。また、長期間水を飲まずに生き延びることもできますが、カラカルの体内の水分の大半は、獲物を捕食することで摂取されます。

 

カラカルは、一度に100キロメートルを走ることができます。夜行性で獲物を狙うのは主に早朝と日没で、日中は寝ていることがほとんどです。冬は、獲物の数が減少することから、より遠くの地域にまで狩りに出かけ、獲物が少ない場合にはその確保のために100キロ先の地域にまで移住することもあります。また、大抵は樹木の洞穴や大きな岩の下、植物の茂みにねぐらや住処を設けます。

カラカル

 

カラカルは哺乳類であり、1回の出産で2匹から4匹の子どもを生みます。冬の初めに交尾し、妊娠期間は70日です。カラカルの子どもは、生まれてから10日後に目が開き、生後4週間から6週間で肉が食べられるようになり、母親は生後4ヶ月から6ヶ月で断乳します。子猫たちは、生後9ヶ月から10ヶ月で自立しますが、完全に成熟するのは1年2ヶ月から3ヶ月ごろです。

 

カラカルは、イランでは中部砂漠の周辺地域、そして砂漠地帯やこれに準ずる地域に生息しています。カラカルが生息するイランの最も南の地域は、ファールス州エスタフバーン行政区です。また、この動物が生息する地域の北限は、イラン北東部の北ホラーサーン州です。

カラカル

 

イラン西部地域、即ちイーラーム州およびロレスターン州、そしてイラン東部の南ホラーサーン州でも、カラカルの生息が報告されています。カラカルにとって最高の生息地は、イラン中部イスファハーン州ナーイーン行政区にあるアッバースアーバード自然保護区です。

 

希少動物であるカラカルは、現在の個体数が少なく、残念ながら今日この種の間で病気が蔓延し、生息地が破壊され、また獲物となる動物が減少していること、さらには乱獲によりその存続が脅かされ、国際自然保護連合が作成する、絶滅の恐れのある野生動物のレッドリストに掲載されています。このため、イランの野生動物や自然科学に関する専門家は、この希少動物を保護するための特別な措置や学術研究に乗り出し、カラカルの絶滅を防ごうとしています。