光の彼方への旅立ち、ナムル章(6)
コーラン第27章 ナムル章 蟻 第29節~第35節
慈悲深く慈愛あまねきアッラーの御名において
第29節
「サバーの女王は言った。『長老よ、貴重な手紙が私のもとに投げられた。』」 (27:29)
قَالَتْ يَا أَيُّهَا الْمَلَأُ إِنِّي أُلْقِيَ إِلَيَّ كِتَابٌ كَرِيمٌ (29)
第30節
「『手紙はソレイマーンからのもので、内容はこのようなものである。慈悲深く、慈愛あまねき神の御名において、』」 (27:30)
إِنَّهُ مِنْ سُلَيْمَانَ وَإِنَّهُ بِسْمِ اللَّهِ الرَّحْمَنِ الرَّحِيمِ (30)
第31節
「『私よりも優位に立とうと思ってはならない。謙虚に私のもとにやって来なさい』」 (27:31)
أَلَّا تَعْلُوا عَلَيَّ وَأْتُونِي مُسْلِمِينَ (31)
前回の番組でお話したように、預言者ソレイマーンは、サバーの土地の状況と彼らが太陽を崇拝していることを知った後、手紙をしたため、ヤツガシラにそれを届けさせました。ヤツガシラはサバーの女王ベルゲイスの宮殿に入り、手紙を女王のもとに投げました。この2つの節は次のように語っています。「サバーの女王は、手紙を見ると、この美しい鳥が持ってきた手紙が、偉大な人物からのものであることを悟った」 彼女には様々な出来事について相談する側近たちがいました。サバーの女王は彼らを呼び、その手紙の内容を読んで聞かせました。「書簡は神の名で始まっています。その中には2つの事柄が書かれていました。真理に服従すること、そしてソレイマーンの統治に対する敵対や反抗を避けることです」
第29節~第31節の教え
・何かをするときには、必ず、慈悲深く慈愛あまねき神の御名において始めましょう。不信心者に手紙をしたためる際にも、それを忘れてはなりません。
・人よりも優位に立とうとすること、それも宗教の指導者よりも優位に立とうとすれば、真理に頭を垂れるきっかけが人間から奪われます。
第32節
「女王は言った。『長老たちよ。私の行いについて意見を聞かせてほしい。あなた方に聞くまで、私が重要なことを行ったことはない』 」 (27:32)
قَالَتْ يَا أَيُّهَا الْمَلَأُ أَفْتُونِي فِي أَمْرِي مَا كُنْتُ قَاطِعَةً أَمْرًا حَتَّى تَشْهَدُونِ (32)
第33節
「彼らは言った。『私たちは力強く勇敢で[、戦う力も十分に持っていま]す。しかし、決定するのはあなたです。どのような指示を出すかをよく考えてください』」 (27: 33)
قَالُوا نَحْنُ أُولُو قُوَّةٍ وَأُولُو بَأْسٍ شَدِيدٍ وَالْأَمْرُ إِلَيْكِ فَانْظُرِي مَاذَا تَأْمُرِينَ (33)
預言者ソレイマーンの手紙を読んだ後、先見の明を持つ為政者であったサバーの女王は、宮廷にいた軍の司令官たちや国家の顧問たちに、この手紙にどのような返事を出したらよいか、意見を求めました。当然のことながら、このように相談することによって、サバーの女王は、預言者ソレイマーンに対抗するための側近たちの心構えを知り、最高の方法を取ることができていたのです。
女王の顧問や軍の司令官たちは、自分たちの多くの戦いの装備や力強さを誇り、預言者ソレイマーンの侵略に対抗するための備えを明らかにしました。実際彼らは、手紙の内容から、ソレイマーンが宣戦布告をしたのだと解釈し、多くの国の軍司令官と同じように、降伏するのではなく、戦う道を提案しました。しかし、彼らは自分たちの心構えを明らかにしながらも、最終的な決定は女王に委ねました。そして、彼女がどのような指示を下したとしてもそれを実行し、彼女の意見に反することはしないとしました。
第32節~第33節の教え
・軍事力や兵士、可能性は国家の運営にとって必要なものです。とはいえ、それを誇って高慢になり、真理の受け入れを妨げるようなことになってはなりません。
・様々な行いにおいて、特に統治に関する義務においては相談することが必要です。とはいえ、最終的な決断は、その流れに混乱が生じないよう、一人の人間が下すべきでしょう。
第34節
「[ベルゲイスは]言った。『王たちは繁栄した地域に入るとそれを荒廃させ、その住民たちを辱め、[常に]そのように行動する。』」 (27:34)
قَالَتْ إِنَّ الْمُلُوكَ إِذَا دَخَلُوا قَرْيَةً أَفْسَدُوهَا وَجَعَلُوا أَعِزَّةَ أَهْلِهَا أَذِلَّةً وَكَذَلِكَ يَفْعَلُونَ (34)
第35節
「『まことに私は彼らに贈り物を送り、私の使者がどのように戻るのかを見ましょう』」 (27:35)
وَإِنِّي مُرْسِلَةٌ إِلَيْهِمْ بِهَدِيَّةٍ فَنَاظِرَةٌ بِمَ يَرْجِعُ الْمُرْسَلُونَ (35)
サバーの女王ベルゲイスは、貴族や長老の意見を聞き、彼らに対決の用意があることを知った後、自分たちの決定についてこのように述べました。「もし戦争の扉を開けてしまえば、堕落や腐敗、破壊以外のものはもたらされないだろう。なぜなら、覇権主義的な支配者は、町に入るたびに、そこにある家を破壊し、人々を殺すか捕虜に取り、その地域の人々を路頭に迷わせ、辱める。だから宣戦を布告する前に、相手についてより多くの情報を収集し、彼らがこの手紙を送った目的がどこにあるのかを確かめた方がよい」 こうして、彼らはソレイマーンのために貴重な贈り物を届け、彼の反応を見ることにしました。戦う意思はないことを示す贈り物によって、出来事はそこで終わるのか、それとも、相手の真の目的は国家を占領し、その土地を奪うことにあるのか?ソレイマーンの反応を見た上で、彼と戦うべきなのか、あるいは別の道を選択すべきなのか、必要な決定を下すことにしたのです。
サバーの女王は、贈り物を届けることにより、ソレイマーンが本当に神の預言者であるのか、あるいは、他国を支配することを追求する、権力に酔いしれた王であるのか、それを確かめようとしたようです。なぜならサバーの女王は、神の預言者であれば、現世の財産、布教や指導をやめることがないのを知っていたからです。実際、個人的な利益、権力や富を手に入れるためにどんな手段を選ばないのは、世俗主義の君主たちです。
第34節~第35節の教え
・腐敗や堕落、戦争や流血の拡大は、神の命に従わない統治体制が他者を支配するために用いるやり方です。
・他人からの贈り物は、私たちを試し、真理を損なうための賄賂である可能性があります。それに注意しましょう。